「VAIO Duo 11」の“上質なスライドボディ”を丸裸にする完全分解×開発秘話(前編)(5/7 ページ)

» 2012年12月19日 10時30分 公開

スライドボディの耐久性も考慮した設計に

 なお、液晶ディスプレイ部を開いたキーボードモードの状態では、ヒンジ部の奥に隠れて2本のケーブルが露出しているのが見える。細いほうのケーブルは無線通信のアンテナを束ねたもの、太いほうのケーブルはそれ以外(映像、タッチセンサー、照度センサー、カメラなど)の信号を通すものだ。ユーザーが指を突っ込まなければ触れない場所ではあるが、ここは少し武骨に思う向きもあるだろう。

 これに対し、浅見氏は「ケーブルは液晶ディスプレイ部の開閉で切れないことを最優先した。例えば、ケーブルをヒンジ部に内蔵すると、ケーブルの曲がる角度が急すぎてしまい、耐久性に問題が生じる可能性がある。ユーザーの手が届かない場所ならば、実用上問題はないだろうと考え、今回はこうした処理にした。ケーブルの素材や構造も含め、耐久性に配慮し、開閉テストも繰り返し行っている」との回答だった。

キーボードモードの状態では、ヒンジ部の奥に隠れて2本のケーブルが露出しているのが見える。細いほうのケーブルには無線通信のアンテナ、太いほうのケーブルにはそれ以外(映像、タッチセンサー、照度センサー、カメラなど)の信号が流れている。指を中に突っ込まなければ触れない場所にあるため、今回は開閉の耐久性に配慮し、見せたままの構造にした

 浅見氏が語る液晶ディスプレイ部の開閉テストをはじめ、VAIO Duo 11では新しいボディデザインの採用に伴い、専用の品質試験装置を用意した。非使用時に画面が露出している構造のため、液晶ディスプレイ部に鉄球を落下させる耐衝撃テスト、本体をさまざまな角度で高い位置から落とす落下テストなど、多くの試験を重ねて堅牢性が保たれていることを確認し、製品化にこぎ着けたというわけだ。

VAIO Duo 11の開発時に行った品質試験の一部。液晶ディスプレイ部の開閉試験(写真=左)。液晶ディスプレイ部に鉄球を落下させる耐衝撃試験(写真=中央)。本体を高い位置から落とす落下試験(写真=右)

液晶周辺のスペースを活用し、スライド機構と薄型ボディを両立

 続いて、スライド機構を搭載した液晶ディスプレイ部裏面のカバーもネジを外して分離する。このカバーを外して改めて確認できるのは、複雑にパーツを組み合わせた左右のヒンジ部を、液晶パネルモジュール両脇のフレーム部に内蔵することで、精巧なスライド機構と本体の薄さを両立していること。

 “品位のある”開閉機構のためにヒンジを作り込むと、どうしても本体に厚さが出てしまうが、普通に液晶パネルモジュールとヒンジを重ねて搭載したのでは、スライド型ボディで18ミリ未満という薄さの目標を実現することは到底できない。

 そこで、本体の基板部と液晶パネルモジュールの左右にヒンジを出っ張らずに収納できるだけのスペースを確保し、横幅がわずかに長くなるのと引き替えに、スライド型でスリムなボディを手に入れているのだ。「これだけしっかりしたスライド型ボディを薄く作るための構造も、今までにない挑戦の1つ」(浅見氏)という。

 液晶パネルモジュールの周辺には、このヒンジ部に加えて、"Exmor R for PC" CMOSセンサー搭載のフルHD Webカメラ(フロント側)、無線LANのアンテナ、GPS、照度センサー、Windowsボタンといった基板も内蔵しており、画面周囲のフレームが太めに取ってある理由が分かる。

スライド機構が備わった液晶ディスプレイ部裏面カバーの表(写真=左)と裏(写真=右)。無線LANのアンテナは、横位置で見て液晶ディスプレイ部の下辺に配置されている

カバーを外した状態の液晶ディスプレイ部裏面。液晶パネルモジュールの左右にヒンジを収納するスペースがあるほか、無線LANのアンテナ、Webカメラ、GPS、照度センサー、Windowsボタンの基板類が配置されている。液晶パネルモジュールはガラス面に接着してあるため、ここから取り外すことはできない

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