世界シェアNo.1ベンダーが放つ新型ボードPC「HP TouchSmart PC」を試す iMacのライバル登場か(2/2 ページ)

» 2008年07月04日 12時05分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]
前のページへ 1|2       

OSを64ビット化しタッチソフトウェアも一新

評価機(IQ503jp)のシステムプロパティ画面

 IQ500シリーズの大きな特徴の1つは、OSにWindows Vista Home Premium(SP1)の64ビット版を採用したこと。コンシューマー向けの標準プリインストールOSとして、大手PCベンダーが64ビット版のWindowsを採用するのは、おそらくこれが初めてだろう。おかげで、内蔵する4Gバイトのメモリをフルに利用することができる。64ビット版Windowsの場合、デバイスドライバのサポートが問題になりがちだが、拡張スロットを持たない本機であれば、それほど深刻な障害にはならないという判断なのだろう。いずれにしても、可能ならば64ビットへ移行したほうがよいことは間違いない。

 TouchSmart PCシリーズを特徴付けるTouchSmartソフトウェアも、このIQ500シリーズで一新された。IQ700シリーズに搭載されていたTouchSmart Centerは、ミドルウェアとしてWindows Media Centerを利用しており、俊敏な動作とは言えない部分があった。IQ500シリーズのTouchSmartソフトウェアは、Media Centerの利用をやめたほか、64ビット対応(すべてのモジュールが64ビット化されているわけではないが)しており、操作性が大幅に向上している。

 TouchSmartソフトウェアの主な機能は、YouTubeへのアップロード機能を持つ「ビデオ」、付せんタイプのメモに加え音声や動画のメッセージを残すことができる「メモ」、デジタルカメラのデータを取り込み簡単な編集と印刷が可能な「ピクチャ」、ジャケットのイメージを指によるタッチでめくる感覚が楽しい「音楽」、約束の時間に本体上部のLEDが点灯して教えてくれる「カレンダー」、RSSフィードを表示する「RSSリーダー」、これらのアプリケーションにルック&フィールを合わせたオリジナルWebブラウザなどだ。「音楽」はiTunesライブラリの再生にも対応する(ユーザーがiTunesをダウンロードしてインストールする必要があるが)。ユーザーが好みのアプリケーションを登録することもできる。ちなみに、TouchSmartソフトウェアの操作感は、こちらの動画記事を参照してほしい。

TouchSmartのメイン画面(写真=左)。「ビデオ」ではWebカメラで撮影した動画を簡単にYouTubeへアップロードできるようになった(写真=中央)。文字入力はソフトウェアキーボードでも行なえる。「ピクチャ」では指1本でトリミングが可能だ(写真=右)

標準状態では「iTunes ライブラリを使用します」がグレーアウトのままだが(写真=左)、ユーザーがiTunesを導入することで選択できるようになる(写真=中央)。タッチ操作に最適化したWebブラウザの画面(写真=右)

 それぞれのアプリケーションは、タッチによる操作を意識したもので、使い勝手のよさ、分かりやすさに重点が置かれているようだ。一方で、「ビデオ」が対応可能なビデオ形式が限られていたり(MPEG-1、dvr-ms、wmv、asf、avi)、「ピクチャ」がカメラRAWには対応しないなど、パワーユーザー向きの機能は備えていない。今回のTouchSmartソフトウェアは、前作のように家族のコミュニケーションツールであることをことさら強調しないものの、ファミリーで簡単に使えるというコンセプトは継承している、ということなのだろう。

iMacのライバルとなり得る優れたコストパフォーマンス

 このIQ500シリーズで残念なことは、地上デジタル放送チューナーの開発が、製品の発売に間に合わなかったことだ。地デジチューナーは現在開発中で、提供は秋(9〜10月ごろか)になるという。要するに北京オリンピックには間に合わないわけで、日本の家電系メーカーであれば考えられないことかもしれない。先代のIQ700シリーズも発表時点では地デジチューナーが間に合わなかったことからすると、またもやの感がある。タッチセンサと良好な液晶の見え具合を両立したディスプレイだけに、地デジチューナーの提供が遅れることが惜しまれる。

 この点を除けば、今回のIQ500シリーズはなかなかよくまとまっている。特に直販下位モデルであるIQ501jpの13万9860円という価格は魅力的だ。IQ700シリーズは、発表当初の価格設定が高かった点(17万8500円から)で損をしたと思うが、IQ500シリーズはその経験が生かされているのだろう。

 これまで液晶ディスプレイ一体型PCでは、コストパフォーマンスの点でアップルのiMacが頭一つ抜けていた印象が強い。ところが、このIQ501jpの登場で、ようやく比べられる相手が出てきたように思う。価格がほぼ同等であるiMacの下位モデル(MB323J/A)とは、CPUのクロックと外付けGPU(RADEON HD 2400 XT)でiMacの勝ち、液晶ディスプレイの大きさ、標準メモリ搭載量とHDD容量で本機が上回る、という関係にある。市場を活性化させ、ユーザーの利益につながるライバルの登場を歓迎したい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月18日 更新
  1. ついに8K対応した「Insta360 X4」の画質をX3と1インチ360度版で比較 今買うべき全天球カメラだと確信した (2024年04月16日)
  2. バッファロー製Wi-Fiルーターに脆弱性 対象機種は今すぐファームウェア更新を (2024年04月17日)
  3. 「JBL GO 4」でBluetoothスピーカーデビュー! 累計出荷台数5700万台を突破した人気製品の最新モデルを試す (2024年04月17日)
  4. AI対応でCore Ultraよりも高いパフォーマンスをアピール! 企業PC向け「Ryzen PRO 8000シリーズ」登場 (2024年04月16日)
  5. SwitchBotのミニプラグに不具合 「断続的にオン/オフを繰り返す、異音」などで該当製品の交換を呼びかけ (2024年04月17日)
  6. Synology「BeeStation」はNASより便利な一面も 家族の“秘密”も守れるストレージ、共有リンクや写真管理もある (2024年04月16日)
  7. 「ASUS ZenScreen MB16QHG」は従来モデルの弱点を解消した高評価の16型モバイルディスプレイだ (2024年04月16日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. 無線LANルーター「Aterm」シリーズの一部に複数の脆弱性 設定変更や買い替えをアナウンス (2024年04月11日)
  10. NVIDIA、Ampereアーキテクチャを採用したシングルスロット設計のデスクトップ向けGPU「NVIDIA RTX A400/A1000」を発表 (2024年04月17日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー