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» 2017年07月17日 06時00分 公開

ドコモの訪日外国人向け「Japan Welcome SIM」は何が新しい? 使ってみて気付いたこと (2/2)

[石野純也,ITmedia]
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受取から設定までは非常にスムーズ、APN自動設定も便利

 申し込みが終わると、SIMカードを引き換えるためのQRコードが発行される。これを持ち、あらかじめ申し込んだ場所に行けば、SIMカードを受け取れる。申し込みの時点でクレジットカード情報を入力しているため、現地では特に支払いなどをする必要はない。筆者は開始直後の7月6日に羽田空港でSIMカードを受け取ったが、QRコードを見せただけで、すぐに受け取ることができた。

Japan Welcome SIM 空港のJAL ABCカウンターでQRコードを見せるだけ

 SIMカードは、標準(ミニ)、micro、nanoの3サイズに切り取れる、いわゆるマルチSIM。ドコモとしては、初のマルチSIMで、このタイプのSIMカードはMVNOにも提供されていない。プリペイドのSIMカードの場合、どの端末に挿されるか予見が難しいため、1つで3サイズに対応できた方が、効率がよくなる。こうした事情で、ドコモもマルチSIMを採用したようだ。

Japan Welcome SIM SIMカードは、3つのサイズに切り取ることが可能

 SIMカードを端末に入れると、電波をつかみ、通信が可能になる。ただし、この状態ではアクティベーション用のページにしかつながらない。まずは、説明書に書かれたURLにアクセスし、アクティベートする必要がある。ここでは、申し込み時に作成した、dアカウントのIDとパスワードを使用。ログインしたあと、SIMカードの台紙もしくは端末で確認できる電話番号を入力すると、SMSが届く。ここに記載されているワンタイムパスワードを入れれば、アクティベーションは完了。すぐに通信ができるようになった。

Japan Welcome SIM Mate 9にSIMカードを挿した
Japan Welcome SIMJapan Welcome SIM アクティベーションサイトにアクセスし、SIMカードの電話番号を入力。ワンタイムパスワードを入れれば、通信できるようになる
Japan Welcome SIM アクティベーション完了後、すぐにネットにつながった

 勘のいい方はもうお気付きかもしれないが、通信するまでにAPN設定は一切行っていない。アクティベーションはAndroidの「HUAWEI Mate 9」で行ったが、iPhone 7にSIMカードを差し替えても、同様に設定不要で通信することができた。ちなみに、APN設定を手動で変更できるMate 9で、あえてMVNOのAPNに設定を変更してみたが、そのまま通信できてしまった。Japan Welcome SIMは、「APN設定が不要なこと」を売りにしているのだ。

Japan Welcome SIM あえてDMM mobileのAPNを指定してみたが、通信が途切れることはなかった。IPアドレスはこの状態でもspモードのものになっていた

 技術的な詳細は非開示とのことだったが、端末の挙動や割り振られてspモードのIPアドレスを見る限り、おそらく、ネットワーク側で強制的にAPNを指定している可能性が高い。SIMカードの識別番号であるIMSIを見て、Japan Welcome SIMだと判定したときに、端末から送られてくるAPN情報を無視して強制的にspモードにつなぎにいくようにすれば、このようなことができるはずだ。iPhoneの場合、ドコモのSIMカードを挿すとAPN設定の項目が隠れてしまうが、これならAPN構成プロファイルをインストールする必要がなく、便利だ。Androidの場合も、手動でAPNを入力するひと手間が減った格好になる。

 通信速度は、さすがMNOのドコモといったところで、高速でかつ安定している。試しに渋谷の事務所で平日の13時38分に速度を測ってみたが、下りで80Mbpsほどの速度が出ていた。MNOから借りている帯域幅が限られており、利用が集中すると速度が出にくくなるMVNOと比べ、快適といえる。どの国から日本に来たかにもよるが、ここまで快適でしかもエリアが広いのは、訪日外国人観光客にとって驚きかもしれない。まさに、高速な通信というおもてなしといえるだろう。

Japan Welcome SIM 渋谷でも80Mbps以上の速度が出ていた。MVNOのように極端な速度低下がなく、安定しているのはさすがMNOのドコモ

日本人向けサービスへのフィードバックにも期待

 訪日外国人観光客向けという位置付けのJapan Welcome SIMだが、実際に使ってみると、日本のユーザーにとっても便利だと感じるポイントがいくつかあった。例えば、動画を見てデータ量が増えるという仕組みは、月末に近いタイミングで速度制限されてしまったユーザーが使えれば、うれしいサービスになるかもしれない。

 マルチSIMやAPN自動設定機能については、MVNO側からドコモに対応の要望があがる可能性がある。現状では、SIMカードが3サイズに分かれているため、MVNOは需要を予測しながら、在庫をストックしておかなければならない。しかもプリペイドSIMの場合、販路を考えるといわゆる「SIM焼き」は終えておかなければならないので、在庫を持つだけで、1枚あたり月額97円がMVNOに請求される。

 この辺りの詳しい事情は、IIJの堂前清隆氏が執筆された記事を参照してほしいが、1枚のSIMカードで3サイズに対応できれば、標準サイズだけ余ってしまったというような不良在庫を抱えるリスクを減らせるはずだ。

 APN自動設定機能も、MVNOに機能開放されれば、サポートコストを減らすことにつながるだろう。また、ドコモのSIMカードを挿すとAPN設定ができなくなってしまうiPhoneをMVNOのSIMカードで利用する際には、ユーザーがわざわざAPN構成プロファイルをインストールする手間もなくなる。

 APN構成プロファイルのインストールは、あまり一般的な作業ではないため、初心者がMVNOでiPhoneを利用する際のハードルになりがちだ。海外でも一般的に行う設定ではないため、訪日外国人観光客がプリペイドSIMの設定をするときの難易度を上げてしまっているおそれがある。せっかく実現した機能を、プリペイドSIM限定にしてしまうのはもったいない。ドコモには、訪日外国人観光客向けにとどめず、幅広い応用例を検討してほしい。

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