インタビュー
» 2016年09月22日 06時00分 公開

MVNOに聞く:業界に衝撃を与えた「LINEモバイル」の向かう道――嘉戸社長に聞く (3/3)

[石野純也,ITmedia]
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通信の秘密とネットワークの中立性について

LINEモバイル

―― 「通信の秘密」の説明に、発表会でもかなり時間を割いていました。その意図をあらためて教えてください。

嘉戸氏 ダマで(黙って)やるのはよくないという認識でしたし、やはりちゃんと運営して、持続することが第一です。そのためには、お客さまにちゃんと説明するのが一番大切です。通信の秘密については、カウントフリーを料金算出(のための正当業務)として処理している事業者もいますが、LINEでは、これはある意味ではマーケティング行為になるとも捉えています。

 その場合、これは正当業務行為といえるのか。そうならないためには、個別、具体的にやる。ほとんどの人は気にしないのかもしれませんが、気にする人はやはり気にするので、その方のために説明はすべきです。

 ネットワークの中立性に関しては、まだガイドラインがないのが現状です。何か問題があったら考えるというところですが、われわれのスタンスは、そもそもユーザーに(MVNOを選ぶ)権利があるというものです。何かの通信を遮断したり、容量があるときにLINEだけが速度が出るようにしたりということはやっていません。むしろ、緊急避難用として、(容量消費後もLINEを)残しているのに近い。また、ユーザーごとに不公平なことをしているかというと、それも違います。

 あとは何が問題になるかというと独占禁止法で、一定以上のシェアを持ったとき、カウントフリーにするものを、しないもので問題が出るのかもしれませんが、それは通信事業者としてインフラパワーが出てきたときに起こることです。そこまでいくとなると、今のキャリアぐらい(加入者が)必要になりますからね。

―― 中立性に関しては、研究会なりがあったときに、ぜひLINEモバイルも率先して指針決めに参画してほしいと思いました。

嘉戸氏 それはぜひやっていきたいですね。

MVNEにNTTコミュニケーションズを選んだ理由

―― カウントフリーもそうですが、MVNEにNTTコミュニケーションズを選んだ理由を教えてください。サービスインに時間がかかったのは、カウントフリーの調整もあったと聞きますが、なぜでしょうか。

嘉戸氏 広くあまねく声をかけさせていただきましたが、やろうとしていたことはかなり複雑です。DPI(ディープ・パケット・インスペクション)もありますが、そうじゃない部分もあり、品質保証という点でどこが一番適しているのかも考えました。あとは、短納期に耐えられるところですね(笑)。

 (NTTコミュニケーションがOCN モバイル ONEで提供しているカウントフリーとは)同じ部分と、独自にやっている部分があります。大部分はできるという確認はできていましたが、OSごとの違いやタブレットとスマホとの違いを、きっちり見極めるところに時間がかかりました。スマホでテザリングしたPCとスマホでも、識別子が違ったりしてきます。また、通信フローが変わったときにどうするかの整理もしていました。

LINEモバイル NTTコミュニケーションズが保有する設備で、タグから対象サービスのIPアドレス、ポート番号、パケット内容のヘッダの一部を機械的、自動的に識別することでカウントフリーを実現している

―― カウントフリーですが、今後、TwitterとFacebook以外に拡大していくことはあり得るのでしょうか。

嘉戸氏 全然、あり得ますよ。スタンスでいうと、利用シーンを非常に重要視しています。どういう利用のされ方をしているのかという思想で、増やしていくことになると思います。すごく難しいのは、検証をたくさんやらなければいけないところで、数が増えると、その分運用コストも上がってしまいます。それをやって意味があるのかというところも、考えながらですね。

―― 例えば、コミュニケーションという点だと、FacebookグループのInstagramは望んでいる人が多そうです。

嘉戸氏 はい。頑張ります。

―― LINEグループでいうとLINE MUSICもそうですね。

嘉戸氏 課金サービスはちょっと難しくて、決済をどうするのかという問題もあります。無料サービスだとそこだけカウントしなければ終わってしまうのですが、決済をLINEモバイル側でするのかというのがあり、やはり丸ごとできた方がいいと思います。そういうところの整理が重要ですね。

―― LINE LIVEもユーザーにとってはうれしそうですが、動画なのでデータ量が増えてしまいそうです。

嘉戸氏 そうなんですよね……。LIVEの考え方として、みんなが見ているときに放送するというのがあるので、(トラフィックの)ピークもさらに高くなってしまいます。例えば、さしめし(LINE LIVE内でお昼に放送している人気のトーク番組)ではなく、ゆうめしだったりすればいいのですが(笑)。逆に深夜にいいコンテンツを持ってきてくれると、帯域はガラ空きなのでいいんですけどね。

嘉戸氏が社長になった経緯

―― ちょっとここまでの話とは角度を変えた質問になりますが、嘉戸さんが社長になったのは、どういう経緯があるのでしょうか。

嘉渡氏 もともと、LINEに事業戦略室があって、そこで何をやっているかというと、LINEとして抱えている問題の発見や市場調査です。その問題を解決するには、この手段がいいということで、どんどん事業が立ち上がっていきます。その1つの手段にMVNOがあり、こういう立てつけでやるべき、パートナーシップはこうで、サービス仕様はこう、料金はこう、総務省とはこう話さなければいけない、というのをずっとやってきたのが、私でした。その実務をやっていので、そのまま社長になったという感じですね。

―― LINEモバイルには、MVNO出身者も多いと聞きます。

嘉戸氏 サービス企画に関していえば、MVNE出身の人間がいます。逆にWebメディアやサイト、同梱物を作るのは、基本的に(LINEに)いた人間です。それぞれの得意分野を生かしているので、年齢の幅も広いですね。MVNOだけでなく、キャリアにいた人間もいます。

―― そういう意味では、チームもゼロから立ち上げたということですね。

嘉戸氏 最初に立ち上げろと言われたときは、人がいなかったですからね(笑)。開発リソースもなければ、MVNOをやったことがない人ばかりでした。一方で、後発で完成度の高いものを求められるので、どうやるんだというのはありました。人は徐々に集めていき、割と全員野球に近いですね。足りないところは、私も含めてやっています。Twitterとかも……。

―― えっ(笑)。あの公式アカウントは社長が“中の人”だったんですね。答えが機械的じゃないのも納得です。てっきり、LINE側の広報チームがやっているだとばかり思ってました。

嘉戸氏 間違えてはいけないというのがあるので、一番サービス仕様に詳しく、お客さんの動きに詳しい人がやるべきということで、こちら側の事業部(会社)で見ています。また、Twitterに出てくる不満が、CS(カスタマーサポート)に入るより、早いこともあります。例えば、(SIMの発送に使っている)ヤマトから届かないというとき、それが配送業者経由でこちらの耳に入るより、Twitterで声を拾った方が早かったりもしますからね。もちろん、トンマナ(トーン&マナー)をどうするかは、LINEのマーケとも話しています……が、他の公式とちょっとトーンが違うんですよね(笑)。

―― 最後に、本サービスでは、何かサービス内容が変わるのでしょうか。それとも、このままでまずは本サービスに突入するという感じですか。

嘉戸氏 ないしょです(笑)。何かあるかもしれないし、ないかもしれない。もしなかったら、次に来るんだと思ってください。

取材を終えて:家電量販店で売られる日も近い?

 もともとの知名度が高く、注目を集めたこともあって、LINEモバイルのソフトローンチは、順調に幕を切れたようだ。嘉戸氏が「いいお知らせができる」と述べていたように、この記事が掲載されるころには、限定の2万契約も達成できている可能性が高い。リアル店舗がないという販路の課題も認識はしているようだ。交渉も進めているとのことで、本サービス開始後、それほど時間をおかずに、家電量販店などでLINEモバイルのSIMカードが売られ始めるようになるかもしれない。

 一方で、サポートに電話が殺到したことはLINE側にとって誤算だったことがうかがえる。ネットワークサービスはある意味インフラに近い存在。ユーザーの幅が広く、LINEのようなWebサービスを使いこなせない人も利用する。ユーザーのスキルにバラつきが大きく、想定以上にコールセンターが混み合ってしまうというわけだ。価格表など表面には出てこないところだが、本サービス開始にあたっては、このようなサポートの改善も重要になりそうだ。

 サービスの立ち上げが早く、逆に不採算事業を見切るのも速いLINEだが、嘉戸氏が「持続可能性が重要」と述べていたように、LINEモバイルにはじっくり腰を据えて取り組んでいることが分かる。準備期間が長かっただけでなく、本サービス開始前にソフトローンチの期間を設けているのも、そのためだ。それだけ、LINEにとって、LINEモバイルは長期間続けていく価値のある、大きなチャレンジだといえるのかもしれない。

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