外部GPUという大きな熱源が本体から切り離されたことで、本体/GPUともに放熱設計の条件が軽減され、本体はより薄型軽量に、そしてより高性能なGPUを採用することが可能となった。そのため、外部GPUもこれまで以上に高性能なAMD Radeon HD 6550M(グラフィックスメモリ1Gバイト)を搭載している。
Light Peakの帯域は、最大でもPCI Express 2.0(5GT/s)でいえばx2相当であり、また、内蔵液晶ディスプレイに出力する場合には、内蔵GPUの出力を利用する(よく知られている例でいえば、NVIDIA Optimusと同じ仕組み)ため、Radeon HD 6550Mのフル性能から幾分のロスは覚悟しなければならないが、この極薄・軽量ボディと高性能なGPUパフォーマンスを同時に手に入れられるというのは、まさに新しい体験で、セパレート型スタイルだからこそ実現できたメリットだろう。
これまでVAIO Zにとっては、高パフォーマンスな外部GPUと省電力な内蔵GPUをスイッチで切り替えられる「ダイナミック・ハイブリッドグラフィックス」が、通常電圧版CPUの搭載とともに大きな特徴だったわけだが、今回はGPUを物理的に着脱するというスタイルを導入したことで、パフォーマンスとモビリティの融合の次元は、さらに高いレベルへと到達したといえる。
これは相当な英断だが、「セパレート型スタイルにして、高性能なGPUを搭載する」という選択をした背景の1つには、CPU内蔵グラフィックスコアの性能向上も影響している。というのも、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000も内蔵グラフィックスコアとしてはかなりの高性能で、ソニーによれば「内蔵GPUでも先代Zとほとんど同等のパフォーマンスがある」という。
だからこそ、あえて外部GPUを搭載するのであれば、半端なものではインパクトに欠ける。「あえて外部GPUを追加するのだから、それはCPU内蔵グラフィックスコアよりも大幅に高性能でなければならない」という考えは理にかなっている。

GPU-Zの情報表示画面。Power Media DockにはAMD Radeon HD 6550M(グラフィックスメモリ1Gバイト)を内蔵(画像=左)。DirectX 11対応、480基のユニファイドシェーダを内蔵する高性能GPUで、高い3D描画性能が期待できる。CPU内蔵グラフィックスコアのIntel HD Graphics 3000(画像=右)。第1世代のCore iシリーズが内蔵するIntel HD Graphicsよりも性能面、機能面ともに大幅な強化が図られている。動画エンコードなどを高速に行えるメディア処理機能のIntel Quick Sync Video(QSV)も搭載する

標準仕様モデルにおけるノートPC単体利用時のデバイスマネージャ画面。CPUのCore i5-2410M(2.3GHz/最大2.9GHz、3次キャッシュ3Mバイト)はデュアルコアのCPUだが、1コアにつき2コアぶんの命令を取り込んで同時処理するHyper-Threadingに対応しているため、プロセッサの項目に4つのプロセッサが表示されている

Power Media Dock装着時のデバイスマネージャ画面。新たにRadeon HD 6550Mが加わっているほか、光学ドライブ、ネットワークコントローラ、USB 3.0コントローラなどが追加されているのが分かる以上、新型VAIO Zの変更点を中心にチェックした。近日公開予定のレビュー後編では、液晶ディスプレイの視認性や、キーボード、タッチパッドの使い勝手などを確認し、各種ベンチマークテストを実施する予定だ。
※ACアダプタとGPU切り替え機能について、情報を追記しました(2011年7月12日19時30分/PC USER編集部)
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