「日本のPCが世界を席巻していたかも」──HPだからできた“デザイン主導ノート”の世界展開山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」 (2/2 ページ)

» 2008年05月28日 13時30分 公開
[山田祥平,ITmedia]
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各国で異なるHP 2133のアピールポイント

──量販店における個人向けPCの販売を、約6年ぶりに開始されるそうですね。

HP 2133の発表会では住友スリーエムの協力で開発された「Skin@HP」によるデザイン展開も予定されている

菊池 PCの販売において、流通というのは、実に重要な要素です。個人の8割が量販店でPCを買っているのが現状ですから、彼らを無視するわけにはいきません。ずっとダイレクト販売でがんばっていたのですが、シェアが数%と伸び悩んでいました。だから、流通の力をどのように使って、消費者に訴求していくかが今後の重要なテーマです。

 コンパックを含めて、HPを以前から知っているユーザーには、質実剛健、壊れにくくていい製品というイメージを持っていただいています。そこにプラスして、デザインをアピールすることで、デルやレノボとは違った印象を持ってもらおうと考えています。この展開をうまくスタートさせるためにも、今回、新たに提案するHP 2133 Mini-Note PCは成功させたいです。

──HP 2133 Mini-Note PCは、大手ベンダーが7万円を切る価格で発売するノートPCとして、話題になっていますね。

HP 2133については、すでにPC USERでもレビューを掲載しているが、CPUにVIA C7-M ULVシリーズ(ハイエンドで動作クロック1.6GHz)を搭載し、グラフィックスコアはVIA Chrome9 HCを採用するスペックとWindows Vistaとのバランスが気になるところであった

菊池 HP 2133の販売方法ではどこのリージョンも迷っているんです。製品は同じでもマーケティング戦略は、各リージョンごとにまったく違いますから。日本HPとしては、どのPCベンダーもまだいない、まったく新しい市場を作っていこうと考えました。これまでのHPでは、日本独自の市場を作るという試みをやってこなかったので、期待と不安が入り交じった心境です。

 フォームファクタとしては、8.9インチワイドの液晶ディスプレイを搭載するミニノートPCですから、リージョンによっては、UMPCに分類しているところもあります。日本HPでも、製品をよく検討しながら日本スタッフで議論しました。

 まず、「低価格」という特徴だけで訴求するには、コストや素材の点で無理があります。これだけの質感と将来的なロードマップを持つ製品で、原材料のコストなどと相談すると、5万円以下のPC市場で競合していくのは不利です。そこで、ディスプレイ解像度の高さ、素材の堅牢さ、質感の高さ、ギガビットイーサネットの対応など、HP 2133が持つ付加価値を検討していき、どのような市場で、どのようなユーザーの期待に応えられるかを議論したところ、「既存の市場には、このカテゴリの製品はない」という結論に達しました。そこに、誰もが購入できるな価格をつければ、フル機能でなくても、十分に使えるPCとして、評価していただけるはずだと判断したのです。

「あの市場は長続きしませんよ」

──ワールドワイドヘッドクォーターは、どのような位置づけを考えてHP 2133を開発したのでしょう。

菊池 もちろん、法人向けの製品としてです。そういうスペックを持ちながら、日本HPとしては、コンシューマーユーザーも狙っていくわけです。これは、各リージョンと共通するアイデアだったため、ブランドから「コンパック」をとりました(ワールドワイドのHPでは、価格を重視したビジネス用とのPCに“COMPAQ”ブランドを付加している)。このように、ブランド戦略だけでなく、デザインなどもコンシューマー市場で売りやすいようになっています。これは、各リージョンの考えに沿ったものといえるでしょう。ワールドワイドのHPとしては初めての試みかもしれませんね。ただ、実際には、北米で教育市場、欧州では国ごとにバラバラ、南米は法人向けというスタンスをとるようです。

──フル機能の高性能PCではないという点は懸念されていませんか。

菊池 実際には、7割くらいのユーザーがセカンドマシンとして使うでしょうね。それなら十分です。でも、買い換えのタイミングで機種を選定するときに、これ1台で大丈夫という判断をするユーザーもいるはずです。だから、ほかのセカンドマシン用PC、いわゆるサブノートPCと違いを出すために、これ1台でも十分使えることを積極的にアピールしていきます。

 極端な言い方をすれば、ASUSのEee PCと競合するのはもったいないと判断したんですよ。スケールメリットでコストを落とすことはできますが、彼らと同じ土俵で同じ戦い方をしていると、共倒れになってしまいます。だから、彼らにはできないことをやってみようとして、スペックを妥協することなくハイエンドを目指しました。だから、Eee PCより数万円高くなりましたが、この判断は正しかったはずです。

 たぶん、Eee PCを購入したユーザーは、最初のうちはともかく、すぐに不満を感じるようになるはずです。あの市場は、あまり長続きはしないはずですよ。もちろん、ある程度はいくでしょうけど、それがどのくらいの大きさなのかというと疑問も残ります。だから、HPはまったく同じ市場は目指しません。

低価格で爆発的な人気を博したEee PC。こちらもカラーバリエーション、大画面液晶ディスプレイと高機能化で次の活路を見出そうとしている

 新しい提案をしなければ、市場は縮小する一方だと菊池氏は断言する。このことは、新しい使い方の提案により、最新のPCを使ってもらう環境作りにHPという巨人が乗り出したことを意味する。それが、現在における個人のデジタルライフスタイルに、どのような影響を与えるのか興味は尽きない。個人的には、HPが考えるように、より多くのユーザーが、本気でPCを持ち歩く市場が形成されていくのは、とても望ましいことだと思う。それが本人にとって唯一のPCであろうが、自宅に戻ればバリューラインのデスクトップPCがあろうが、プライベートでPCを使う時間が増えることには間違いないのだから。

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