3Mbpsという速度の上限を設けながら完全定額を実現した、「ぷららモバイルLTE」の「定額無制限プラン」が登場してから、間もなく1年がたとうとしている。それ以前にも1Mbps以下の速度で無制限をうたうMVNOのサービスはあったが、“そこそこの速度”と“使い放題”を両立させたのは、同社が初めて。その後、完全定額プランは日本通信やU-NEXTが追随して、MVNOならではの選択肢の1つになった。
その間、NTTぷららも、サービスを徐々に進化させてきた。2015年1月には、定額無制限プランを音声通話に対応させた「定額無制限プラン 音声通話プラス」を発表。1台目需要を取り込む料金プランとして、MNPの受付も開始した。5月にはこれまで月3Gバイトまで利用可能だった「定額プラン」を、月7Gバイトに改定し、音声通話にも対応させた。
一方で、完全無制限プランは、モバイルを固定回線代わりに使うヘビーユーザーが集まりがちだ。トラフィック対策などを怠ると、サービス自体が破たんしかねない。サービス開始から1年が経過し、状況はどのように変わったのか。また、完全定額の衝撃に続く、二の矢はあるのか。こうした点を、同社のサービス本部 コンシューマ営業部 営業企画担当 担当部長の原田宙氏と、マネージャーの下鳥陽一氏に聞いた。
―― 定額無制限プランを導入されてから、1年がたとうとしています。その間、ユーザーの使い方に変化はあったのでしょうか。
下鳥氏 以前はヘビーユーザーがかなりいて、独特の使い方をされているとお話しましたが、数が増えるに従い、超ヘビーユーザーといえる方々の割合は少なくなってきています。もちろん、全体の伸びにリンクしているわけではありませんが、少ないながらも存在していますし、そういった方はよりヘビーになった印象を受けます。
また、定額無制限プランにも音声サービスを出せました。音声というところでいうと、MNPは当然ながらやっていますが、ポートインと呼ばれる転入の方々が思っていた以上に多くいらっしゃいます。他社で10%程度とお話しされているところもありますが、それ以上に多くなっています。
原田氏 データプランの傾向を見ると、ルーターとのセット売りがすごく好調でした。そこから考えると、きちんと2台目需要に応えていたのだと思います。一方で、キャリア(MNO)の回線を残しながら2台目の人が多いのではと思っていたところ、意外とMNPで移ってくる方が多かったというのが、私たちの印象です。
―― メイン回線にする人が増える中で、3Mbpsという速度が出なくなっていることもあるのではないでしょうか。
下鳥氏 「最大」3Mbpsなので、混み合っている時間帯に速度が出なくなっているのも事実です。ただ、朝の通勤時間や昼休みの間でも、めちゃくちゃ遅いというようなことはありません。その(速度が出ないという)声には何とかして応えられる方向性はないのか、日々検討しています。
原田氏 それが生の声であることは事実なので、設備の増強も含めて検討はしています。一方で、この価格帯で提供することも義務だと思っています。例えば、もっとライトなユーザーを増やしていき、(トラフィックを平準化させることで)この価格帯での無制限を永続的に提供していければいいですね。
下鳥氏 かたや、(定額無制限プランの)2980円(税込)はそれでも高いと思っている方もいます。そうした方々に向け、5月末に7Gバイトのプランを作りましたが、これが意外と受けています。
原田氏 今は新規の5分の1ぐらいが、7Gバイトのプランですね。ヘビーユーザーのニーズをとらえたとき、容量を気にする方がいる一方で、速度を気にされる方もいます。そういった方々がいる想定で、7Gバイトのプランを作らせていただきました。
―― なるほど。ちなみに、定額プランと従量プランは、帯域が共通なのでしょうか。定額プランの影響を受けてしまうと、従量プランのユーザーからは不満の声が上がりそうですが……。
下鳥氏 土管は1本ですが、定額無制限プランには3Mbpsという制限をかけているので、7Gバイトプランの方がスピードは出ます。
―― 他社も7Gバイトプランを提供していますが、差別化はどうされているのでしょうか。
下鳥氏 7Gバイトプランを作るときも、ある程度のヘビーユーザーが入ってこられることは想定していました。例えば、MNOだと3日間で366Mバイトという制限がある会社もありますが、あれを嫌がるお客様も多い認識しているので、そうした制限はなくしています。
―― MVNOの中にも、3日のような短期の制限がない会社はあります。そういったところとの違いはいかがでしょう。
下鳥氏 やはりお値段だと思っています。もともと、うちはあまり最安値を狙いましょうとは思っていませんでしたが、結果としてDMM mobileさんが3日後に6円下げてきました(笑)(→「DMM mobile」の7GBプランを改定――ぷららを抜いて、業界最安を維持)。お値段とスピードの部分はバランシングができるようにと考えていて、気を遣っていたところです。大きな差別化ポイントではないかもしれませんが、常に気にしてはいます。
原田氏 エントリープランの動画サービス(ひかりTV)が無料で付いている、ネットセキュリティが無料で付いているというのが、本質的な差別化です。ぷらら光のような固定系サービスとの組み合わせでの割引も、我々だからできることだと思っています。
―― その光コラボについてですが、動向はいかがですか。
下鳥氏 音声プランを提供したときに、200円引きはやっていましたが、固定の光コラボをお申し込みいただいている方が、LTEも検討したいと思っているようです。Webにアンケートを付けていますが、「検討している」や「気になる」という声は多いですね。お値段を気にする方が、全体的に通信費を見直したいという機運が高まっているようです。
―― つまり、固定回線のユーザーがモバイルもまとめて契約するということでしょうか。
下鳥氏 モバイル単体でのお申し込みは当然多いのですが、(固定回線の)お申込みのときにLTEも検討したいという方は増えています。あまりいないかなと思ってのんびり構えていたのですが、お客様の方が感度が高くて、逆にびっくりしたぐらいです(笑)。
―― モバイルのユーザーが固定もセットで申し込むという流れはありますか。
下鳥氏 本当はそこも狙いたいところですが、大きな流れとしてはあまり見えてきていません。
―― 定額無制限プランの話に戻しますが、3Mbpsという上限の速度を上げてほしいという声はありますか。実際、検討しているかどうかも、合わせて教えてください。
下鳥氏 声としていただいていることは事実ですが、多いか少ないかでいうと、ほとんどありません。
原田氏 「ほとんどない」に近いが、正解ですね。お客様は3Mbpsという制限があることを認識した上で入ってくるので、それに合わせた使い方は想定されているのだと思います。
―― ヘビーユーザーに対してですが、本当にまったく制限はかけていないのでしょうか。
原田氏 かけていません。今の売り方やうたい方を考えると、それはできません。
下鳥氏 事業者として、そこに制限をかけるわけにはいきません。
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