IoT通信プラットフォームを開発するソラコムが5月10日、新プランを発表した。
ソラコムはMVNOとして、NTTドコモとの相互接続をAmazonのクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Sevices)上で実現する「SORACOM Air for セルラー」を展開。海外進出も果たし、2016年12月から米国、2017年2月から欧州でサービスを提供。各国のキャリアと接続しており、1枚のSIMカードで120以上の国と地域で利用できる。基本料金は日本向けが1枚あたり1日10円で、データ通信料は1MBあたり0.2円からの従量課金となっている。
そんなSORACOM Air for セルラーの新プランとして、低トラフィックのデータ通信を対象とした「Low Data Volume」を5月16日から、日本を含む世界各国で提供する。1カ月あたり0〜3MB程度の通信を想定しており、バスや車の位置情報をトラッキングする、インフラを遠隔管理するといった用途を想定している。基本料金は月額0.4ドル(約45円)。データ通信料は1MBあたり0.5ドル(約56円)で、KB単位で課金される。
Low Data Volumeのデータ通信料は、通常プランよりも高いが、基本料金は通常の月約300円よりも約250円安い。例えば月に3MB通信をすると、通常プランで1MBあたり0.2円の課金だと月約306円だが、Low Data Volumeなら213円で済む。
通信は3G回線のみを使い、速度は32kbps、128kbps、512kbps、2Mbpsから選べる。
ソラコムのSIMを用いたデータ通信を暗号化して、安全にアップロードとダウンロードロードができる「SORACOM Beam」や、端末からのデータを特定のクラウドサービスに直接転送するためのアダプター機能を提供する「SORACOM Funnel」など、Low Data Volumeでも通常プランと同様のサービスを利用できる。
今回の新プランを導入する背景として、ソラコムの玉川憲社長は、デバイスや通信モジュールの小型化、低価格化が進んでおり、通信量や通信頻度が少ない用途でもソラコムのモバイル通信を活用したいという要望が多く上がっていることを挙げる。
SORACOM Funnelの機能拡張も行い、各種クラウドサービスの接続を可能にするアダプターに「Partner Hosted Adapter」を追加。これにより、ソラコムのパートナー企業がアダプターを開発できるようになり、同企業のクラウドサービスに接続可能になる。玉川氏によると、AWSやAzureなどのメガクラウド以外にも対応してほしいという声が多かったという。
玉川氏は、SORACOM Air for セルラーを活用した新しい事例も紹介した。プリンシプルが提供する「スマートルームセキュリティ」は、独り暮らしの女性向けのセキュリティサービス。窓やドアにセンサーを付けて、不在中にドアが開いたらスマートフォンに通知が届くという仕組み。月額500円〜980円で利用できる。
日の丸自動車興業との協業では、バスに搭載したスマートフォンからGPSデータを送信し、東京駅周辺の無料巡回バスの位置と到着時間を、スマホやサイネージなどに配信する。
京成電鉄との協業では、踏切設備に監視カメラを設置し、踏切事故発生時に遠隔で映像を確認できるようにしている。
三井物産との協業では、タブレット付きショッピングカート「ショピモ」のコンテンツを配信する際、Wi-Fiのバックアップ手段としてSORACOM Airを活用。低コストで確実に通信をできるようにした。
マツダとの協業では、展示会を訪れる客層の分析にSORACOM Airを活用。展示会に設置したカメラから、来訪者の属性情報だけを取得して、性別、年齢、新規かリピーターか、感情などをメタデータ化して送信する。
動態管理、決済端末、デジタルサイネージ、業務端末など、SORACOM Airの用途はさまざまだが、月額料金は300円台〜400円台で済む。現在6000以上の企業がSORACOM Airを利用しているのも、小容量の通信を低コストで実現できることが大きな魅力になっているのは間違いない。
また、ソラコムのプラットフォームを外部の企業が活用できるようになる「SORACOM パートナースペース(SPS)」の申請企業は310社を超え、認定済みパートナーは68社に及ぶ。
サードパーティー製の「LoRaWAN」対応デバイスのオープン化も開始する。
LoRaWANは、「LPWA(Low Power Wide Area Network)」と呼ばれる無線通信規格の1つで、920MHz帯を免許不要で利用できる。省電力で広域(数km)をカバーできるので、モバイル回線に代わる、IoTやM2M向けの新しい通信手段として注目を集めている。
LoRaWANでは、LoRaゲートウェイを小型の基地局として運用し、ここから飛ばす電波をLoRaデバイスがキャッチして通信をする。通信速度は遅いが、「乾電池で数年稼働する」「モジュールを安価に開発できる」のがメリットだ。
ソラコムはSORACOMのプラットフォームをLoRaWANに対応させた「SORACOM Air for LoRaWAN」を2017年2月に開始した。牧場(約2km)をカバーして牛の動線管理をする、遭難防止のために携帯の電波が入らない山で登山者に位置情報を送信する、といった活用事例もある。
これまで、LoRaデバイスはソラコムが販売する開発者向けのレファレンスモデルのみを提供していたが、他社もLoRaWAN対応デバイスを開発できるようになる。「レファレンスモデル以外の他社ベンダーのデバイスを使いたい、いろいろな選択肢を使いたいという声が多くなってきた」(玉川氏)ため。
現在はエイビットをはじめとする6社がLoRaWAN対応デバイスを開発しており、位置情報の送信や、温度測定などの用途を想定している。
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