日本市場参入は「評価中」――Lenovo幹部が語る、Motorola買収後のスマートフォン戦略Mobile World Congress 2016

» 2016年02月29日 16時31分 公開
[末岡洋子ITmedia]

 LenovoがGoogleからMotorolaを買収してから1年以上が経過した。スペイン・バルセロナで2月25日まで開催された「Mobile World Congress 2016(以下、MWC)」で、アジア太平洋地域担当プレジデントを務めるRoderick Lappin(ロードリック・ラピン)氏、アジア太平洋地域担当最高マーケティング責任者(CMO)のNick Roynolds(ニック・ロイノルド)氏が日本人記者グループの取材に応じた。

LenovoLenovo Lenovo アジア太平洋地域担当プレジデント、ロードリック・ラピン(Roderick Lappin)氏(写真=左)。Lenovo アジア太平洋地域担当最高マーケティング責任者(CMO)、ニック・ロイノルド(Nick Roynolds)氏(写真=右)

 LenovoはMWCで「VIBE K5 PLUS」「VIBE K5」を発表したほか、「YOGA 710」「YOGA 510」のWindows 10タブレット2機種なども発表した。MotoブランドからはブースではVIVEブランド、Motoブランドで展開するスマートフォン、タブレットが展示された。

Lenovo MWCでのLenovoのブース

日本では「Moto X Play」を発売も、実験的な取り組み

 日本での本格展開が待たれるが、もう少し先になりそうだ。日本市場でのニュースとしてラピン氏は、「Moto X Playがサードパーティーから発売されることになった(→モトローラ、Android 6.0搭載のSIMフリースマホ「Moto X Play」の予約販売を開始)。MVNO向けなので市場のごく一部にすぎない実験的なものだ」と述べるにとどまる。日本市場については「2015年と同じ。具体的な計画はなく、まだ評価している段階だ」と言う。「われわれがやりたいことをキャリアに話すなどの対話を続けている状態。(MVNOではなく)キャリア向けではしっかりした戦略とともに展開するという段階に達していない」と続けた。

Moto X Play カスタマイズが特徴の「Moto X Play」

 これはグローバルでの戦略に基づくものだ。GoogleからMotorola Mobilityを買収した際、Motorolaは10億ドルの損失を出しているという状態だった。「当時われわれは投資家に対し、『4〜6四半期で損益分岐点に持っていく』と約束し、5四半期目となる前四半期(2016会計年度第3四半期)にちゃんと達成した。まずは事業運営という点でMotorolaを統合することにコミットしてきた。その結果が得られたいま、やっと成長段階に入った」(ラピン氏)

日本のスマートフォン市場の成長は鈍化している

 このような背景の下、Lenovoは参入障壁が低く、ブランド認知度が高く、成長の潜在性が高い市場に投資するという戦略を取っている。アジア太平洋では、スマートフォン市場の伸びが目覚ましく、Motorolaブランドが強いインド、インドネシアなどが中心となっている。この1年で両国に製造拠点を開設し、インドではシェアナンバー3に達しているという。

 「PCでは約160カ国で展開しており、シェアは21.6%でトップだ。一方、スマートフォンは世界ナンバー3、展開しているのは60カ国にすぎない。PCと同じレベルにしていくが、そこですぐに日本市場に参入になるとは限らない。日本のスマートフォン市場の成長が鈍化しているからだ」とラピン氏は説明する。インドのスマートフォン普及率は15%にも満たないが、この15%にも満たない人がちょうど日本の全人口と同じぐらい。つまり日本の8〜9倍の市場が広がっているのだ。このようなことから、戦略的に日本の優先順位は低いようだ。

 ラピン氏とCMOのロイノルド氏はインド市場での状況をさまざまな角度から語ってくれたが、興味深いのが「スマートフォンはPCに“ハロー効果”をもたらしている」という点だ。インドは元からLenovoとMotorolaの両方のブランド認知が高かったというが、「MotoやLenovoのスマートフォンでよい体験を得たユーザーが、PCやタブレットもLenovoを選ぶというハロー効果がある」とロイノルド氏は話す。このように、環境が異なることから途上国と成長国ではマーケティング戦略も分けているとのことだ。なお、同社のインド市場の事業規模は20億ドル、この後3年で3倍に拡大していくという。このうちの多くがスマートフォンからと見ている。

PC市場を革新しているのはLenovo

 MWCではライバルHuaweiがWindows 10タブレット「Huawei MateBook」を発表し、PC市場に参入した。同じくXiaomiもPCを開発中といううわさがある。

 PC市場はモバイルベンダーにより再編されてしまうのだろうか? ラピン氏に聞いてみると、自信を持って「市場を革新しているのはわれわれLenovoだ」との答えが返ってきた。ラピン氏はYOGAで採用した時計バンド式ヒンジなどのフォームファクタを参照しながら、「あらゆるPCベンダーの中でLenovoは最もR&Dに投資している。革新的なPCメーカーであり、顧客の声に基づき2in1、デタッチャブルPC(キーボードを取り外せるノートPC)など新しい製品を届けている」とした。

スマートフォンでの革新は?

 スマートフォンでの革新については、「Moto G」の水中で音楽の再生もできるという防水機能を例に挙げた。Motoブランドでは7〜8月に最新機種を発表する予定が、「驚かせるような製品になる」とラピン氏は述べた。Lenovoは1月、Googleの3Dマッピング技術「Project Tango」を採用したスマートフォンを作成することを発表しており、MWCのブースではゲーム、測定、ナビゲーションなどGoogle Tangoを利用したコンセプトを披露していた。Project Tangoを実装したLenovoのスマートフォンは2016年夏に発表としている。

Moto G 「Moto G」の防水のデモ、ブースでは約20メートルのところから落としても画面が割れないという「Moto X Force」の画面保護機能「ShatterShield」も見せていた
Project Tango ブースではProject Tango技術も紹介していた。こちらはジェンカ(ゲーム)で、立体的にゲームを楽しめる。

 ロイノルド氏はMotoスマートフォンの優れたカスタマイズ性も挙げる。Moto Maker(Webサイト)でカバーの色や素材を選択し、メッセージや名前を入れて注文することができる。ハードウェアだけではなく、アプリ、音声で起動するなどのことも設定できる。「スマートフォンの次の大きなトレンドはカスタマイズ性になる。Moto Makerはとてもユニークで、コンシューマーに大きな価値をもたらしている。これは重要な差別化になっている」と述べた。また、端末を振ってカメラを起動するなどジェスチャーでの操作も見せながら、シンプルなことがすばらしい体験につながっていくとした。なお、Moto Makerの日本での展開も未定とのことだ。

 HPがWindows 10 Mobileスマートフォンを発表するなど、Windowsスマートフォン市場が伸びる機運が感じられるが、スマートフォンのOS戦略についてはどうだろうか。ラピン氏は「顧客が決める」としながらも、iOSとAndroidが独占しており、Windows 10 Mobileは1桁にとどまっている現状も指摘した。今後の展開についても「Windows OS関連のR&Dについては、長年蓄積してきた知識と経験がある。顧客のニーズがあるなら検討する」と述べるにとどまった。

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