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» 2009年10月08日 14時45分 公開

完全分解×開発秘話:「VAIO X」の極限まで絞ったスリムボディを丸裸にする (2/4)

[前橋豪, 撮影:矢野渉,ITmedia]

素材を厳選したボディデザイン

 薄さと軽さ、そして剛性も獲得できるように、ボディの材質や設計には数々の工夫が見られる。天板の素材は、VAIOのモバイルノートでおなじみのマルチレイヤーカーボンを改造し、4層で構成されるカーボンレイヤーの中央に特殊なシートを1枚サンドイッチ状に挟んだハイブリッドカーボンを新開発した。これにより、5層のマルチレイヤーカーボンに比べて、わずかに厚くなる代わりに、強度を保ったまま、軽くできたという。

 パームレストとキーボードを覆うボトムカバーは一体成型で、VAIO Zと同じアルミの絞りパーツによって、質感、剛性、軽量化を追求した。さらに、液晶とパームレストの縁を凹形状に削り落とした「Rigid Arc Design」(リジッドアークデザイン)を採用し、見た目の薄さと液晶ディスプレイの開けやすさ、強度の向上を図っている。底面の素材は強度と薄型軽量に配慮したカーボン混入樹脂(バッテリーの外装は樹脂製)となっており、薄さを際だたせるために端を斜めにカットしつつ、濃いブラウンのカラーでコントラストを付けた。

 このように、外装の設計にはこれまでのVAIOノートで培ったノウハウの蓄積が生かされており、林氏は「カーボンを効果的に使った天板や、シャープなアルミの削りパーツ、Rigid Arc Designといった部分は、VAIOならではの仕上がり。こうした難しい加工が行える数少ない業者と協力し、過去の製品開発で世代を重ねながら製造技術を洗練させてきたことで、VAIO Xのボディを実現できており、一朝一夕にはいかないところ」とその完成度に胸を張る。

 ボディの高級感についても配慮が見られ、特別なVAIOノートであることを主張できるように「VAIO」ロゴをゴールドにしたほか、ボディカラーもスタンダードなブラックだけでなく、ソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルでは、ゴージャスなシャンパンゴールドや、カーボン繊維の線がストライプ柄のように透けて見えるプレミアムカーボン天板(ボディはブラック)も用意している。

天板の「VAIO」ロゴはゴールド仕様(写真=左)。液晶とパームレストの縁を凹形状に削り落としたRigid Arc Designを採用(写真=中央)。液晶部は約3.85ミリ、ボトム部は約9.6ミリと非常に薄い(写真=右)

 薄型で軽量だが、ボディの剛性はかなり高い。開発段階において、150キロfの平面加圧振動試験をクリアしたほか、パームレストの端を持った状態でボディを揺らす片持ち振動試験や、液晶を開いた状態で底面の角から落下させる角衝撃試験なども実施し、堅牢性の検証を行って製品化している。実際、ボディはカチッと作られており、手に持った際にきゃしゃな印象は皆無だ。さらに、パームレストの端を手で持って軽く揺らしても、ボディが大きくたわんだりはしない。

左から、平面加圧振動試験、片持ち振動試験、角衝撃試験の様子

薄型軽量と長時間のバッテリー駆動を両立

注意

製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。



VAIO Xを手際よく分解していく林氏

 いよいよVAIO Xを分解してもらい、内部構造を見ていく。まずは底面のバッテリーパックを外し、底面のネジもすべて取る。VAIO Pではキーボードやパームレストを備えたトップカバーと、底面のボトムカバーの間にパーツ類を固定して剛性を高めるマグネシウム合金のフレームが入っていたが、薄型軽量化を追求したVAIO Xには内部のフレームがない。そのため、セット全体で剛性を出す必要があることから、底面のネジは多めだ。ボディの軽さを優先して、ネジを隠すような処理はしていない。

 ネジをすべて外した後は、ツメではめられたボトムカバーが分離できる。カバーを固定するツメは、バッテリー横の位置が一番強くはまっているといい、林氏は精密ドライバーで押し込みながら、カバーを外していた。ボトムカバーを外すと、基板部分が露出する。

 各パーツのレイアウトについては、パームレストの下に薄型のリチウムポリマーバッテリー、キーボードの下にシステムボードとSSDを配置。パームレストの下は十分なスペースが確保できることから、スタミナを重視してここにバッテリーパックを配置し、主要な基板類はキーボードの下にすべて収める努力をした。

バッテリーと底面のネジを一通り外した状態(写真=左)。ボトムカバーを外すと、システムボードやSSDが露出する(写真=中央)。取り外したボトムカバーの裏面(写真=右)

内部構造が分かりやすいように制作した、カバー部が透明なモックアップ。基板類はキーボードの下、バッテリーはパームレストの下にきれいに区分けされている

 林氏は2003年に投入した薄型軽量VAIOノートの代表作ともいえる「バイオノート505エクストリーム」を比較対象に挙げ、「バイオノート505エクストリームでは、キーボードを手前に置き、基板はその奥に、そしてバッテリーはヒンジ部に収めることで、バッテリー駆動時間をある程度確保しつつ、薄型軽量を追求した。VAIO Xは基板類をキーボードの下にすべて収めるチャレンジをしたことで、より標準的なノートPCに近いレイアウトでありながら、長時間のバッテリー駆動が実現できている」と、その進化をアピールした。

左がVAIO X、右がバイオノート505エクストリーム「PCG-X505/P」の側面。PCG-X505/Pは本体サイズが259(幅)×208(奥行き)×9.7〜21(高さ)ミリ、重量が約825グラム(カーボンファイバー積載板を採用した直販モデルは約785グラム)だった。最薄部ではPCG-X505/Pのほうが薄いが、最厚部ではVAIO Xのほうが薄く、フルフラットボディはバッグへの収まりもよい

左がPCG-X505/P、右がVAIO Xのキーボード面。PCG-X505/Pは先端を薄くデザインするため、手前側にキーボードを配置している

 標準のLバッテリーは4セルタイプで、左右に分けて2セルずつ内蔵する。バッテリーパック中央部にスペースが余るのを利用し、ここにタッチパッドと、SDメモリーカード(SDHC対応)スロット、メモリースティックデュオ(PRO-HG対応)スロットを実装した。一般にタッチパッドの位置はキーボードのホームポジション直下が使いやすいが、VAIO Xのタッチパッドがボディ中央にあり、サイズも少し小さめなのは、実装できるスペースがそこしかなかったからだ。

 なお、最長約20.5時間もの長時間駆動をうたうXバッテリーは、林氏がかなり開発が進んだ時点で提案して追加したオプションという。「標準のLバッテリーはJEITA測定法による駆動時間で約10時間だが、無線通信やPCをフルに使うような環境では約5時間程度が実用レベルになる。バッテリー容量を2倍の8セルに増やせば、1キロ程度の重量でほぼ1日の活動時間をカバーできるスタミナが確保できるため、後からかなり無理をいってXバッテリーを追加した」と林氏。

 そのXバッテリーだが、コンセプトは「世界一カッコイイ拡張バッテリー」とのこと。VAIO Xは底面に吸気口があるので、Xバッテリーはこれをふさがないように、装着時に通風用の空洞ができるデザインにした。バッテリーパックはセルの間で温度差があると劣化が進みやすいため、空洞を設けたデザインはバッテリーの状態を良好に保つうえでも理にかなっている。細かいところだが、Xバッテリーを本体に装着するネジ部分は、樹脂で作ると劣化しやすいため、アルミの削り出しで作り、ネジの精度と質感を高めている。

左からXバッテリー、Lバッテリー、Sバッテリーの裏面(写真=左)。いずれのバッテリーパックもバッテリーセルが入っていない中央部はくぼんでおり、このスペースを利用して本体側にタッチパッドとメモリカードスロットを内蔵する(写真=中央)。Xバッテリーを装着すると、高さは約31.7ミリ、重量は1045〜1080グラムになる(写真=右)

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