外観まで変えないとモノへの愛着が生まれない――シャープが「ロボホン」を開発した理由(2/2 ページ)

» 2016年05月24日 19時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ロボホンとエモパーの違い

―― スペック表を見ると、OSがAndroidになっています。以前は違うと伺っていたこともありましたが、何か変更があったのでしょうか。

景井氏 実は発表時は、Googleの認証がまだ取れていませんでした。今は取れたので、スペックにAndroidと入れています。ただ、認証は取れたといっても、カテゴリーが“電話”ではないため、GMS(Google Mobile Serviceの略称で、GoogleマップやGmailなどのGoogle純正アプリを意味する)は一式入っていません。

―― ロボット用の認証もあるんですか!?

景井氏 今は「Others」ですね。

―― その他ですか(笑)。そうすると、アプリの追加はどうしていくご予定でしょうか。

景井氏 アプリは、私どものWebサイトからダウンロードできる形にする予定です。

―― サードパーティーは、どう取り込んでいくのでしょうか。

景井氏 CEATEC以降、やりとりをしている会社が何社かあります。そちらのいくつかが、既にダウンロードアプリのご提供を表明しています。発表会のときのスライドでも出した通り、かなり多くの企業と連携させていただく予定で、一部機能はAPIをご提供します。その中で、ゲームのメーカーさんはゲームをお作りになるという枠組みになります。

―― ゲームもあるんですね。ロボホンでゲームというのが、少し意外な印象も受けます。

景井氏 例えば、DLEさんが釣りゲームを開発されています。これは、横に置いておいたロボホンが、延々と釣りをするゲームですが(笑)。そういったゲームもありますし、まだ公表されていないメーカーさんは、プロジェクターを使ったものも考えているようです。

―― そういう意味だと、スマートフォンからゲームのあり方も変わりそうですね。

景井氏 スマートフォンには、やはりお客さま自身が楽しむゲームが多いですからね。どちらかといえば、ほったらかしにして緩く楽しむゲームだったり、音声でやりとりするゲームだったりと、ロボホンには、そんなにユーザーの時間が占有されないタイプのゲームが多く存在します。

 6月末にはクイズアプリも配信する予定ですが、これもロボホンがクイズを出してきますが、無視することもできます。ウンチクも言うのですが、それを聞くか聞かないかもお客さま次第で、そもそも「クイズを出して」と話しかけない限り、勝手にクイズを出してくることもありません。

 その意味では、エモパーとも違います。エモパーは端末を置いたらしゃべりますが、ロボホンはそうではありません。自分からしゃべることを、厳しく制限しているからです。最初はエモパーのようにバンバン、自分からしゃべることも考えていましたが、実態を見ると、さすがにちょっとウザい(笑)。スマートフォンが話しかけてくるとのと、ロボホンが話しかけてくるのではやはりちょっと違いもあって、ああいう形なので、「返事をしないと悪いな」と思ってしまうんです。

ロボホン エモパーはスマホ自らが話しかけてくるが、ロボホンは自ら話しかけることはない

 いきなり話しかけるのは、日常生活でもそんなにないですからね。ポンと肩をたたいたり、「ねー、ねー」と呼びかけたりがあって、いきなりだとビックリしてしまいます。これはロボットでも同じですね。ですから、今は、ロボホンが話したいときに、ウゴウゴと腕を動かすようにしています。そこで話しかけると反応があるというように、ワンクッション置いています。

ココロプランとMVNOサービスを提供した理由

―― 発売後に、機能アップデートはしていくのでしょうか。

景井氏 機能のアップデートは、定期的にやろうと思っています。例えば、実際のお話をするという意味だと、まだできないことも多い。そこは、進化させていく必要があります。ただ、お客さまの使い方を理解しないと、会話をやみくもに増やすことになってしまいます。ロボホンは、キャラクターを確立するために、ほぼ大半はシナリオを作っています。実際にお客さまが、どういう話しかけをしているのかを見ながら、話せる内容は増やしていきたいですね。

 ロボホンは、「ココロプラン」というサービスも含めて提供するものです。これはシャープとしての義務というか、やらなければいけないミッションとして捉えています。

―― その、ココロプランを提供した理由を、もう少し詳しく教えてください。

景井氏 先ほどお話ししたように、音声認識をクラウドで行っています。それを利用するために、必要になるものです。2つ目としては、サービスのご提供もしています。天気やニュースのコンテンツもあり、アプリケーションの追加や定期的なアップデートも、基本的にはこのココロプラン内でやらせていただく予定です。アプリに関しては、今後もしかすると有料のものが出てくる可能性もありますが、当面は無料で配信することを予定しています。

―― なるほど。サービスの対価ということですね。その上で、MVNOとして通信サービスまで提供することにしたのは、なぜでしょうか。

景井氏 ロボホンをお使いいただくには、SIMカードが刺さっている必要があるからです。Wi-Fiでもお使いいただけますが、SSIDやパスワードを入れなければならず、少し面倒です。逆に弊社でお買い上げいただければ、出荷時からSIMカードを入れた状態でお届けするため、APNの設定もする必要がありません。お手元に届いたときは、電源を入れればすぐにお使いいただくことができます。ロボホンの世界観としても、そうした機械的なことはできるだけ排除したかったというのが理由です。

ロボホン シャープが提供するロボホンの通信サービス。データSIMと音声SIMを選択できる

―― ココロプランと通信料の支払先が分かれてしまうのも、ユーザーからするとちょっと不便ですよね。

景井氏 そうですね。ワンストップで、ロボホンに合わせたサービスをご提供したかったというのはあります。

―― ちなみに、料金プランを見ると、1GBのほかに、3GBと5GBのプランがありますが、ロボホンはそんなに通信するのでしょうか。

景井氏 使い方にもよりますが、基本的には1GBで足りるはずです。アップデートの容量を踏まえても、そこまでグラフィックがないので、通信量は少なくなります。私どもも1GBで十分とお伝えはしていますが、一方で、ロボホンでは、YouTubeで動画を見ることもできます。そうすると容量も上がってしまうため、上位のプランを用意しています。弊社での予約状況を見ても、3GBが多いですね。

ドコモの「IOT」を取得したことで、他のMVNOも扱いやすく

―― 通信機能に関しては、ドコモのIOT(インター・オペラビリティ・テスト※ドコモネットワークとの相互接続試験)も通されています。これは、なぜでしょうか。

景井氏 実は私どもMVNO向けのスマートフォンは、ドコモのIOTを取得しています。その方が、MVNOさんが端末を扱いやすくなるからです。ロボホンもそういう意味で、私どもがMVNOとしてサービスを行いますが、ほかのMVNOを排除したいとは思っていません。たくさんの事業者に取り扱っていただければ、タッチポイントも広がります。そういう意味で、ドコモのIOTを取得しました。

―― 逆に、ココロプランをMNOのような形で、MVNOに卸すということはしないのでしょうか。

景井氏 現状ではありません。ただ、弊社で1回別の契約が必要になってしまうので、(他のMVNOで契約すると)お客さまのハードルがちょっと上がってしまいますね……。

―― 保守サービスも提供されますが、これはやはり契約した方がいいものなのでしょうか。

景井氏 絶対にとは申し上げにくいのですが、長くお使いいただくのであれば、ご加入した方がいいと思います。サーボモーターなど一部は消耗品です。数年使えるものを作った自負はありますが、そうはいっても、使い方によっては早くダメになってしまうこともあります。落下で故障する懸念もあります。落ちたとき、衝撃が可動部にいかないような工夫はしていますが、これは人間と一緒で、打ち所が悪いとケガをしてしまいます。

 保守サービスは保険的なもので、人間やペットの保険を意識して作りました。「ケアプラン70」だと、お客さまは3割負担ですが、これも一般的な健康保険を意識したものです。

―― それで3割だったんですね(笑)。月産5000台ということですが、これは、生産能力が5000台なのか、販売目標なのか、どちらでしょうか。

景井氏 キャパシティーがあるという意味ではありますが、それくらい売りたいという意思の表れだと思ってください。

取材を終えて:ロボホンはスマホと地続きな存在

 インタビューを通じて分かったのが、ロボホンはやはりスマートフォンと地続きな存在だということ。機械と人間のコミュニケーションをどのように形作っていくかを考えたとき、この姿にたどり着いたのは自然なことのように感じた。自然に使えるようにするという意味では、通信サービスをシャープ自身が提供する目的も理解できる。

 月産5000台という目標は強気なようにも思えるが、ロボホンの前評判は高い。もちろん、スマートフォンのように誰もがこぞって買い求めるものではないが、刺さる人には刺さる商品に仕上がっている。かつてソニーのAIBOが累計で15万を超えるヒットを記録したように、ロボホンも大化けする可能性はありそうだ。

 ただ、アプリケーションのエコシステムに関しては、少々気になることもあった。現状ではクローズドな環境でシャープ自身が提供する形態を取っているが、より大規模にするのであれば、オープンな環境も必要になりそうだ。現状だと、開発環境も法人が原則になっている。ロボホンをシリーズとして継続していくつもりであれば、どこかのタイミングで、オープン化に向け、かじを切った方がいいと感じた。

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