「高級Netbook…だと…?」 iPadの活用法を考えてみるiPadリポート総集編(3)(1/2 ページ)

» 2010年04月30日 12時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

アプリの安定性の問題

広告付きながら無料でテレビコンテンツが見られる「ABC Player」※日本での利用はできません

 iPadを使い始めてから3週間以上が経過したが、アプリがクラッシュするという問題には比較的頻繁に遭遇する。以前のリポートでも紹介したように、アプリのレビューコメントがユーザーからの不具合やクラッシュ報告で埋まっているといった事態もめずらしくない。iPad発売からアプリをリリースするまでの準備期間が非常に短く、しかも開発者のほとんどは実機に触れることなくiPadアプリをApp Storeに登録しているような状態だったからだ。

 例えば、iPadの無料カテゴリで人気のある「ABC Player」だが、これも実機テストは行っておらず、最後までAppleから提供されたエミュレータのみで開発したという話だ。同アプリは米TVネットワーク「ABC」の番組を広告付きで無料視聴するためのアプリで、発表から10日で20万回以上のダウンロードを達成したという(つまりその時点では、iPad全ユーザーの2人に1人が同アプリをダウンロードした計算になる)。

 ABCといえばWalt Disneyの子会社だが、Appleのスティーブ・ジョブズCEO(Steve Jobs)は、Disneyの筆頭個人株主にあたる。こうした密接な関係にある両社でさえ、iPadを使っての開発が行えず、初期バージョンは頻繁にクラッシュするとしてユーザーからクレームが上がってきている。

 ABC Playerを含め、筆者がこれまで導入したiPadアプリ30本以上のうち、すでに半分近い15本が最初の2週間で1回以上のバグフィクスを含むアップデートを行っている。柔軟に対応できるといえばそれまでだが、準備期間不足は否めない。アプリの数々が安定するまでには、まだまだ時間がかかるだろう。

初期のiPadアプリは不具合が目立つ。アプリ配布から1週間経たないうちに続々とアップデートのお知らせが届く

 また、不安定なのはサードパーティ製アプリだけではない。Apple純正アプリのうち、いくつかで必ずアプリが落ちる現象に遭遇した。例えば筆者の場合、SafariでGoogle Talkの画面を起動すると、ほぼ数秒以内にアプリがクラッシュする現象に見舞われる。原因は不明だが、Googleだけでなく、Safari側にも何らかの問題がある可能性が高い。またこのGoogle Talkだが、ソフトウェアキーボードを表示させないと、ほぼ空白の画面の下側に小さくメッセージが表示されるだけになってしまう。Google AppsではGmail以外のレイアウトがiPad向けに考えられていないような印象を受ける。

 それ以外の例では、アルバムで少し重い写真(デジカメから取り込んだ直後の3〜4Mバイト程度のもの)を交互に表示したり、拡大/縮小または回転といった動作を加えると、数回の操作でアプリが落ちる、あるいはOSを巻き込んでクラッシュする現象が100%再現できる。今後の検証で、少しずつ改善されることを期待したい。

価格の問題

 ここで語る価格には2種類ある。1つは本体、もう1つはコンテンツの値段だ。高齢者にノートPCとiPadのいずれを勧めるのかという話でも触れたが、現状のiPadは正直まだ高価だと感じている。PCの値段が下がっている以上、それ以上のメリットを提示できない限り、相対的にiPadの価格が高く見えてしまう。Kindle DXの489ドルという価格は論外だが、iPadもそれなりにお得感を示せないと、今後の売上の伸びに影響する可能性があるだろう。特にコンテンツの充実がしばらく望めない日本などの地域ではなおさらだ。

 もう1つがここでの主題であるコンテンツの価格だ。正直な話、iPad対応だけでプレミア性を出すアプリが多すぎる気がする。例えば、人気アプリの「Flight Control」だが、iPad版の「Flight Control HD」では旧版の0.99ドルから4.99ドルとなっている。これはまだ良心的なほうで、「Enigmo Deluxe」ではiPhone版の2.99ドルに対して9.99ドルだ。App Storeはスタート時の当初の異常な値段から、2年を経ていまのレベルにまで落ち着いてきた印象があるが、iPad登場でまたインフレ現象が全体に起こりつつあるように感じる。もちろん、iPad用にデータを書き起こして多額のコストがかかっている例もあるだろうが、価格設定の行方は1ユーザーとして気になるところだ。

 だがもっと気になるのはiBooksなど、電子書籍関連の価格だ。iBooksの価格帯が8〜15ドル程度であることは以前にも紹介したが、ほとんどの人気書籍は13〜15ドルの価格帯に張り付いている。Amazon.comが出版社との交渉で折れる前までは、Kindle書籍の価格上限は9.99ドルだったわけで、事実上の値上げとなる。

記事の課金スタイルや広告の多さでたびたび批判されるWSJアプリ。好意的な意見もあるが、多くのユーザーはすでに利用していないという話も……

 そして悪名高いのがWall Street Journal電子版だ。同社は普通の紙面定期購読のほか、オンライン版(Web)、iPhone版、iPad版の4種類のサブスクリプションを用意している。多くの読者は紙面購読と、契約者数100万人以上といわれるオンライン版に集中しているとみられるが、ここで面白いのは、これら契約者であってもiPhone版とiPad版は別契約として扱われる点だ。コンテンツの内容はほぼ共通となるが、アクセスするデバイスが変わるごとに2重、3重での課金が行われる。

 iPad版では紙面イメージがそのまま読めるというメリットもあるが、既存契約者であっても1週間あたり4ドル、1カ月で18ドルを支払う必要があり、新たにiPad向けの契約を行う意義を見出すのが正直難しい。オンライン状態であれば、Safariを使ってWeb版を閲覧すれば追加料金は発生しないわけで、“取られ損”という気さえする。WSJ親会社のNews Corp. CEOのRupert Murdoch氏は「良質なコンテンツは無料ではない」「必要な情報であればユーザーは対価を払う」とコメントしているが、ユーザー側にも課金の適切さを判断する力はある。出版社側がiPadバブルに浮かれている感もあるが、これは近い将来、適切な形に落ち着いていくだろう。

米国では雑誌のサブスクリプション購読とそれに伴う大幅な割引きサービスがよく行われる。画面のTimeの例でいえば、3割、4割引きは当たり前どころか、9割引きも普通に行われている

 一方で、出版社側が課金方法について判断しかねている様子もうかがえる。面白い事例として前回紹介したTime Magazineを取り上げてみよう。同誌は1週間ごとに最新号をまるごと電子化したアプリを配信している。価格は4.99ドルで、これは米国で販売されている紙のTime誌とほぼ同等だ。だが米国での雑誌は年間または数カ月単位のサブスクリプション購読が一般的で、契約者にはさまざまなオマケ特典(電子手帳など)や割引特典がついてくる。この割引特典が曲者で、多くの場合は半額以上、このTimeの場合は1年契約でなんと90%引きの20ドルとなる。こうした割引特典で読者を集め(2年目以降は若干割引率が減少する)、安定収入を築くと同時に、購読契約で得たユーザー情報をもとにさらなるビジネスを展開するのだ。

 お分かりだと思うが、サブスクリプションが使えない以上、電子版のほうが紙よりも明らかに値段が高い。これはサブスクリプションの仕組みがアプリで構築できていない点もさることながら、既存のビジネスを崩さないという暗黙の了解があるとみられる。New York Timesでも同様の問題でiPad用アプリのリリースが遅れているという話があり、柔軟性が伝えられる米国の出版社や新聞社といえど、事情は日本とそう変わらないといえる。

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