キャリアのAndroid端末をMVNOのSIMで使いたいという場合には、iPhoneよりも注意すべき点が多くなる。
堂前氏は、3キャリアで販売されているサムスン電子の「Galaxy S6 edge」を例に説明。各社のGalaxy S6 edgeは、写真でみるとウィジェットの位置やメールアプリが変わっているだけでほとんど同じに見えるが、中身は異なっている。
下のスライドのように、Galaxy S6 edgeをSIMロック解除してもMVNOのSIMが利用できない可能性や、利用できても注意が必要な場合がある。
Galaxy S6 edgeは、見た目はそっくりでも、各キャリア版で対応周波数(Band)が異なることが大きい。以下の表は、各社の基地局が使っている電波の表。ドコモはBand 1、19、21、3、28を使っている。ソフトバンクのBand 1、3、28はドコモと同じだが、他は対応していない。電波は総務省から各社に割り当てられて、それぞれ異なるものを使っているのだ。
下の表では、ドコモの基地局は○が付いている周波数の電波を出しているのに、ソフトバンクのGalaxy S6 edgeは黄色く色付けされた周波数しかキャッチできない。ドコモのBand 19、21、28の電波は、ソフトバンク端末では残念ながら拾えない。
この中で特に問題になるのがBand 19、ドコモの800MHz帯だ。実はドコモはBand 19だけを使ってサービスを提供しているエリアがある。主に山間地で人口密度が低い地域だ。こういった地域で800MHz帯に対応していないソフトバンク版Galaxy S6 edgeを使うと、電波が弱かったり圏外になったりするのだ。
堂前氏は、ドコモ800MHz帯のみサポートしているエリアで、実際に端末がどのような挙動をするのかを検証した。ドコモのサービスエリア検索で800MHz帯だけとされている西武秩父線芦ヶ久保駅に自ら出向き、実験した。ところがなんと、Galaxy S6 edgeがなぜかBand1をキャッチしている! しかし、ステータスバーのアンテナマークを見ると、電波はかなり弱いことが分かる。
念のためSIMロックフリーのarrows M03とNexus 5Xでも確認したところ、アンテナマークでは電波をしっかりキャッチしており、Nexus 5Xはドコモ回線の「EARFCN6100(800MHz)」をつかんでいることが分かる。
芦ヶ久保駅近辺では800MHz帯の電波でエリアが構築されており、ソフトバンク版Galaxy S6 edgeがつかんだBand 1の電波は、山の向こうからたまたま飛んできたものだと予想される。ともかく、800MHz帯に対応していないソフトバンクのGalaxy S6 edgeは山間地では使いにくく、圏外になる可能性が高いということが確認できた。
一方、IIJmioのタイプA SIMは、端末がau VoLTEに対応していないと使えないSIMだ。ドコモとソフトバンクのスマホが自社のVoLTEに対応していても、au VoLTEに対応しているわけではない。そのため、これらの端末をSIMロック解除しても、タイプA SIMでは、データ通信はできるかもしれないが、通話はできなかったり、圏外になったりする可能性が高い。
ただ、堂前氏がソフトバンク版Galaxy S6 edgeにタイプA SIMを挿して検証したところ、なぜかVoLTEで通話ができたという。ただし「それがたまたまなのか、端末がそういう設定になっているかは不明」なので、「使えるとはいえない」とのこと。原則として、au VoLTEに対応していない端末で、タイプA SIMは使えないと覚えておこう。
タイプA SIMは、auが販売したスマホをSIMロック解除すると使える。タイプAのSIMはauの基地局を使っているので、電波がマッチするからだ。
以上、いくつか注意点はあるが、auとソフトバンクの端末は、SIMロックを解除すれば、IIJのSIMカードでも使えるということになる。
ただし、全ての機能が使えるわけではない。今回検証したソフトバンク版Galaxy S6 edgeは、IIJmioのSIMを挿したときにテザリングが利用できなかったという。SIMロックを解除したiPhoneでも、au系MVNOのSIMではテザリングができないことが報告されている。
一方でテザリングが利用できる端末もある。テザリングの可否は、全てのスマホでは検証されておらず、データもまとまっていない。試してみないと分からないという状態で、IIJでも調査ができていないそうだ。テザリングをどうしても使いたい場合は、ネットで体験談を探してみるくらいしかできない。
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