コラム
» 2011年08月25日 14時47分 公開

“本当のチャレンジ”が始まる:ジョブズ氏退任に思うこと――アップルは2013年をどう乗り切るか (2/3)

[林信行,ITmedia]

ジョブズ氏退任後のアップル

 ジョブズ氏の退任で、多くの人々にとってなんといっても気になるのがこの先のアップルは大丈夫か、という点だろう。

 答えはすぐには出てこない。ティム・クック氏には、過去に2度、ジョブズ氏に代わってCEOの代行をし、新製品発表などを成功させた実績もあり、アップル社内でも経営者としての人望は厚い。

 現在、アップルは時価総額でエクソンモービルに次ぐ世界2位の企業だ(8月には一時的にエクソンモービルを抜いた)。今やアップルの時価総額は、ユーロ圏のすべての大型銀行32行をすべてをあわせたよりも大きいという。

 その背景には、やはりなんといっても圧倒的なiPhoneの成功がある。アップルが、この6カ月間に販売したiPhoneの台数は3899万台で、これは2010年1年間(12カ月間)を通して日本国内で売れた携帯電話の総数3764万台(MM総研調べ)よりも多い。しかも、日本の3764万台/年はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクそれぞれ数十機種ずつを出した合計の出荷台数だが、iPhoneはiPhone 4とまだ海外で人気が高い2年前の製品iPhone 3GS、たった2機種で達成した数字で、端末開発費に対しての利益率は圧倒的に高い。

 中にはiOSよりもAndroidのほうが勢いがあり、出荷シェアでもiPhoneを上回り始めた、と指摘する人がいる。しかし、それはあくまでプラットフォーム全体としてのシェアで、メーカー別の利益で見るとアップルが圧倒的に成功している。

 最近、洞察の深さで米国で最も注目されているブログの1つにasymco.comがある(ブログの筆者、Horace Dediu氏は最近では米FORTUNE誌などでもよく紹介されている)。同ブログが昨年秋に紹介した分析が面白い。アップルは出荷台数のシェアでは、世界で4%ほどで、32%のシェアを持つノキアなどに負けているが、世界の携帯端末メーカーの端末販売による利益でシェアを計り直すと、なんとアップルが50%のシェアを得ているというのだ(asymco: Last quarter Apple obtained 4% unit share, 22% sales value share and 50% of profit share)。

 これによれば、ノキアは安価な製品で薄利多売のビジネスを中心に手掛けているため台数は出るものの、利益にはつながっていないという。それ以外のAndroid端末を手掛けるグローバルメーカーも、結局は端末を乱造して“数打てば当たる”の商売をしているため、効率よく利益を生み出せていないのだ。

 読者の中には「それでもメーカー連合によるAndroidのほうが端末出荷台数の合計が大きいのでアプリケーション開発者に有利だ」という人がいるかもしれないが、Android端末はiPhoneに比べて圧倒的にアプリケーションのダウンロード数が少なく、特に有料アプリケーションはなかなか購入されないことがいくつかの調査で明らかになってきている(その代わりWebの利用率は高い)。世の中にiPhoneアプリケーション長者は大勢誕生したが、Androidアプリケーション長者はほとんどいないのが現状で、その点でもiPhoneは強い。

 それではiPadはというと、こちらも安泰だ。iPadの出荷台数は発表以来、依然として伸び続ける一方、同じカテゴリに分類されるタブレット型製品を投入していたヒューレット・パッカードが最近になって市場撤退を表明した。iPadは50%以上のマーケットシェアを誇っており、ついにはNetbookで成功を収めていたAcerのビジネスにも大きなダメージを与えるに至っている。

 また、Macでも「MacBook Air」の発売以降、人気が止まらず、品薄の13インチモデルついては、一部でプレミア価格付きで売られている状況だ。実際、Mac OS X Lionがリリースされた7月はMacの売り上げが26%も向上した。

 ここまで絶好調となると、逆にアップルを失速させるのはなかなか難しい。もしCEO不在のまま何もしなかったとしても、後1〜2年はそれほど大きな影響は出ないはずだ。ましてや新CEOのティム・クック氏は、アップルを現在の地位に持ってくる戦略の要(かなめ)を果たして来た優秀な人物であり、そう簡単に失敗をする人物ではない。

 ただし、将来を展望したときはどうだろうか。この点では、経営の手腕ではなく、アップルがティム・クック氏の時代になっても、イノベーションを起こし続けることができるのかどうかが重要になってくる。

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