「思ったよりも、ずっとちゃんとしていると思いました」――これは、筆者がLINEモバイルのサービス詳細を聞いたあと、LINEのCSMO、舛田淳氏に伝えた言葉だ。舛田氏は苦笑していたが、実際、発表を聞いたプレスの反応も同様のものだった。上場企業に対して“ちゃんとしている”というのは失礼な話かもしれないが、予想以上に通信事業者としての姿勢を明確に打ち出し、ユーザーにもしっかりサービスの仕組みを説明しようとしている。これが、筆者の率直な第一印象だった。
では、何が“ちゃんとしている”のか。最初にそれを感じたのは、LINEモバイルの料金体系だ。LINEモバイルの料金プランは、データ通信の容量別に、1GB、3GB、5GB、7GB、10GBに分かれる。1GBのプランのみ、SMSや音声通話は別途契約できるが、3GB以上のプランはデータとSMSがセットになっており、音声通話をプラスすると、580円(税別、以下同)が追加でかかる。
1GBのデータ通信のみのプランは月額500円。3GB以上のSMS付きのプランは、下から1110円(3GB)、1640円(5GB)、2300円(7GB)、2640円(10GB)となる。音声通話付きの場合は、1GBのプランからそれぞれ1200円(1GB)、1690円(3GB)、2220円(5GB)、2880円(7GB)、3220円(10GB)。同業他社と比べると、安いどころか、むしろやや高めに設定されていることが分かる。
例えば、IIJmioの3GBの「ミニマムスタートプラン」は、音声通話付きで1600円。同等のプランはないが、6GBの「ライトスタートプラン」は2220円で、LINEモバイルより使える容量が1GB多い。1GBの低価格プランは用意しているが、全体として、価格はMVNOの“相場”から大きく離れたものではないというわけだ。
知名度のない新興のMVNOだと、価格競争に走らざるをえなくなるケースもあるが、LINEモバイルはそれをする必要がないという見方もできる。料金プランに関しては、業界標準を押さえつつ、LINEならではの売りを加味して慎重に設定された印象だ。
ただ、それだけだと単に競合他社より価格が高いMVNOになってしまう。ここで生きてくるのが、LINEモバイルが売りとしている、いわゆる「ゼロレーティング」のサービスだ。LINEモバイルではこれを、「カウントフリー」と呼び、1GBのプランは「LINEフリー」としてLINE内の通信がデータ通信量から除外される。3GB以上のプランは「コミュニケーションフリー」になり、LINEに加え、TwitterやFacebookもカウントフリーの対象になる。
LINEフリー、コミュニケーションフリーはLINEモバイルの真骨頂で、「お客さまがパケ死(データ量を使い切ること)してしまうと、通信速度に制限がかかり、コミュニケーションが遮断されてしまう。今のコミュニケーションツールはLINEでありTwitterであり、Facebook。そこは残しておくべきだと強く思った」(LINEモバイル 嘉戸彩乃社長)というコンセプトに基づいて導入されている。
嘉戸氏の言葉からは、3つのサービスがカウントフリーになるからお得だというより、基盤として使われるコミュニケーションサービスに制限がかからないという方に力点が置かれていることが分かる。MVNOとしては競合並みかやや高い程度だが、そのほかのデータ通信を使ってデータ容量がなくなっても、コミュケーションに支障はきたさない。LINEモバイルがユーザーに対して打ち出すメッセージは、このような形のものだ。
ただし、ゼロレーティングは、言葉で説明する以上に、実施するのが難しいサービスでもある。パケットの識別にはDPI(ディープ・パケット・インスペクション)という技術が用いられることが一般的だが、「約束していても漏れが出てくる」(舛田氏)。嘉戸氏も「いかに正確に提供するのかで苦労した」といい、調整に時間がかかったことを明かす。
実際、「Pokemon GO」だけが通信できるサービスを提供した日本通信の「ゲームSIM」では、アプリのアップデートに追従できず、マップが見えないなどの不具合が起こってしまった。LINEの通信をカウントしないサービスはFREETELなども提供しているが、これも、LINE側とは特に調整をしているわけではないという。一方で、LINEは「各社とお話をして体制を作っている」(舛田氏)。具体的には、「FacebookやTwitterも、新しいフローやIPアドレスが入るときは、(事前に情報が入るよう)連携している」(嘉戸氏)といい、漏れがないよう万全の体制で臨んでいる。
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