ケータイのエコシステムをスマホ上に再現する「LINE」本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2012年07月04日 10時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]
Photo LINEカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2012」で、LINEをプラットフォームに進化させるロードマップが明らかにされた

 「LINE」が無料IP通話+チャットという単なるコミュニケーションツール(アプリ)から、幅広く人と人をつなぐプラットフォームへと、その位置付けを変えようとしていることは、少し前から噂になっていた。NHN Japanが、ソーシャルゲームベンダーに対し、新しいソーシャルプラットフォームでのゲーム開発参画を呼びかけたり、芸能人などの「公式アカウント」を創設したりしていたからだ。その新しい枠組みと同社の取り組みが、LINEのカンファレンス「Hello, Friends In Tokyo 2012」で明らかにされた

 ソーシャルゲーム流行の最中、新たなモバイルゲームの枠組みに自分たちも参戦しようと、GREEやMobage、mixiといった既存のソーシャルプラットフォームに対し、集客力や課金システムとの連動性など得意分野を持つ企業が、新たなプラットフォーマーを目指している。NTTドコモの参入はすでに伝えられているが、そのほかにもウェブマネー、Amazon.comなどが、日本でソーシャルプラットフォームを構築する準備を進めているようだ。

 しかし、これらのソーシャルプラットフォーマー(あるいはその予備軍)と、NHN JapanがLINEでやろうとしていることは、かなり異なるように思う。LINEの構築しようとしているモデルは、ドコモの「iモード」が生み出した“ケータイビジネスモデル”そのものだ。

 かなり乱暴に簡素化して、NHN Japanの発表内容を俯瞰すると「(ケータイモデル+スマホ的大画面タッチパネル)×オープンネットワーク = LINEプラットフォーム」という図式に見えてくる。

ケータイの仕組みをスマートフォンに

 2000年代、先進的と言われた日本のケータイ文化を支えていたさまざまなサービス、コンテンツは、あれよあれよという間に衰退しようとしている。これは「着うた」の売上が2009年をピークに下がり始めた頃から、誰もがそうなると見守ってきたことだし、ソーシャルゲームベンダーが、ケータイ的紙芝居風ゲームからiOS/AndroidのネイティブアプリやHTML5ベースのゲームへと移行しようとしていることからも分かるだろう。

 まだゲームや音楽など、動く金額が多いコンテンツならば、時期を見て業界全体で一気に移行することを試みることもできるが、ケータイのエコシステムに頼ってきた比較的小規模な各種サービス(占い、情報通知サービス、壁紙配信、ファンクラブサービスなど)は、ケータイからスマートフォンに移行しようにも、新たにサービスモデルを構築できずに困っているケースが多い。独自にアプリを作ったからといって、そうそう簡単にユーザーを集めることはできないからだ。

 ケータイのシステムは、iモード、EZweb、Yahoo!ケータイ、なんでもいいが、これら“ケータイサービスプラットフォーム”という、アドレス帳で緩やかに統合されたソーシャルプラットフォーム(と、以前はそのようには認識されていなかったが)を活用。コンテンツパートナーと消費者を結ぶ仕組みとも言える。

 NHN Japanが明らかにしたLINEのプラットフォーム化プランを俯瞰すると、こうしたケータイが持っていた機能を、“スマートフォンとソーシャルネットワーク”をキーワードに、ゼロベースから事業を構築し直した、いわば「刷新型ケータイエコシステム」のように見える。

 当初よりスマートフォンを主端末と見据え、電話番号とIDを紐付けた上で無料通話+メッセンジャー(チャット)ソフトとして始めたのも、あるいはケータイビジネスのスマートフォンへの“エクスポート”が目的だったのだろうか。

 筆者の周りを見ると、LINEは女性若年層から主婦層の利用者が多く、キャリアメールで知人とチャット的にメッセージを交換していた人たちが、こぞってLINEを使うようになっている。地域ごとに温度差はあるだろうが、グループ間の連絡方法が変化してきていると感じている。

 さて、それはともかく、1年で4500万(国内2000万)ユーザーが利用し、1日10億メッセージが交換されるLINEは、LINE CHANNELを通じて多様なアプリケーションがLINEに集まり、メッセージを交わすソーシャルネットワークと連動しながら動くようになった。基礎となるコミュニケーションインフラが強固で、実生活と強く結びついた電話番号つながりのソーシャルグラフが、ゲームや音楽、オーディオブックといったアプリケーションへと接続されようとしている。

PhotoPhoto LINEは全世界で4500万ユーザー、日本国内でも2000万ユーザーを擁するプラットフォームに成長した。2012年3月時点の数字だが、国内のスマートフォンユーザーの44%にリーチできるという
Photo LINEはコミュニケーションだけでなく、チャンネル、ホーム、タイムラインといった要素も追加し、ソーシャルプラットフォームへ

 こうしたケータイモデルの現代版インフラに加え、LINEはテキストや写真/動画、位置情報で自分の近況を投稿できる「ホーム」、LINEでつながっている友人の近況を確認できる「タイムライン」といったソーシャルネットワークの代表的な概念までを取り込んできた。ケータイの仕組みがスマートフォン時代に失われるか?と思っていたが、もしこのままLINEが成長するならば、その仕組み、コンセプトを引き継ぐことになるだろう。

 LINEを通じて、さまざまなコンテンツ/サービスへの出会いが演出されていけば、リアルソーシャルグラフを基礎にした緩やかなつながりのネットワークでありながら、同じくリアルソーシャルグラフをベースとするFacebookを超える、ユーザー1人あたりの経済波及効果を見込めるかもしれない。

リアルグラフ? バーチャルグラフ?

 一方、一連のプレゼンテーションを通じて、もう1つiモードとの類似性を感じた部分がある。それはサービスの「公正性」を前面に押し出している点だ。これまでNHN Japanは、電話帳情報の利用に関するポリシー変更や、LINE IDを用いた出会い系サービスへの対応、それに今回発表されたソーシャルゲーム対応などの時にも、慎重に言葉を選んで公正さを訴えている。

Photo LINEはバーチャルグラフよりもリアルグラフを重視する

 「リアルグラフの信頼感のあるソーシャルネットワークだから」というフレーズも、そうした“公正さ”を強調したい意図があるのではないだろうか。またLINEが今後もクローズドなソーシャルネットワークであり続け、他サービスとのソーシャルグラフ接続は行わないとのコメントもあった。

 もちろん、そう努めている側面はあるのだろうが、本気で出会いなどの要素を撲滅しようとすればコミュニティの自由度は下がり、空気も一変してしまうだろう。“コミュニケーションインフラの自由度の高さを活用したユーザー側の創意工夫”が、LINE急拡大の一助となった面も否定はできないし、それを禁止してしまうような仕様変更もできないだろう。

 LINEのIDは電話番号に紐付いているが、電話番号を知らなくとも、チャットなり音声なりでコンタクトできる。表向きはリアルグラフのLINEだが、それとは別にバーチャルなコミュニティが、LINEを中心に生まれるのは必然だろう。

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