プレゼンテーションで振り返る“Apple=ジョブズ”スティーブ・ジョブスは“役者”でもあった(3/3 ページ)

» 2011年08月26日 09時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

“ポスト・ジョブズ”の時代はどこに進む

 ジョブズ氏の影響力の大きさは、いまさら説明すまでもないことだが、ジョブズ氏のほかにもアップルには優秀なスタッフがいる。特に、いま現役のモデルで採用されたスタイリッシュで使いやすいデザインを作り出したジョナサン・アイブ氏と、ジョブズ氏を支える新CEOのティム・クック氏の存在は大きい。彼らによって、ジョブズ氏が第一線を退いてもアップルの魅力が急に減少するというわけではない。

 クック氏は、COOとしてジョブズ氏が病気治療中の経営指揮を一手に担っていた人物だが、その経歴の中には、ワールドワイドのセールス担当責任者であったときもある。エンジニアやクリエイターというより、むしろセールスやマーケティングなどアップルでは裏方となる分野で活躍していた人物といえる。

 その実力が発揮されたのがアップルのサプライチェーン構築で、旧製品から新製品へと一気に切り替えを可能にする在庫管理、そして、製造状態を事細かに管理する仕組みの構築はクック氏の采配によるところが大きい。在庫管理はメーカー共通の悩みだが、これを業界で最も優れたシステムに仕上げ、コストや無駄を省いた功績は非常に大きい。アップルは、製品やサービスの魅力もさることながら、こうした強力な流通販売網を敷いている点も企業としての強みとなっている。

 優秀なスタッフがそろっているアップルは、ジョブズが経営の第一線から退いたからといって、企業としての“仕組み”に死角はほとんどないといえる。競合する企業が、この期に乗じて反撃しても、簡単には切り崩せないだろう。

 今回のジョブズ氏退任の第一報が出たとき、筆者がチェックしている米国メディアの多くは、突然の話題に驚く一方で、退任そのものには冷静に反応している。同氏の病気療養はすでに1年以上が経過しており、実務そのものはほかのスタッフに移行しているからだ。San Jose Mercury Newsの同日付け報道によれば、複数のアナリストらの指摘で、短期的にはアップルにとってマイナス材料にはならないとみられている。多くのアナリストは、この影響について判断するには、もう少し経過を見る必要があるとの意見で一致している。

 アップルの株価は、もともと歴史的水準で推移していたこともあって、ジョブズ氏退任のニュースが出た直後の24日時間外取引ではマイナス5%も急落する事態になっている。これは過剰反応だと思われるが、実際にアナリストらはアップル株を買い推奨判断から動かしておらず、短期的な判断は早計との考えのようだ。

 危険なのは、安定した時期が長く続くことで、競合たちが力をつけ、かつ、アップルが競合たちの実力を過小評価したときだ。ジョブズが強力な決定者として存在しせず、強力なリーダーシップやディレクションが不在だった場合、アップルが現在のポジションを維持できるだろうか。

アップルのエンジニアリングデザインを一手に引き受けるジョナサン・アイブ氏。ユーザーからの支持も高い(写真=左)。新CEOに就任したティム・クック氏は、発表会のプレゼンテーションや、株主向けの説明会でスピーカーを務めている。また、いまのAppleがあるのは後方支援に長けているクック氏の力によるところが大きい(写真=右)

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年04月09日 更新
  1. レノボが「ThinkPad」2026年モデルを一挙発表! 12年ぶりの構造刷新やUSB Type-Cの自力交換対応でメンテナンス性も向上 (2026年04月07日)
  2. 「ANAオリジナル タフなビジネスリュック」を試す 収納力もバツグンで鳥肌が立つほどにカッコいい (2026年04月07日)
  3. 2台のMac StudioをThunderbolt 5で連結! 計128GBメモリ環境と分散推論「exo」でLLMを爆速化してみた (2026年04月08日)
  4. 128GBの大容量メモリが映像制作とAI環境を変える――「M5 Max MacBook Pro」フルスペック機をプロが実戦投入して分かったこと (2026年04月08日)
  5. Blu-ray難民を救う? アイ・オーとVerbatim、ユーザーの不安を払拭する製品供給の継続を発表 (2026年04月08日)
  6. FCCLがこだわりのキーボード「FMV Keyboard X」をクラファン形式で販売 約2.3万円から (2026年04月07日)
  7. ANAがビジネスユースに特化した耐久性重視のビジネスバッグ3製品を発売 (2025年11月14日)
  8. 「GeForce RTX 50」シリーズと「DLSS 4.5」でゲーミング体験はどう変わる? NVIDIAの中の人が解説 (2026年04月09日)
  9. DJI、8K/360度撮影に対応した新型ドローン「Avata 360」きょう発売 1型センサー搭載、レンズ交換も可能に (2026年04月09日)
  10. サンコーで3280円の電動マッサージ機能付き「3in1スマホショルダーケーブル」を試す 使って分かった長所と欠点 (2026年04月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年