“PCを使う理由”が改めて問われる2013年本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2013年01月01日 15時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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“僕らがPCを使う理由”とは何なのか?

Windows 8に標準搭載されたWindowsストア。2013年はWindowsストアアプリを中心に、Windowsのエコシステムを再構築できるか

 マイクロソフトがまず取り組まなければならないのは(そして実際、懸命に取り組んでいるのは)、Windowsストアアプリ“市場”の立ち上げだ。

 単にアプリをそろえればいいわけではない。アプリの絶対数よりも、実際に使えるアプリ(Twitterクライアントが1000種類あっても、1人が使うのはせいぜい1〜3種類程度だろう)の種類を増やし、新たなサービスの立ち上げ時には、高順位でWindowsの機能や性能、ハードウェアの特徴を引き出せる専用アプリが企画されるようにしなければならない。

 そのためには、アプリケーション開発者にとって魅力的なマーケットプレイスにWindowsストアを仕上げることが必要だ。コミッションのレートが低く、開発ツールもキッチリそろえているのに、主要なサービス向けアプリの開発が後手に回っているのには、何か理由があるに違いない。

 これらは、マイクロソフトが今までWindowsプラットフォームで実践してきたことばかりだ。また、アップルのAppStoreも、グーグルのGoogle Playも、アプリケーション市場の競争が激しくなってきていることも考え合わせれば、スタートダッシュには成功したとは言えないものの、うまく乗り切る力をマイクロソフトは持っているだろう。

 問題はその先にある。マイクロソフトはWindows 8でタッチパネルをPCに取り込む方法について示したが、コンピューティングモデルは一般的な「アプリ+クラウド型サービス」の構図を踏襲している。アプリが提供するユーザー体験は、端末性能(特にGPU性能とディスプレイ品質)の向上によって高まってきていて、必ずしもタブレットよりPCのほうがリッチな体験とは言えない状況が近いうちにやってくるかもしれない。

 では、よりシンプルなタブレットではなく、PCを使うのはなぜか。道具としてのPCのよさは何なのか。それは、薄皮1枚とネットワークサービスだけでは提供できない領域にあるように思う。

 ところが、今あるWindowsストアアプリの多くは、iPadやAndroidタブレットでも実装できそうなものばかりだ。ここはマイクロソフト自身が、PCでなければできないアプリケーション、ネットワークサービスによりリッチなユーザープログラムを組み合わせることで得られる快適性を示すべきだろう。

「Office 2013」は2013年第1四半期に発売される予定。従来同様、パッケージ製品も用意する。写真は「Office 発売記念 数量限定 Office Professional 2013 アップグレード優待パッケージ」

 例えば、マイクロソフトは2013年早々にも「Office 2013」をリリースするが、これはデスクトップ型アプリケーションであり、従来の枠組みで作られている。このOffice 2013とサイドバイサイドで動作する、Windowsストアアプリ版で他プラットフォームとの違いを例示できないだろうか。

 マイクロソフト関係者に取材をしていると、従来のデスクトップアプリケーションと、新しいタッチパネル指向のWindowsストアアプリの両方が1台で動くから、Windows 8は便利という声を聞く。しかし、それだけならばタブレットへのユーザーの流れを止めるには不十分だろう。

 タブレットの要素を取り込んだとしても、PCはPCのよさを失ってはならない。PCのよさがパワフルさなら、それを生かす方法論を確立しなければ、よさを知ってもらうことはできない。

 基本ソフトとしては、機能的にも開発環境や性能といった面でも、Windows 8は優れた製品だと思うが、企業向けとは異なりコンシューマー向け製品のオーディエンスは、それで説得できる相手ではないのだから、マイクロソフト自身が「やっぱりPCだね」と直観的に感じられる例を作らねばならない。

PCの形を変える「Haswell」だが、鍵を握るのは……

IDF 2012で示されたインテルのPC向け低電圧CPUロートマップ。2013年前半にIvy BridgeでTDP(熱設計電力)が10ワットのモデルが登場し、同年後半にはHaswellで10ワット以下のモデルが出てくる予定だ。Ultrabook向けには同年後半、TDP 15ワットのモデルが投入されるという

 2013年という時間軸でPC業界を見れば、そこにはインテルが大幅なマイクロアーキテクチャの改良を行うHaswell(開発コード名)という新プロセッサのリリースが、6月ぐらいに控えている(とはいえ、リリースのタイミングは逐次変更されているので、最終的な発売日は予想しにくい)。

 Haswellの世代では省電力性能と絶対的なパフォーマンス向上の両方を同時に達成できる見込みのため、これを生かしたハードウェアが登場すれば、“PCの形”は今とは異なるものになるはずだ。年末くらいまでにはHaswellを生かした新しい形のPCが登場し、さらに製造プロセスを進めて2014年に投入される見込みのBroadwell(開発コード名)では、ARM系SoCに対抗できるフォームファクタと、PCらしいパワフルさを兼ね備えた製品も作れるに違いない。

 しかし、そうしたパワフルさと軽快さの両立を可能にするハードウェアを生かすも殺すも、マイクロソフト自身の舵取りにかかっている。2013年、もちろん各社の努力によって定期的に高性能なPCは出てくるだろうが、1番の注目は“Windows 8発売後のマイクロソフト”だ。

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