IQ500シリーズの大きな特徴の1つは、OSにWindows Vista Home Premium(SP1)の64ビット版を採用したこと。コンシューマー向けの標準プリインストールOSとして、大手PCベンダーが64ビット版のWindowsを採用するのは、おそらくこれが初めてだろう。おかげで、内蔵する4Gバイトのメモリをフルに利用することができる。64ビット版Windowsの場合、デバイスドライバのサポートが問題になりがちだが、拡張スロットを持たない本機であれば、それほど深刻な障害にはならないという判断なのだろう。いずれにしても、可能ならば64ビットへ移行したほうがよいことは間違いない。
TouchSmart PCシリーズを特徴付けるTouchSmartソフトウェアも、このIQ500シリーズで一新された。IQ700シリーズに搭載されていたTouchSmart Centerは、ミドルウェアとしてWindows Media Centerを利用しており、俊敏な動作とは言えない部分があった。IQ500シリーズのTouchSmartソフトウェアは、Media Centerの利用をやめたほか、64ビット対応(すべてのモジュールが64ビット化されているわけではないが)しており、操作性が大幅に向上している。
TouchSmartソフトウェアの主な機能は、YouTubeへのアップロード機能を持つ「ビデオ」、付せんタイプのメモに加え音声や動画のメッセージを残すことができる「メモ」、デジタルカメラのデータを取り込み簡単な編集と印刷が可能な「ピクチャ」、ジャケットのイメージを指によるタッチでめくる感覚が楽しい「音楽」、約束の時間に本体上部のLEDが点灯して教えてくれる「カレンダー」、RSSフィードを表示する「RSSリーダー」、これらのアプリケーションにルック&フィールを合わせたオリジナルWebブラウザなどだ。「音楽」はiTunesライブラリの再生にも対応する(ユーザーがiTunesをダウンロードしてインストールする必要があるが)。ユーザーが好みのアプリケーションを登録することもできる。ちなみに、TouchSmartソフトウェアの操作感は、こちらの動画記事を参照してほしい。


TouchSmartのメイン画面(写真=左)。「ビデオ」ではWebカメラで撮影した動画を簡単にYouTubeへアップロードできるようになった(写真=中央)。文字入力はソフトウェアキーボードでも行なえる。「ピクチャ」では指1本でトリミングが可能だ(写真=右)

標準状態では「iTunes ライブラリを使用します」がグレーアウトのままだが(写真=左)、ユーザーがiTunesを導入することで選択できるようになる(写真=中央)。タッチ操作に最適化したWebブラウザの画面(写真=右)それぞれのアプリケーションは、タッチによる操作を意識したもので、使い勝手のよさ、分かりやすさに重点が置かれているようだ。一方で、「ビデオ」が対応可能なビデオ形式が限られていたり(MPEG-1、dvr-ms、wmv、asf、avi)、「ピクチャ」がカメラRAWには対応しないなど、パワーユーザー向きの機能は備えていない。今回のTouchSmartソフトウェアは、前作のように家族のコミュニケーションツールであることをことさら強調しないものの、ファミリーで簡単に使えるというコンセプトは継承している、ということなのだろう。
このIQ500シリーズで残念なことは、地上デジタル放送チューナーの開発が、製品の発売に間に合わなかったことだ。地デジチューナーは現在開発中で、提供は秋(9〜10月ごろか)になるという。要するに北京オリンピックには間に合わないわけで、日本の家電系メーカーであれば考えられないことかもしれない。先代のIQ700シリーズも発表時点では地デジチューナーが間に合わなかったことからすると、またもやの感がある。タッチセンサと良好な液晶の見え具合を両立したディスプレイだけに、地デジチューナーの提供が遅れることが惜しまれる。
この点を除けば、今回のIQ500シリーズはなかなかよくまとまっている。特に直販下位モデルであるIQ501jpの13万9860円という価格は魅力的だ。IQ700シリーズは、発表当初の価格設定が高かった点(17万8500円から)で損をしたと思うが、IQ500シリーズはその経験が生かされているのだろう。
これまで液晶ディスプレイ一体型PCでは、コストパフォーマンスの点でアップルのiMacが頭一つ抜けていた印象が強い。ところが、このIQ501jpの登場で、ようやく比べられる相手が出てきたように思う。価格がほぼ同等であるiMacの下位モデル(MB323J/A)とは、CPUのクロックと外付けGPU(RADEON HD 2400 XT)でiMacの勝ち、液晶ディスプレイの大きさ、標準メモリ搭載量とHDD容量で本機が上回る、という関係にある。市場を活性化させ、ユーザーの利益につながるライバルの登場を歓迎したい。
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