なぜ小さなベンチャー企業が高性能のスマートフォンを提供できるのかITライフch

» 2017年05月12日 06時00分 公開
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なぜ小さなベンチャー企業が高性能のスマートフォンを提供できるのか

 SIMフリースマートフォンの人気が徐々に高まり、非常に多くのメーカーがスマートフォンを提供するようになりました。その中には、家電やパソコンなどを手掛ける大手のメーカーだけでなく、規模の小さい企業も見られます。

 実際、テレビCMなどで注目されている「FREETEL」ブランドでスマートフォンを提供しているプラスワン・マーケティングは2012年設立のベンチャー企業ですし、独自のデザインで注目されているスマートフォン「NuAns NEO」シリーズを手掛けるトリニティは、もともとはスマートフォンの周辺機器を手掛けている小規模の企業でした。

「FREETEL」ブランドでスマートフォンを提供しているプラスワン・マーケティング

 こうした小規模の企業が、自社で工場を構えてスマートフォンを製造できるとは考えにくいのですが、なぜ彼らがスマートフォンを提供できているでしょうか。それにはいくつかの理由があります。

 そのひとつはパソコンのように、端末を構成する部品のコンポーネント化が進んだことです。

携帯電話業界でかつて一世を風靡したモトローラ

 スマートフォン、ひいては携帯電話を開発するためには、通話や通信をする上で必要な無線通信技術や、高い性能を実現するためのCPUやメモリなどが必要です。それゆえ、かつてはそうした部品や技術を自社で開発・調達できるメーカーしか携帯電話を開発できませんでした。実際、携帯電話業界でかつて一世を風靡したモトローラ(現在はレノボ傘下のモトローラ・モビリティ)は、ラジオやトランシーバーなどでつちかった高い無線技術を携帯電話に生かして端末の小型化を進め、人気を獲得していました。

 しかし、携帯電話の市場が広がるとともに、よりたくさんの端末を安価に提供する必要が出てきました。そこで携帯電話を効率よく開発できるようにするため、携帯電話を構成するさまざまな部品をコンポーネント化し、それらを組み合わせることでより簡単に端末開発ができる仕組み作りがなされていったのです。通信に必要な無線モデムやCPUなどをひとつにまとめた、クアルコムのチップセット「Snapdragon」シリーズなどは、そうしたコンポーネント化の代表例といえるでしょう。

 独自のノウハウが必要だった部品がコンポーネント化され、端末を設計・製造するのがより簡単になったことで、無線などのノウハウなどを持たない企業も携帯電話やスマートフォンを開発できるようになりました。しかし、自社で工場を設けて端末を製造するとなると、土地や設備といった固定資産に加え、人件費もかかることから、その分のコストがどうしても上乗せされてしまいます。また、もしも端末があまり売れなかった場合には、工場の維持費がそのまま経営リスクにもなってしまいます。

 そこで、より安価でローリスクに端末を開発・提供する手段として活用が進んだのが「OEM」(Original Equipment Manufacturer)や「ODM」(Original Design Manufacturing)です。これらの存在が、ベンチャー企業がスマートフォンを提供できる、もうひとつの理由へとつながっています。

 OEMは製造、ODMは設計から製造までを引き受けてくれる企業で、携帯電話以外にもパソコンや家電など多くの分野で活用されています。それゆえ中国や台湾などにはOEMやODM専門のメーカーが多数存在しており、それらを活用することで、自分達で工場を持つリスクを抑えながら端末を製造できるようになったのです。

アップルは鴻海精密工業などに製造を委託

 こうしたメーカーを活用してスマートフォンを提供する企業として、よく知られているのがアップルです。アップルは自社で工場を持っておらず、端末の設計などは自社で手がけながらも、シャープを傘下に収めたことで知られる台湾の電子機器製造大手、鴻海精密工業(フォックスコン)などに製造を委託することで、iPhoneなどの高性能な端末を大量に製造し、世界中に供給できているのです。

 ですがOEM・ODMを活用するメリットは、工場を持つことなく製品を大量に製造できることだけではありません。例えば販売するスマートフォンの台数が数万台程度と非常に少ない場合、そもそも自社で工場を持つこと自体、割に合いません。けれどもOEM・ODMメーカーに委託すれば少量であっても端末を製造してくれることから、ベンチャー企業のように資金力が弱く、端末の販売台数が少ない企業であっても、スマートフォンのラインアップを豊富に揃えられるのです。

少量・多品種製造によって成功を収めたWiko

 そうした少量・多品種製造によって成功を収めた代表例が、今年日本進出も果たしたフランスの「Wiko」(ウイコウ)というメーカーです。Wikoは2011年に設立したばかりのベンチャー企業ですが、ポップなカラーリングで特徴的なデザインなながら、コストパフォーマンスが高いスマートフォンを多数提供することで、フランスをはじめとした欧州で急速に人気を獲得。短期間のうちに欧州を代表するスマートフォンメーカーのひとつにまで成長しています。

Wikoは端末の設計は自社で、製造は外部のメーカーに任せる手法で多種類の端末を安価に提供

 同社は、デザインを主体とした端末の設計は自社で手がけつつ、製造は外部のメーカーに任せるという手法によって、設立間もないベンチャーながら多くの種類の端末を安価に提供し、人気を獲得したのです。Wikoの成功以降、同様の手法で安価なスマートフォンを多数提供するメーカーは世界的にいくつか見られるようになり、日本ではSIMフリー市場で上位を争っているFREETELが、その代表例となっています。

 このように、さまざまな企業がスマートフォンを安く提供できるようになったのは、スマートフォンを製造するしくみ自体が大きく変化してきたことが背景にあります。今後もこれらのしくみを用いることにより、より多くの企業が特徴のあるスマートフォンを提供してくれることを、期待したいところです。

この記事の執筆者

佐野正弘

佐野正弘

エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在は業界動向から、スマートフォン、アプリ、カルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。


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