価格破壊の第2波になる? 新世代モバイルPC「Timeline」を速攻で試すNetbookの次へ

» 2009年06月03日 19時16分 公開
[ITmedia]

安価なNetbookと高価な高性能モバイルPCの溝を埋める1台

 現在モバイルノートPCは、Web閲覧をメイン用途に据えた低価格なNetbookと、MacBook AirThinkPad X300/X301Adamoに代表される、高性能でデザイン性に優れた高価なモデルに2極化する傾向にある。COMPUTEX TAIPEI 2007初代Eee PCが話題を呼び、続く2008年にAtomを採用したNetbookが台頭したことで、ノートPC市場の情勢は瞬く間に一変してしまった。その要因の1つが圧倒的な価格競争力にあることは間違いない。

 ただし、Netbookは確かに安価ではあるものの、システムに高い負荷を要求する幅広いユーザーニーズを満たすには(Atomは)非力すぎる。インターネットが利用できれば十分と考える多くのユーザーがいる一方で、より高い性能を持つモバイルノートPCを求めるユーザーももちろん存在し、後者にとってNetbookの性能は満足できるものではなかった。問題は、2極化するモバイルノートPCカテゴリにおいて極端に差がつきすぎてしまった価格だ。

13.3型ワイド液晶を搭載するAspire AS3810T

 エイサーの「Aspire Timeline」は、「市場に革命を起こす」(同社)べく、モバイルノートPCにおける価格帯の溝を埋めるために投入された製品である。ここで紹介する「AS3810T」は、基本システムに超低電圧版のCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)とIntel GS45 Expressの組み合わせを採用し、1366×768ドット表示に対応する13.3型ワイドの液晶ディスプレイを備え、最薄部23.4ミリの薄型ボディと標準で約8時間の長時間バッテリー駆動性能を実現したモデル――これだけ聞くと“プレミアム”なモバイルノートPCを連想させるが、実売価格は8万9800円まで抑えられている。ほぼ同じ基本システムを採用するデルの「Adamo(DESIRE)」が27万6000円であることを考えると、これは驚異的な価格設定だ(DESIREは128GバイトのSSDを搭載しているが)。

外装をガンメタリックで統一したシンプルなデザイン。天板の素材はアルミニウム合金だ(写真=左)。ブラウザでITmediaのトップページを表示し、VAIO type Pと比較してみた。1366×768ドットのデスクトップ領域は一般的なNetbookに比べて十分に広く、パネルサイズが13.3型ワイドのため、高解像度なtype P(1600×768ドット)のようにフォントが小さすぎるということもない(写真=中央)。ほぼ正方形のキートップとフローティング構造を採用した「Acer FineTip」キーボードを搭載する。キーピッチは約19ミリ。PgUp/PgDnキーがEnterキーの右側に回り込んでいる配列だ(写真=右)

本体前面/左側面/右側面。3基あるUSB 2.0を左右側面に振り分け、着脱頻度の高い音声入出力端子やメモリカードスロットは手前側に並べる一方、ビデオ出力や有線LANは後方に配置している

MacBook Airと本体の厚さを比較してみた。AS3810Tのボディサイズは322(幅)×228(奥行き)×23.4〜28.9(高さ)ミリで、最厚部でも19.4ミリのMacBook Airと比べるとさすがに厚い印象を受けた。もっとも、エッジに向かってアールを描くMacBook Airは、数字以上に薄く見えるのも影響しているかもしれない

 ここでは簡単なベンチマークテストを実施し、比較対象として前述のAdamo(DESIRE)とMacBook Air(MB940J/A)、VAIO type P(VGN-P70H)を取り上げた。また、PCMark05の結果には、AMDのYukonプラットフォームを採用した6万円前後の「HP Pavilion Notebook PC dv2」も加えている。なお、MacBook AirにはWindows Vista Home Premium(SP1)を導入している。

今回比較したノートPCの主要スペック
モデル名 Aspire Timeline(AS3810T) Adamo(DESIRE) MacBook Air(MB940J/A) VAIO type P(VGN-P70H/R)
CPU Core 2 Duo SU9400(1.4GHz) Core 2 Duo SU9400(1.4GHz) Core 2 Duo SL9400(1.86GHz) Atom Z520(1.33GHz)
メモリ 2Gバイト(DDR3) 4Gバイト(DDR3) 2Gバイト(DDR3) 2Gバイト(DDR2)
チップセット Intel GS45 Express Intel GS45 Express GeForce 9400M ISCH US15W
液晶ディスプレイ 13.3型ワイド光沢 13.4型ワイド光沢 13.3型ワイド光沢 8型ワイド光沢
画面解像度 1366×768ドット 1366×768ドット 1280×800ドット 1600×768ドット
ストレージ 250GバイトHDD 128GバイトSSD 128GバイトSSD 60GバイトHDD
有線LAN ギガビット対応 ギガビット対応 −(専用アダプタ経由)
無線LAN IEEE802.11b/g/n(nはドラフト準拠) IEEE802.11a/b/g/n(nはドラフト準拠) IEEE802.11a/b/g/n(nはドラフト準拠) IEEE802.11b/g/n(nはドラフト準拠)
Bluetooth Bluetooth 2.1+EDR Bluetooth 2.1+EDR Bluetooth 2.1+EDR Bluetooth 2.1+EDR
USB USB 2.0×3 USB 2.0×3(うち1基はeSATA兼用) USB 2.0×1 USB 2.0×2
外部出力 HDMI、アナログRGB DisplayPort×1(DVI変換アダプタ付き) Mini DisplayPort×1 −(専用アダプタ経由)
Webカメラ
バッテリー駆動時間 約8時間 約5時間 約4.5時間 約4.5時間
ボディサイズ 322(幅)×228(奥行き)×23.4〜28.9(高さ)ミリ 331(幅)×242(奥行き)×16.4(厚さ)ミリ 325(幅)×227(奥行き)×4〜19.4(厚さ)ミリ 245(幅)×120(奥行き)×19.8(高さ)ミリ
重量 約1.6キロ 約1.81キロ 約1.36キロ 約0.634キロ
OS Windows Vista Home Premium(SP1) 64ビット版Windows Vista Home Premium(SP1) Mac OS X 10.5 Windows Vista Home Basic(SP1)
価格 8万9800円前後 27万6000円 29万8800円 10万円前後

 それではテスト結果を見ていこう。まずWindows エクスペリエンス インデックスは、CPUが4.6とモバイルPCとしては十分に高いスコアを記録した。Atom Z520を採用するVAIO type PはWindows Vistaの動作をやや重く感じたが、AS3810Tなら快適に利用できそうだ。また、メモリスコアも4.8とまずまずで、2.5インチドライブを採用するHDDは最も高い5.4をマークした。

左から、Aspire Timeline(AS3810T)、Adamo(DESIRE)/MacBook Air(MB940J/A)/VAIO type P(VGN-P70H/R)のWindows エクスペリエンス インデックス

 PCMark05の結果を見ると、SSDを採用するAdamoとMacBook Airに比べてストレージ性能の差が目立つものの、それ以外はほとんど遜色なく、CPUは3624と最も高いスコアを記録した。また、VAIO type Pと比較するとすべてにおいて圧倒的に上回る値をマークしており、比較機種との価格差を考えれば非常に満足できる結果と言える。Graphicsスコアは高いとは言えないものの、グラフィックス機能がチップセット内蔵のGMA 4500MHDなので仕方のないところだろう。もっとも、同社は今後外付けGPUのオプションとしてATI Mobiloty Radeon HD 4330などを2009年7月以降に提供する予定としており、グラフィックス性能を求めるユーザーはこちらを検討するのも手だ。

PCMark05の結果

 以上、駆け足で簡単なベンチマークテストを実施してみたが、実売8万9800円という価格でも、モバイルノートPCとして十分な性能を備えていることが分かった。これまでNetbookのパフォーマンスに不満を持っていたユーザーにとって、Aspire Timelineが魅力的な選択肢になることは間違いない。なお、そのほかのベンチマークテストや実際の使用感、外観などの詳細記事は追って掲載する予定だ。(→詳細レビュー:Netbookを完全に超えた? 「Aspire Timeline」を徹底チェック

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