KDDIは8月1日、2017年度第1四半期決算を公表した。決算上は前年同期比で増収を達成したものの、周辺のデータをつぶさに見るとau(KDDIと沖縄セルラー電話)の携帯電話契約が減少傾向にあることなど、不安要素も見え隠れする。好調な新料金プランも、あまりに集中してしまうと減収要因になりうる。
そんな状況の中、同社の決算説明会に参加した記者たちは田中孝司社長にどのような質問をしたのだろうか。そして、田中社長はどのように答えたのだろうか。
―― 新プランが45万契約を突破したという話があったが、新プランの契約者数が増加することによる収益への影響をどのように考えているか。
田中社長 値下げによってARPA(※)は下がる方向に行くと思う。もう少し(サービスを含めて)使ってもらうために、「auフラットプラン」なら「安いけれどおトク」というところを訴求したい。
「(フラットプランにして)もっとデータを使いたい」という方向に持っていくことができれば、ARPAも上がる構造になってはいるが、まだ(提供を)始めてから半月なので今後どのようになっていくかはまだ分からないというのが現実だ。
とはいえ、半月で45万(契約)ということなので、(au契約者には)受け入れられているという手応えは感じている。調べたところ、Androidの端末購入は5割増(参考記事)、MNP新規も2倍増になっている。新たなお客さまの影響が、今後どのように出てくるのかはもう少し時間をかけないと分からないと思う。
半月でここまで来られたのは、営業部隊にとってポジティブな“追い風“になったとも思う。
ARPA(Average Revenue Per Account):1契約者当たりの平均収入
―― 第1四半期決算の減収要因に「戦略コスト」として50億円が入っている。この内訳を可能な範囲で教えていただきたい。
田中社長 2016年度通期決算説明で、年間で500億円の「戦略コスト」を盛り込むと話したかと思う。内訳としては200億円を「au STAR」を中心とするリテンション(顧客還元や引き留め施策)、150億円を店舗(auショップ)のリニューアル、残りを(「au WALLET Market」や「Wowma!」などの)コマース事業に使う予定だが、今期の「50億円」はその四半期分だと思って良い。
「(予定額の)10%程度しか使っていないの?」と思われるかもしれないが、特にリテンションコストは年度の後半に向かって額が増えていく。店舗リニューアルも、年度の後半に集中している。内訳の詳細については、これくらいにさせていただきたい。
―― 他社(NTTドコモ)が大容量プランにおける「テザリング料金」の課金を無期延期した。それに対する対抗策などは考えているか。
田中社長 ドコモさんの発表は昨日(7月31日)だったかと思う。我々は現状で2018年3月までを(大容量プランにおけるテザリングオプション料金の)無料期間としている。それが終わるまでに(オプション料金を)どうしようか検討しようと思っている。
「もうしばらくお待ちを」というのが、現状のステータスだ。3月末まで、しっかり状況を見て判断していきたい。
―― 連結のモバイルID(auとグループ内MVNOを合算した携帯電話の総契約数)は確かに増加しているが、MVNOの比率が高まっていて、肝心のauが減っている。今後、auの契約者数はどう推移すると考えているか。
田中社長 前年同期比でau契約者数が「右肩下がり」になっているのは事実で、その主たる原因はMVNOへの流出であると理解して頂いて良い。年度替わりを挟んで2月から5月にかけては家族がまとめて(MNPで)転出するケースが多く、よりインパクトが現れている。
「今後どうなるのか」という話だが、新プランのキャンペーンで「イチキューハチマル(1980円)」という価格を打ち出したことでリテンションが効き始めたと認識している。新プランによって(他社への)流出が下げ止まることを期待している。
見通しについては、もう少し時間を頂きたい。
―― Android端末の場合、「auスマートパス」加入の有無で「毎月割」の金額が変わるという組み立てになっていると思う。新料金プランでは毎月割が付かないので(auスマートパスの)ユーザー獲得においてマイナスの影響が出てしまうと思うのだがどうか。
田中社長 (毎月割の付かない)新料金プランの導入でスマートパスの新規契約が減るかどうかは始まったばかりで「まだ分からない」というのが正直な所だが、現実的にはそれほど影響はでないと思っている。もう少し様子を見てみたい。
―― 新料金プランがリテンションに効いてくるという話があったかと思うが、他社からの顧客獲得に影響している点はあるか。
田中社長 正直なところ、今ご質問頂いたことに関連して、私たちの予想と違うところが大きく2点出た。
新プランは「MVNO流出阻止」といったリテンションを考えて(既存の)お客様にとって望ましいプランとして作ったのだが、MNP新規が(新プラン)導入前の2倍に増え、Android端末の新規契約も5割増えた。これが1つめの「予想外」だ。
もう1つの「予想外」は、お客さまがプランを「良く見ている」ということだ。新プランではピタットプランを中心に訴求をしているが、従来の「データ定額5」に少しプラスするだけで20GB使えるということで「フラットプラン(20)」を選ぶ人も多い。「データ定額1/3」を使っている人がピタットプラン、それ以上のデータ定額を使っている人がフラットプランに行っている。
フラットプランの良さを知ってもらうには少し時間がかかると思っていたが、当初の予想以上に選んでもらえている。
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