連載
» 2016年09月13日 06時00分 公開

万全の態勢で臨んだ「LINEモバイル」に死角はあるのか?石野純也のMobile Eye(8月22日〜9月9日)(2/3 ページ)

[石野純也,ITmedia]

「通信の秘密」や「ネットワーク中立性」にも配慮

 もっとも、筆者も過去の連載で指摘したように、ゼロレーティングは、導入の仕方によっては「通信の秘密」や「ネットワーク中立性」に反するものになってしまう。短期的にユーザーメリットがあることは確かだが、一方で、通信が除かれることはプライバシーの侵害につながるし、強力な事業者が通信量をカウントしないサービスを任意に決めるのは、競争の形をゆがめる結果にもなりかねない。

 こうした懸念にも、LINEモバイルは正面から向き合っている。LINEモバイルの嘉戸氏は「カウントフリーは、すごく議論を巻き起こすもの」として、通信の秘密やネットワーク中立性への懸念があることを認め、LINEモバイルでは、次のような対策を取ったという。

 舛田氏が「通信の秘密については、利用規約などの包括的な事前同意では十分でないというのが、LINEモバイルの考えです」と語るように、LINEモバイルでは、申し込みの際に、個別に何を見ているかを説明され、そこに同意しないと先に進めないようになっている。同意文には、MVNEがIPアドレス、ポート番号、ヘッダの一部を機械的、自動的に識別していることが、きちんと明記されている。

LINEモバイル カウントフリーを実現するために見る必要があるデータを明示。MVNEもNTTコミュニケーションズと明かした
LINEモバイル LINEモバイルの申し込みは、カウントフリーに同意しなければ先に進めないようになっている

 これを行うことで、電気通信事業法上の問題をきちんとクリアした格好だ。日本インターネットプロバイダー協会などが策定した「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」にも沿ったもので、ここにも「ユーザーが明確かつ個別に同意している場合、(通信の秘密を侵害する)違法性が阻却される」と書かれている。

LINEモバイル 帯域制御の運用基準に関するガイドライン(※PDF)」でも、個別の同意を取ることが必要とされている

 通信事業者としては当然やるべきことではあるが、MVNOの中には、こうした同意をきちんと取らずにDPIを既存ユーザーにまで広げて適用しているところもある。通信事業者としての歴史や経験が浅いMVNOだけならまだしも、最近では、ソフトバンクがキャンペーンとして自社の「スポーツナビ」だけをカウントフリーにするなど、運用が厳格に守られているとはいいがたい状況があった。これに対し、LINEモバイルは、少なくともユーザーに対して通信経路で何をしているのかを正面から説明しようとしている姿勢が見え、評価できる。

 また、DPIを行うためには、「誰が見ているのか、何を見ているのか、どうやって判別しているのかを説明しなければならない。誰がということになると、MVNEの設備になる」(嘉戸氏)という。そのため、LINEモバイルはMVNEをNTTコミュニケーションズであると明かしている。ネットワークに対する信頼性を演出するため、最近ではU-NEXTやDMM.comなどがMVNEがどこであるかを明示しているが、MVNEまでつまびらかにするのは珍しい。これをあえて公開したのも、信頼性を高める戦術の一環と見ていいだろう。

 一方で、ネットワーク中立性に対しては未解決のままだが、「日本におけるネットワーク中立性に関するルールについては、ネットワークの混雑に対処する観点からの帯域制御のみを対象としており、混雑制御を超える部分の中立性ルールについては未確定であるという認識」(嘉戸氏)で、ゼロレーティングの正当性に関しては、まだ確定した見解がない。

 ネットワーク中立性は「特定のコンテンツを優遇することにつながり、その事業者の寡占を招く」というような考え方が元になっているが、現状ではMVNOの規模を考えると、それを理由に規制に踏み込むのは難しいかもしれない。電気通信事業法では、第6条で「利用の公平性」を掲げているが、これはあくまで通信事業者とユーザーの関係を示したもの。先に挙げたガイドラインでも、ユーザー間の制御に差がなければ、公平に反しないとされている。

LINEモバイル ネットワークの中立性に関しては、現状では法的にどう扱うかの議論が定まっていない

 LINEモバイルも、今後の議論の行方は見守っていくといい、「懸念が発生した場合は誠意をもって対応する」(嘉戸氏)構えだ。こうした法令を守るのは、あくまで事業を行う上での大前提だが、MNOも含め、既存の通信事業者の中で、ここまで踏み込んだ見解を示しているところは少ない。ここも、LINEモバイルがユーザーに対して誠実な姿勢で取り組んでいると感じた部分だ。

端末もしっかりフルラインアップで提供、LINEならではのサービスも

 端末についても、ローエンドからミッドレンジ上位あたりまで、しっかり取りそろえてきた。LINEモバイルの参入発表時、筆者は本連載で複数メーカーがLINE側に接触していることを報じていたが、そのラインアップは予想以上に広く、幅広いユーザーをカバーできる品ぞろえになっている。

 格安というところでは、ZTEの「Blade E01」があり、コストパフォーマンス重視であれば、同じZTEの「Blade V7 Lite」やASUSの「ZenFone Go」も選べる。もう少し値段が張っても、プラスアルファの機能を重視したいというのであれば、税込みで3万円台前半になるHuaweiの「P9 lite」や、富士通の「arrows M02」「arrows M03」もある。国産のハイエンド端末には、シャープの「AQUOS mini」も取りそろえた。

LINEモバイル セット販売の端末は、一気に8機種取りそろえた

 個人的な印象では、Huaweiの「P9」など、もう少しハイエンド寄りの製品があってもいいように思えたが、開始間もないMVNOとしては、十分なラインアップといえる。そもそもLINEモバイルはドコモのネットワークを使用していることもあり、ドコモ端末はそのまま利用できる。端末のセット販売は、あくまでドコモ以外から移ってきたユーザーの受け皿だ。そこに、これだけのバリエーションがそろっていれば、十分といえる。

 ユーザー数に対して端末の種類が多いようにも思えるが、「調達サイクルを最大限短期間で回すようにしている」(舛田氏)ため、在庫を抱えるリスクも低くなるという。こうした体制を取っているため、在庫を抱えすぎた結果、セールで大幅に割引せざるを得なくなるということもなさそうだ。

 一方で、端末ではLINEらしさを出さなかった。「LINEスマホ」のようなものを期待していた向きもあるが、規模が限定されるMVNOだと、どうしても調達台数は少なくなる。そのため、幅広く流通しているSIMロックフリー端末と比べ、どうしてもコストパフォーマンスを出しづらくなる。開始間もない今は、ケースなどのアクセサリーで“LINEらしさ”を出す方が、現実的といえるだろう。それでも、これだけのラインアップをきっちりそろえてきたことは、高く評価できる。

 よりLINEらしさが出ているのは、マイページなどがLINEと連携しているところにある。LINEでは、公式アカウントの仕組みを使い、データ残量などをワンタッチで確認できる。事前の連携設定は必要だが、Webに飛び、都度IDやパスワードを入れるよりも、手順として分かりやすい。ユーザー同士でデータ容量を融通し合う仕組みも入っているが、それも公式アカウントからワンタッチで行える。現時点ではできることは限られているが、拡張の仕方次第では、よくある質問にそのままLINE上で答えたり、プラン変更をコマンドで行えたりといったこともできそうで、よりLINEらしさを出せる仕組みといえるだろう。

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