HPは“日本でも”本気です――ノートPC新ブランド「HP EliteBook」発表会ただ堅いだけではない

» 2008年10月03日 08時08分 公開
[田中宏昌,ITmedia]

今後はサブセグメント戦略が成長のカギを握る

日本HP 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏

 10月2日、日本HPが法人向けビジネスPCの新シリーズ「HP EliteBook」の発表会を開催した。出荷開始が10月下旬からとなる新ブランド「EliteBook」は、2008年6月にベルリンで開催された発表会で公開されていたが、日本では初登場となる。

 冒頭、同社取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏が法人向けPC事業の戦略を述べた。「ワールドワイドでのHPのPCビジネスは、売り上げベースで15%成長、台数ベースで20%成長を達成し、年間で4兆円を超える規模になってきた。市況は厳しいが、事業は順調に推移している」と好調な業績に触れた。一方の日本では、「この2年間で市場シェアが2ケタに近いところまできた。直近の6月では対前年比で台数ベースだと34%も成長し、今回初めてPCとPCサーバを足した数字で第4位とワンランクアップした。まだまだ頂上の道は険しいが、トップグループを目指していきたい」と意気込みを語った。

 その方策として、「まずは、お客さまに選んでもらえるメーカーになるのが基本だ。最近では、シンクライアントやブレードPCなどリモートクライアントソリューション(RCS)に力を入れているが、結果的にはこれまで届かなかった企業から声がかかっており、成果が出ている。また、コンシューマーも成長のドライバーとして期待している」とし、「従来はコンシューマーと法人向けで大きく製品を分けていたが、一口に法人といっても大企業とSOHO向けでは違うし、使われる環境や用途で求められる機能や性能が異なる。そこでブランドを分けて製品を投入するのがワールドワイドでの戦略となっている」と言及し、「ビジネスPCでは、今回発表されたEliteBookがノートPCの最上位ブランドとなり、スタンダードモデルがHP Compaqシリーズ、エントリー向けがHPシリーズ(HP 2133 mini-Note PCなど)となる」とした。

 「日本でもどれだけノートPCの販売を増やしていけるかが成功のカギを握る。今後はビジネスシーンだけでなく、コンシューマー分野でもサブセグメント/サブブランドの製品(海外で発売されているVoodoo PCPresarioシリーズなど)を展開していく予定であり、“日本HPは本気だぞ”という気持ちでやっていくのを理解していただければ幸いだ」と決意を語った。

2008年第2四半期における日本市場のPCシェアトップ10(写真=左/IDC調べ)。日本HPは第4位に浮上した。日本HPのPC事業の展開図(写真=右)。今回発表するEliteBookは、サブセグメント戦略の一環だ

HP DuraCaseで堅牢性を大幅にアップ

パーソナルシステムズ事業統括 モバイル&コンシューマビジネス本部 プロダクトマネージャ 山上正彦氏

 続いて、パーソナルシステムズ事業統括 モバイル&コンシューマビジネス本部 プロダクトマネージャ 山上正彦氏が新製品の概要について解説した。「ビジネスノートPCに求められる要素として、安全性、信頼性、使いやすさなどの簡易性、付加価値の高いサービスとサポート、低い初期導入コストが挙げられる」とし、「その中でも安全性、信頼性、簡易性を重視したユーザーに最適なのが新ブランドのEliteBookだ」と述べた。「EliteBookはビジネス向けPCの最上位に位置するブランドであり、従来製品との差別化も重要なポイントだ」として新製品のポイントを3つ指摘した。

 安全性という点では、Windows上で完全にデータを消去する「ファイルサニタイザ for HP ProtectTools」を、使いやすさの観点ではPCの電源を入れずにドキュメントファイルを参照できる「HP QuickLook 2」を提供する。信頼性という観点では、これまでのDuraFinishやDuraKeysといった特殊コーティングに加え、「HP DuraCase」の採用が特徴だ。

ビジネス向けノートPCに求められる要素のうち、安全性や信頼性、簡易性に焦点をあてたのがEliteBookだ(写真=左)。EliteBookが搭載する主な新機能(写真=中央)。その中でも目玉となるのが「HP DuraCase」で、テストでは液晶ディスプレイ天面にSUVタイヤを乗せて1800ポンド(約816キロ)の加圧をかけても問題なく動作したという(写真=右)

 このHP DuraCaseとは、航空機の素材としても使われているアルマイト加工したアルミニウムと、ハニカム構造のマグネシウム合金の2層構造を液晶ディスプレイ天面に採用することにより、従来機比で180%の強度アップとともに、ねじれにも強くなったという。パームレストにも液晶ディスプレイ天面と同じ構造を取り入れることで、レキサンを使った従来機に比べて6倍の強度を獲得した。長期間使っていると壊れやすくなるラッチや液晶ディスプレイのヒンジにも手を加え、素材と形状を見直して堅牢性を高めているのも見逃せない。

山上氏は液晶ディスプレイ天面部分をステンレス製のたわしでこすり、傷がつかないことをアピール(写真=左)。動作中のEliteBookを落下させたり(写真=中央)、重しをのせたり(写真=右)しても問題なく動作することを強調した

テストはさらにエスカレートし、約215キロの荷重をかけたが(写真=左と中央)、ムービーは途切れることなく動作し続けた(写真=右)

 新モデルとして投入されたのは、モバイルワークステーションの「HP EliteBook 8730w Mobile Workstation」(21万4800円〜)と「HP EliteBook 8530w Mobile Workstation」(16万5900円〜)、デスクトップPC代替の「HP EliteBook 6930p Notebook PC」(16万8000円〜)、タブレットPCの「HP EliteBook 2730p Notebook PC」(23万1000円〜)、モバイルの「HP EliteBook 2530p Notebook PC」(21万8400円〜)で、このほかに「HP Compaq 6730b/CT Notebook PC」(9万4500円〜)と「HP Compaq 6730s/CT Notebook PC」(6万4890円〜)がある(価格はいずれも直販のHP Directplusでの場合)。型番の末尾に付く「w」がWorkstation、「p」がProfessional、「b」がBusiness、「s」がStandardという命名ルールは従来と同様だ。

 中でも、モバイルワークステーションの最上位モデル「HP EliteBook 8730w Mobile Workstation」の液晶ディスプレイに、HPとドリームワークスが共同で開発したテクノロジーである「DreamColorディスプレイ」を投入したのもトピックだ。これはバックライトに3色LED(RGB)を搭載することで、NTSC比で131%の色再現性(従来機は約72%)と800:1のハイコントラストを実現している。なお、製品の発売は10月下旬から順次行われる予定だ(販売代理店では10月2日から)。

新たに発表されたEliteBookシリーズ5モデル(写真=左)。RGB LED方式のバックライトを搭載したHP EliteBook 8730wでは、NTSC比で約131%の色域を実現している(写真=中央)。RGB各色10ビットで駆動するSuper IPS方式の液晶パネルを採用した「HP DreamColor LP2480zx プロフェッショナル 液晶モニタ」と、HP EliteBook 8730wとの比較(写真=右)。従来のノートPC液晶に比べて色鮮やかな表示を実現しているのが分かる

大容量バッテリーを装着することで24時間駆動を実現したHP EliteBook 6930p Notebook PC(写真=左)。ただし、日本ではオプションバッテリーが発売されないのが残念だ。タブレットPCのHP EliteBook 2730p Notebook PC(写真=中央)。ドッキングステーションやバッテリーは従来モデルを流用できるとのこと。PCを起動せずにワードやエクセルのドキュメントファイルを参照できるHP QuickLook 2の画面(写真=右)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー