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約40%体積カットで“これなら置ける”A4複合機へ――エプソン「EP-805A」徹底検証スマホ/タブレット連携も大幅強化(6/6 ページ)

» 2012年12月29日 18時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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プリント/コピーのスピードは?

 印刷品質に続き、印刷速度も見ていこう。ここではPCからのA4モノクロテキスト印刷、チャートとテキスト混在のA4カラー印刷、A4カラーの自動両面印刷、L判サイズへの写真印刷、メモリカードからL判写真用紙へのダイレクトプリント、カラーコピーという印刷ケースを想定し、それぞれの所要時間を計測した。

印刷/コピー速度のテスト結果
設定 出力時間
A4モノクロ(PCから印刷) 普通紙1枚
速度優先(レベル1) 2秒6
標準(レベル3) 8秒1
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚
速度優先(レベル1) 20秒5
標準(レベル3) 46秒5
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚/自動両面印刷
速度優先(レベル1) 47秒8
標準(レベル3) 1分07秒5
L判(PCから印刷/フチなし) クリスピア1枚
標準(レベル4) 13秒6
きれい(レベル5) 54秒9
L判(メモリカードから直接印刷/フチなし) クリスピア1枚
標準(レベル4) 21秒8
きれい(レベル5) 1分03秒0
A4カラーコピー 普通紙1枚
標準 19秒3

 まずはPCからの印刷だが、これはPCの処理時間を除くため、プリンタが用紙を引き込んでから計測を開始し、排紙が完了した時点で計測を終了している。

 A4モノクロテキスト印刷の計測では、JEITAのプリンタテストパターン「J1.DOC」を用いて、標準モードと高速モードで出力を行った。

 標準モードでの出力は8秒1かかったが、非常にきれいでいうことはない。速度優先モードは2秒6と高速なだけあって、かなりインクの濃度が落ちるものの、白地に黒文字ということもあって判読は可能だ。他者に渡すのではなく自身で用いるならば使用に耐えるかもしれない。ただ、所要時間は標準でも8行程度なので、コスト低減が目的でないのなら、素直に標準を用いるのがベターだろう。

 チャートとテキストが混在したA4カラー文書の印刷では、JEITAのプリンタテストパターン「J9.DOC」(5ページつづり)を用いて、標準と高速の2モードでの所要時間を計測した。

 こちらは標準モードで46秒5、速度優先モードで20秒5と差が出た。さすがに速度優先モードだとチャートがかすれて読みにくい。また、このデータは所々で強調のためにテキストの色を変えているのだが、これもかすれて判読がやや困難だ。イラストや写真が混在するぶん、所要時間に開きは出るが、やはり標準モードを用いるのが賢明に思う。

 自動両面印刷の計測にもJ9.DOCを使用した。印刷モードは標準と速度優先を使用している。用紙反転の時間が加味されるためか、片面印刷のテストに約20秒ほどを加算した結果となった。個人的には5ページぶんのデータが印刷できる時間として許容できる範囲だが、これは個々の用途や状況に応じて判断すればいいだろう。

 L判サイズへの写真印刷では、写真用紙クリスピア<高光沢>に最高品位の「きれい(レベル5)」モードと、これに次ぐ「標準(レベル4)」モードの所要時間を計測した。

 結果は2つのモードでそれなりの時間差が生じている。出力品位としてはレベル4でも非常にきれいな結果で、常用しても問題ないレベルだ。これが1枚あたり13秒6の速度ならば優秀といえる。レベル5の優位性は階調が滑らかに描けている点で、微妙な階調を生かすようなデータではレベル5に切り替えるという使い方がよいかもしれない。

 続いてメモリカードからのダイレクトプリントだが、印刷開始と同時に測定を開始した。これは画像処理の時間も性能の1つだからだ。そのほかはPCからのプリントと同様に、用紙はクリスピア、印刷モードは「きれい」と「標準」を試している。

 計測結果はPCからの印刷とそれほど大きな違いはなく、処理性能の高さを物語っている。印刷品位の傾向もPCからの印刷で述べた通りだった。

 最後にA4カラーコピーの印刷速度は、標準モードのみ測定している。スコアは約19秒となかなかに高速だ。印刷品質のパートで述べたように、標準モードでのコピー品質は高いので、満足できる結果といえる。

L判フチなし写真印刷のコストは1枚あたり20.8円

染料6色独立型のインクタンクは新型の70番(標準インク)と71番(大容量インク)を採用する

 EP-805Aはボディサイズを縮小するため、インクタンクの形状を小型化したが、同時に容積効率の見直しも行っている。このため、新しいインクタンクは小さな外観とは裏腹に、従来と同等のインク容量を備えるという。

 「写真用紙<光沢>」のL判500枚入り(2250円)を使用した場合、印刷1枚あたりのランニングコストは、70番(標準インク)が約26.7円、70L番(大容量インク)が約20.8円と、公称値においては従来機と同等の値を維持している(新条件でのインク+用紙コスト)。

 注意したいのは、2011年モデルのEP-804Aが使用していたインクタンクの50番には、容量を減らして価格を抑えた51番という小容量タイプが存在したことだ。EP-805Aの標準インクである70番が、この51番が位置付けになり、大容量インクの70L番が50番の位置に置き換わる格好となっている。

 つまり、2011年モデルは標準タンクに対して小容量タンクを用意したが、2012年モデルは標準インクに対して大容量インクを用意する、というラインアップ構成になった。70番(新・標準容量)と51番(旧・小容量)、70L番(新・大容量)と50番(旧・標準容量)はそれぞれ価格が合致するため、写真印刷の公称コストでユーザーの負担は増えていないとのことだが、購入の際に混乱しないよう気を付けたいところだ。

 なお、インクタンクの搭載の仕方がオフキャリッジ式からオンキャリッジ式に変更されたことに伴い、インクタンクの交換にかかる時間は長くなり、インクの充てん処理が発生するようになった。この点はボディサイズとのトレードオフになる。

静音性は改善の余地あり

 エプソンのインクジェットプリンタはピエゾ方式のため、静音性に関してはあまり期待できない。数代前のモデルに比べればかなり改善されてきているが、やはり動作音は大きめだ。夜間の使用では周囲に気を使う必要も出てくるだろう。

 このため、プリンタドライバには静音動作モードを用意している。印刷速度は落ちてしまうが、騒音の起伏が小さくなり、耳障りな印象は軽減されるはずだ。ただし、使用条件は普通紙への「標準」モードでの印刷時のみ、という制限がついてしまうのは残念だ。

コンパクトボディに機能満載、まさに今シーズンの大本命

 以上、EP-805Aをじっくりチェックしてきたが、本当に隙のない製品に仕上げてきたというのが率直な感想だ。もともと画質や速度に不満はなかったが、タッチパネル付き液晶モニタの操作性やEPSON Connectの拡充、細部のブラッシュアップなどにより、使い勝手はいや増した。

 そして何よりも圧巻なのはコンパクトなボディだ。従来機より40%近くも体積を減らしながら、省かれた機能はほとんどなく、むしろ追加された機能も少なくない。設置スペースの問題でA4インクジェット複合機の導入をためらっている方、あるいは複合機が普段から邪魔に感じている方は、店頭で一度その小型化したボディを確認してみることをおすすめする。

 筆者としては、ボディサイズについて従来から特に不満は感じていなかったのだが、実際にここまでコンパクトな筐体を目の当たりにし、運用してみると、思った以上の快適さに驚いた。

 これほど充実した仕様で実売価格は大手量販店でも2万2000円前後まで下がっている(2012年12月29日現在)。省スペースだけを目的に購入したとしても、性能も機能も家庭向けプリンタ複合機として高い完成度にあり、決して後悔はしないはずだ。

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