これまでは製品を中心に見てきたが、HPはコンシューマー市場でどのように展開していくつもりなのだろうか。プレスイベントでは2010年までにアジア太平洋地域の1000都市に7500店舗の新規販売提携店を実現する「HP Alternate Experience Center」構想を打ち出しているが、日本や韓国などはその対象に入っていない。そのあたりの詳細を、アジア太平洋地域のノートPC部門のトップであるパーソナル・システム・グループ ノートブック ビジネス ユニット 上級副社長のチン・ホン・チャン(Chin Hon Cheng)氏に聞いた。
――2007年になって、日本HPは直販だけでなくPCも量販店店頭で販売されるようになりました。
チャン氏 HPは直販と小売りの両方に取り組んでおり、これは日本だけでなく世界各国と同じ戦略です。直販においても、間接販売においても、日本ではHPのシェアはトップ3に入っていないので難しい課題があると思っています。現在、わたしは新しいアイデアを駆使していきたいと考えており、日本のチームにも代替案を含めて調査をさせています。
日本でのビジネスのボリュームを考えると、コンシューマーよりもビジネス向けのノートPCや製品の成長がより高いので、引き続き力を入れていくつもりです。ただ、HPの製品は高い品質を求める日本の市場に非常に合っていると思っており、特に来年からはアグレッシブにコンシューマー市場へ取り組んでいきます。
まずは、選択したリテールショップでの展開に力を入れていきます。そして店頭でHP製品が目に触れるようにしていこうと思っています。
――HPはPC世界シェアNo.1ですが、日本では後じんを拝しています。
チャン氏 ノートPCやクライアントPCでは世界シェアNo.1ですが、日本ではその分野でトップ3に入っていないことを認識しています。ただ、最近の四半期の成績を見ていくと、少しずつではありますがシェアを伸ばしています。日本は成熟した市場であり、コンシューマー市場としても巨大です。残念ながら、日本でのHPのコンシューマー市場に対する取り組みが十分でないと思っています。一方で、ビジネス向けPCは徐々に成長しており、四半期ごとに実績が伸びています。この秋にも新モデルの「HP EliteBook」シリーズを順次投入する予定です。
2008年6月には「HP 2133 Mini-Note PC」を発表し、日本でも好評を博しています。ミニノートPCの成功があったので、引き続き日本のコンシューマーPC市場で拡大を続けていきたいと考えています。
――HP 2133は、ミニPC市場で先行して投入されましたが製品供給がショート気味です。
チャン氏 日本でHP 2133を出荷すると半日でなくなってしまいます。これは売り上げ的にはいいことですが、逆にいえば売り損じているわけで、それは残念に思っています。このような状態を繰り返さないために、この四半期から計画予想を増やすとともに日本への割り当てを増やしていく予定です。
コンパックコンピュータとの合併にともない、日本では一時コンシューマー市場から撤退したHPだが、同市場への再参入以降、直販そして店頭販売と慎重に手を広げつつある。デスクトップPCとノートPC両方をコンシューマー市場に投入してから1年半が経過し、国内のシェアも上昇傾向にあるのは間違いないが、その一方でサプライチェーンや直販と店頭のどちらを優先するかなどで課題も明らかになりつつある。上のインタビューにもあるように、日本市場では直販でも店頭でも強力なライバルがいることは認識しており、さまざまな案を検討中という。今回取り上げたモデルの日本での展開を含め、今後の動向に注目していきたい。
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