Windows 7 Starterを導入したNetbookは使えるのか?元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年08月17日 11時11分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

開発者向けにリリースが開始されたWindows 7

MSDNやTechNetでWindows 7の提供が始まった

 米国時間の8月6日、Microsoftは公約通り、MSDNとTechNetのサブスクライバ向けにWindows 7の提供を開始した。今回は、Enterprise、Ultimate、Professional、Home Premium、Home Basic、StarterのSKUごとに、32ビット版と64ビット版のISOイメージを提供する。なお、Home BasicとStarterは32ビット版のみで、Windows Vistaで提供されていたHome Basicの64ビット版は今のところ提供されていない。新興国向けという位置付けになったことで、Home Basicの64ビット版はなくなったのだろう。

 同時に日本語を含むランゲージパックの提供も行われており、これに対応可能なEnterpriseとUltimateに適用することで、ユーザーインタフェースを日本語化することも可能だ。ただ、この組み合せでもヘルプファイルは日本語化されない。日本語版を含む多国語版の提供が遅れるのは、ヘルプファイルの翻訳スケジュールのせいではないかと思ってしまう(※オフラインヘルプは日本語化されています。編集部追記:8月26日)

 このRTM(Release To Manufacturing)版の提供開始に先立ち、米国ではWindows Anytime Upgarade(WAU)とファミリーパックの価格が発表されている。WAUは、利用しているWindowsのSKUを上位のSKUへ昇格させるもので、実際には上位SKU向けのプロダクトキー(アップグレードキー)が発行されるだけだ。OSイメージの再インストールなどが行われるわけではないので、データをバックアップしたり、アプリケーションを再インストールする必要もない。オンライン購入なら、アップグレードキーは自動入力されるから手間いらずだが、逆にアップグレードキーを間違いなく保存しておく必要がありそうだ。

 その価格は、Windows 7 StarterからWindows 7 Home Premiumが米国価格で79.99ドル、Windows 7 Home PremiumからWindows 7 Professionalが同89.99ドル、Windows 7 Home PremiumからWindows 7 Ultimateが同139.99ドルの3パターン。Windows 7 ProfessionalからWindows 7 Ultimateへのアップグレードパスが提供されないのは、両SKUのパッケージ版の価格差が1000円しかないことを考えれば納得だが、それにしてはWAUの価格差(Home Premiumからの費用差)は50ドルと大きい。Vistaのときに比べれば、UltimateへのWAU価格は12%引き下げられたというのだが、多すぎるSKUが価格や機能差の設定の整合性を難しくしている感は否めない。

米国で発表されたWindows 7用のWindows Anytime Upgradeのパッケージ(写真=左)と、Windows Anytime Upgradeの画面(画面=右)

気になるファミリーパックの動向

こちらはWindows 7 ファミリーパックのパッケージ

 もう1つのファミリーパックは、家庭内の利用に限り、複数のPCを対象にしたライセンスを安価に販売するものだ。アップルはかねてよりこのファミリーパックを提供しており、現行のLeopardは199ドル(国内価格2万2800円)で最大5人(5台のMac)にインストール可能だ。シングルライセンスが119.99ドル(同1万4800円)であることを考えると、かなり割安になっていることが分かる。29ドルという価格が話題となっている次期Mac OS X(Snow Leopard)については、ファミリーパックをさらに割安な49ドルで提供することが明らかにされている(国内価格は未定)。

 Microsoftのファミリーパックは、「家庭内の利用について、3台までのPCにHome Premiumをインストールできる」というものだ。ライセンスとしてはアップグレードで、価格は149.99ドルと発表された。Home Premiumのシングルライセンスは119.99ドルだから、209ドルあまりお得だが、アップルに比べ価格が高く、台数は少ないということになる。「ファミリー」パックなので、Professionalの提供がないのは当然のことか。

 気になるのは、このファミリーパックの提供期間と提供地域が「untill supplies last」「here in the US and other select markets」とされていることだ。つまり、Windows 7のファミリーパックは、10月22日の発売と同時に提供され、在庫限りの限定版的な扱いとなっている。定番商品として提供されているアップルのファミリーパックとは扱いが異なる。

 また、米国向けに提供されるのは明らかだが、other select marketsにどんな国が含まれるのか、日本も含まれているのか現時点では明らかにされていない。ちなみにWAUに関しては、日本も含めた13カ国でオンライン購入によるアップグレードが可能であることが明記されている。国内価格は未発表だが、日本でもWAUが利用可能であることは間違いない。

手持ちのPCにRTM版Windows 7をインストール

 とりあえずCore i7ベースのデスクトップPCに64ビット版のUltimateを、Core 2 Duo SL9400ベースのノートPC(ThinkPad X200s)に32ビット版のUltimateを、Netbook(HP Mini 1000)にStarterをインストールしてみた。基本的にどのマシンでも問題なく動作しており、顕著な問題は見あたらない。逆に、ちょっと触ったくらいでは、RC版から格段によくなったと感じる部分もないが、これはRC版の時点でかなり完成度が高かったことも理由としてあるだろう。最大の違いは、RC版まで付属していた金魚の壁紙(インストールデフォルト)がなくなり、Windowsのロゴの壁紙に変わったことかもしれない。

 デバイスサポートもまずまずで、ThinkPad X200sに含まれているインテルの管理機能(AMT 4.0)に対応するデバイスドライバだけは組み込まれないものの、それを除くとデバイスドライバも一通りそろっている。デスクトップPCで使っているATI(AMD)のRadeon HD 4850ベースのグラフィックスカードのドライバもOSに含まれているが、AMDが提供しているドライバを用いたほうが、Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは格段によい。

 今回、ユーザーインタフェースの日本語化ができない(ランゲージパックをインストールできない)にもかかわらず、HP Mini 1000にStarterをインストールしてみたのは、このクラスのPCでもWindows 7が使い物になるのかどうかが気になったからだ。現在、このクラスのNetbook(Atom N270/N280ベース、1024×576〜600ドット解像度の液晶ディスプレイ)の販売価格は3万円〜4万円というところ。Windows 7がリリースされたら、価格は据え置きでOSがWindows XP Home EditionからWindows 7 Starterへ切り替わるのではないかと思っているが、そこに追加で79.99ドル払ってHome Premiumへアップグレードするのはかなり負担が大きい。Starterで我慢できるのなら、それに越したことはない。

NetbookでWindows 7 Starterは我慢できるのか?

Windows 7 Starterをインストール直後のデスクトップ。Windows Aeroを利用することはできない

 右の画面は、Windows Starterをインストールした直後のHP Mini 1000のデスクトップだ。ゴミ箱の表記がRecycle Binになっていることでも明らかなように、GUIは英語だがインストール時に日本語を選択してあるので、日本語の表示や入力は問題ない。タスクバーの右下、通知領域の左を見ればIMEが常駐していることが分かる。Aeroをサポートした上位SKUと異なり、壁紙中央のWindowsロゴに色がついていない。

 この時点でDevice Managerに「ドライバがインストールされていない」、「不明なデバイス」は存在しない(画面1)。HP Mini 1000の内蔵BluetoothやWebカメラなど、すべてがシステムに認識されている。基本的にNetbookは、プラットフォームとしては1種類しかない(Atom Z系は厳密にはNetbookではない)ので、ほかのNetbookでも同様な結果が得られるのではないかと思う。

 画面2はシステムのプロパティを表示させたところで、「Windows 7 Starter」がインストールされていることが確認できる。ここで2.1となっているWindowsエクスペリエンスインデックスを表示したのが画面3で、この2.1が利用していないAeroのパフォーマンスであることが分かる。プロセッサのスコアも2.2だから、あまり褒められたものではないが、画面の表示領域が狭いこともあり、表示の遅さはそれほど気にならない。少なくとも、画面やウィンドウを上から描いていく様子が分かるほど遅い――、といったことはない。

 試しにとYouTubeに接続して、動画を表示させてみたが、

  1. OSのインストール直後
  2. アンチウイルスソフト非常駐
  3. Internet Explorer 8はメニューを省略したキオスクモード

という条件で、SD画質のムービーはコマ落ちなく表示できた。HD画質のムービーはちょっとコマ落ちしたが、見るに堪えないほどひどくはない。軽いアンチウイルスソフトウェアを選べば、YouTubeやニコニコ動画を利用するくらいのことは十分可能だろう。

画面1:インストール直後のデバイスマネージャ画面。すべてのデバイスは認識され、必要なデバイスドライバが組み込まれているが、すでにWindows Updateから更新されたドライバが提供済みだ
画面2:Windows 7のシステムのプロパティ。Starterには32ビット版しか存在しない
画面3:Windowsエクスペリエンスインデックスの画面。素晴らしいスコアではないが、画面の狭さと相まって、結構サクサク動く

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