コラム
» 2016年09月15日 09時37分 公開

クレカ、Suica、FeliCa――「Apple Pay」日本上陸前に知っておきたいこと(3/3 ページ)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Type-A/BとFeliCa排他制御の謎

 筆者が一連の現地からの報道を聞いて気になったのがここだ。説明によれば、通常の海外のApple Payで利用されている「Type-A/B」と、今回日本で利用される「FeliCa(Type-F)」は排他仕様となっており、地域設定を日本に設定した場合は後者、それ以外に設定した場合は前者が選択され、それぞれの仕組みを利用できるようになるという。

Apple Pay 日本国内ではまだまだ利用場所が限定される、Type-A/BによるNFC Payの決済。将来のインバウンド需要を見越したうえで、2〜3年先のインフラ整備とiPhone側の対応が求められる

 つまり、日本のユーザーが海外でApple Payによる「タップ&ペイ」を利用する場合は設定を切り替える必要があり、逆に外国人が日本でサービスを利用する場合にも同様というわけだ。ただ、現状で挙げられている国内イシュア(カード発行会社)は海外でType-A/B利用を想定したサービスを提供しておらず、海外ユーザーに至っては日本にiPhone 7を持ち込んでもiDやQUICPayのサービスを利用できない。

 iD、QUICPay、Suicaは全てFeliCaベースのサービスであり、iPhone 7に内蔵されたNFCのアンテナはFeliCaのセキュアエレメントへと誘導されればいい。地域設定を日本外に設定すると、これがType-A/Bのセキュアエレメントへと接続されることになる。基本的には日本国内ではFeliCaしか利用しないので、大多数のユーザーはこれで問題ないのだが、なぜわざわざ排他仕様にするのかが疑問だ。

 日本のおサイフケータイではNFCコントローラーにFeliCaのセキュアエレメントと、Type-A/Bのセキュアエレメント(たいていはSIMカード)が並列でぶら下がる形態となっており、“かざした”読み取り機が要求するサービスに応じて、いずれかのセキュアエレメント内の適切なアプリケーションを自動的に呼び出すようになっている。

 つまり、本来の実装ではわざわざソフトウェア的なスイッチでユーザーが手動で切り替える必要はない。それにもかかわらずこのような仕組みにしたのは、「Touch IDによる認証(日本のおサイフケータイでは必要ない)」か「SuicaのExpressモード」など、iPhone 7ならではの特殊事情があると推察する。このあたりは追って検証していきたい。

 また、海外版iPhone 7では「日本のFeliCaサービスが利用できない」という部分も気になる。現在、NFCの(Type-A/B/F全対応の)コントローラーチップにFeliCa SEが載る形態が増えてきており、恐らくコスト的理由から日本と海外で端末を作り分けるメリットはほとんどない。

 特に大量調達が可能なAppleなら追加コストがほとんど吸収できるので、なおさらだろう。恐らく、国内外のモデルでハードウェア的な仕様の違いはなく、ソフトウェア的に(事故がないように)海外端末ではFeliCa SEの利用を停止しているのだと考える。これは、実際に製品が発売されれば恒例となっているiFixitの分解レポートのほか、実際に海外で端末を購入したユーザーが、日本でのApple Payサービス開始後に国内に持ち込んで実際にテストをすることで判明すると思う。

制限付きのFeliCa搭載でもiPhone 7は“買い”か

 「海外で端末を購入してくるユーザー」「海外でApple Payを使いたいユーザー」「日本へのインバウンド需要」という3つのポイントからみると残念な部分もあるiPhone 7だが、ほとんどのユーザーは国内の多くの場所で「タップ&ペイ」による買い物が利用でき、便利に感じる場面が多いはずだ。さらに、筆者が事前に関係者に聞いていた範囲で「2017年まで難しい」といわれていた「公共交通での利用」が2016年10月にサービスインすることのインパクトも大きい。

 「防水対応」「FeliCaサービスの利用可能」という2点で、これまでiPhoneを避けていたユーザーの一部は、これを機会にiPhoneを利用するようになる可能性がある。ただ、シェアが極端にiPhoneに偏ることはなく、あくまで「FeliCaインフラの利用の裾野が広がる」程度に考えている。

 大都市圏で交通系ICカードを使わない人は少ないと思うが、これまで「おサイフケータイ」の利用の裾野はあまり広がってこなかった。「操作の煩雑さ」と「利用開始のハードルの高さ」が原因だと考えているが、もしAppleがiPhoneでこの現状を打破できるのであれば、カード利用中心だったユーザーに「スマートフォンでNFCサービスを利用する」ことの便利さをあらためて認識してもらえるのではないかと思う。

 「モバイルSuica」はその典型だが、ガラケー時代の操作体系にビューカード以外での年会費徴収、さらに機種変更時の移行の手間など、いろいろハードルが存在する。もしJR東日本が「Suicaアプリ」の提供を機に、Appleとの提携で使い勝手を大きく改善するのであれば、カードからスマートフォンへと移行してくるユーザーも増えるだろう。もともとiPhoneユーザーで「ICカード利用」が中心だった場合も、iPhone 7発売を機にカードを手放すようになるかもしれない。

 恐らく、iPhone 7はこうしたユーザーがよりモバイルへと移行するための最初の一歩だ。Type-A/BとFeliCaの排他利用という残念なポイントも、今後のソフトウェア更新や2017年以降の新機種登場で改善されるかもしれない。

 現状では日本国内にType-A/BのNFC決済が可能な場所がほとんどなく、AppleがType-A/Bでの国内ローンチを断念した原因の1つとみられているが、2017年や2018年以降にはインフラ整備のめどもある程度立ち、そのときにこの排他問題もあらためて解決すると予想する。

 インバウンド需要における海外からの旅行客の国内でのサービス利用も、同じタイミングで可能になると思われる。その頃には2〜3年周期の買い換えサイクルが再び到来し、ユーザーはあらためて国内外両対応となったiPhoneを手に、世界中を端末1つで渡り歩ける時代が来るのだろう。

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