PCのあり方を再定義する「OS X Lion」WWDC 2011基調講演リポート(2)(2/4 ページ)

» 2011年06月08日 00時00分 公開
[林信行,ITmedia]

Macの利用に大きな変化をもたらす10の新機能

250の新機能を搭載するMac向け最新OS「OS X Lion」

 シラー氏によれば、OS X Lionには250の新機能が搭載されるというが、今回の基調講演ではそのうち10の機能が披露された。10の重要機能も、250以上の詳細機能も、すでにアップルの公式ページで紹介されている。そこで本稿では、筆者の解釈を交えながら、それぞれの機能を紹介できればと思う。

 基調講演で挙げられた10の機能のうち、1つ目は「マルチタッチジェスチャー」だ。ここ数年で大型化してきたMacBookファミリーのトラックパッドや、2010年に発売されたMagic Trackpadの登場で、Macでもタッチ操作をするのが当たり前になった。机の上でマウスをはわせて、広い画面に対して小さすぎるカーソル(矢印)の照準を目的のメニューやスクロールバーにあわせるのは、今となってはかなり骨が折れる作業だ。一方、ジェスチャーのメリットは、2本、3本あるいは4本の指をパッド上に置いて、大ざっぱな動きをするだけでさまざまな操作をスムーズにできることにある。

マルチタッチジェスチャーはOS XとiOSの操作性を近づける

 アップルは、ただ新しい操作を盛り込んだだけでなく、それにあわせてウィンドウのデザインなどにも工夫を凝らした。注目すべきはスクロールバーの消失だ。マルチタッチジェスチャーのおかげで、もはや細いスクロールバーにマウスカーソルをあわせる必要がなくなった今、ある意味、スクロールバーそのものも不要になってしまった。そこで、アップルは見た目上意味がなく、気が散る要因になるスクロールバーを隠し、カーソルを近づけた時だけ表示するように変更したのだ。

 しかも、3本指を左右にスワイプしてアプリケーションを切り替える動作も含め、現在アップルがiPad用に用意していると思われるマルチタッチジェスチャーとも共通化が図られている。

 WWDC 2011の発表で、iOS 5以降ではiPadがPC不要で利用できることが明らかにされた。それにともない、今後はまずiPadを購入して、そこからMacに移行する人が増えてくるかもしれない。そうした時に、こうした操作の共通化がものをいいそうだ。

標準添付の主要アプリケーションはフルスクリーンに対応する

 2つ目に紹介されたのは「フルスクリーンアプリケーション」だ。PCといえば、画面を埋め尽くすたくさんのウィンドウを切り替えながら作業するのが基本だが、このように画面に関係のないウィンドウが開いている状態は気が散りやすく集中しにくい問題もある。iPadがすばらしかったのは、アプリケーションを利用している間はほかが見えず、“そのアプリケーション専用機”になっていることだ。

 フルスクリーン機能は、このすばらしい特徴をMacにも取り入れるためのものだ。対応アプリケーションは、画面右上のフルスクリーン化ボタンをクリックすれば、全画面表示となり、より作業に集中できるようになる。また、左右へのスワイプ操作で簡単にアプリケーションの切り替えができる。

 アップルはほかの開発者が手本にできるように、Safari、iMovie、iCal、プレビューなど、標準添付の主要アプリケーションのほとんどをフルスクリーン対応にするようだ。デモでは、自分撮りした映像をいじって遊ぶ「PhotoBooth」が紹介された。新しいPhotoBoothでは、顔認識機能によって目の部分だけを大きくしたり(動いてもちゃんとライブでエフェクトをかけ続ける)、頭の上に鳥が数羽くるくると回るアニメーションなどが披露された。

フルスクリーンに対応した新しいPhotoBoothのデモ。顔認識機能によってエフェクトがリアルタイムに自動追従する


進行中の作業を整理するミッションコントロール

 3つ目は「ミッションコントロール」機能だ。Macはウィンドウクラッター(画面がウィンドウだらけで混乱した状態)を解決するために、これまで何度も斬新な工夫を続けてきた。現行のMac OS Xが搭載するExpose機能はその最たる例で、WindowsからMacに乗り換えた多くのユーザー(特に開発者)が絶賛する機能でもある。しかし、OS X Lionでは、このExposeを、さらに押し進めたミッションコントロール機能を提供する。

 ミッションコントロールでは、画面の中央に(Expose同様に)開いているウィンドウすべてが表示されるが、その際、ウィンドウがアプリケーション単位でまとめられ見つけやすくなる。また画面の上部にはウィジェットが並んだダッシュボードやフルスクリーン動作中のアプリケーションが表示される。

 また、特定のアプリケーションウィンドウの組み合わせを1画面にうまく配置したい場合は、ミッションコントロール画面上端の全画面サムネイルが並んでいる部分に新たにスペーシズ(作業スペース)を追加し、そこに配置したいウィンドウをドラッグして追加すればいい。

Mac App Storeはソフトウェア流通の最大手に

 4つ目は、OS X Lionのリリース前に、単独機能としてリリースが開始されているMac App Storeの紹介だ。実はこのMac App Store、すでにPC用のソフトウェア流通の仕組みとして確固たる地位を確立している。アップルによれば、Mac App Storeは量販店のBEST BUYを抜き、ソフトウェア流通市場としてナンバー1の座を獲得したというのだ。

 同ストアでアプリケーションの販売を行ったAutoDeskの「SketchBook Pro」は新たに100万人の新規顧客を獲得し、Feralソフトウェアは売り上げが倍増し、Pixelmatorという個人開発のアプリケーションは販売開始から最初の20日間で100万ドルを売り上げたという。OS X Lionでは、これがOS標準機能として採用され、iOS機器で人気のアプリ内課金(In-app purchase)の利用や通知機能の利用も可能になる。

 さらに重要なのがデルタアップデート、つまりアプリケーションの新バージョンを丸ごと全部ダウンロードさせるのではなく、前バージョンとの差分だけダウンロードすることで通信量を減らす機能も提供されるという点だろう。

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