アップルが向かう先――WWDC 2011の基調講演に思うことWWDC 2011基調講演リポート(5)(2/3 ページ)

» 2011年06月15日 11時59分 公開
[林信行,ITmedia]

アップル体験=究極の定期購読システム!?

今後の“アップル体験”の核になるのはiCloudだ。写真も音楽も書籍もアプリも、すべてiCloudによって統合された体験として提供される

 日本でも大人気のiPhoneアプリケーションを開発している会社のトップと、アップルについてじっくりと話をしたことがある。アップルについてよく言われる「オープンでない」とか「囲い込み」と声を上げる人がいるが、AppStoreやiTunes Storeは、実はそれほどたいした囲い込みではない、というのが我々の共通の認識だった。

 確かにApp Storeは、一部の“質の低い”アプリケーションを認可しないかもしれない。しかし、それによってApp Store全体の質やイメージが向上し、結果としてiPhoneの利用者が増えれば、それはそれでiPhoneアプリケーション開発者全体にとっては利益があるものになる。iTunes Storeについても、実は他社に先駆けてDRMフリー化を進めており、それほどクローズドにはなっていない。

 アップルにとって最強の囲い込みとは、同社が提供する、ある意味で業界最高クラスのユーザー体験なのだ。「iPhoneもAndroidも変わらないよ」「MacもWindows機も変わらないよ」という人もそれなりの人数がいるだろう。しかし、どこかでiPhoneやiPad、Macの調和のとれた自然な体験の素晴らしさを知れば、これこそが最大の囲い込み要因になる。

 他社がそれに対抗しようと思っても、そもそもOSは他社まかせにしており、今さら自社開発するとなると、ばく大な資金と時間をかけなければ追いつけないだろう。ましてや、そこにクラウドサービスも統合させるとなれば、目標の達成はさらに遠い道のりになる。

 そんな中、アップルはiTuens Storeによる音楽や映画(米国ではテレビ番組も)の提供、膨大な種類のアプリケーション、デバイスを紛失したり買い換えてもすぐに同じ状態になるクラウドサービスなど、見事に調和した最強の体験を、おそらく、ほかのどのPCメーカーをも超える圧倒的なリソースを投入して作り出した。そして、その“アップル体験の囲い込み”から抜け出せない人たちに、数年に1度MacやiPhoneを買い替えてもらう(もちろん、そのためには最新ハードが使いたくなる、素晴らしいOS機能や素晴らしいアプリケーションを開発し続ける)という、ある意味、非常に利益率の高い“定期購読モデル”を構築したのではないかと思う。

 中には、バラバラに作られたクラウドサービスやバラバラに作られたWebブラウザ、バラバラに作られたハードウェアとOSを利用して“組み合わせの妙”を楽しみたいというマニアックな人たちがいるかもしれない(昔はオーディオマニアもシステムステレオ派とコンポ派に分かれていたことを思い出す)。しかし今後、PCやスマートフォンの利用が広がっていく初心者層にとっては、いちいち「組み合わせの妙」を探さないで済む、“統合型環境”のほうが分かりやすい。そう考えるとアップル優位を覆すのは至難のわざになりそうだ。

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