IFA 2012で感じた、スマートフォンにまつわる2つの“意外”本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2012年09月11日 12時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 8月31日から9月5日までドイツ・ベルリンで開催されていた、世界最大のエレクトロニクスショー、「IFA 2012」の取材を終えて、現在は米国・サンフランシスコに滞在している。このところスマートフォンに対しても力を入れている、Intelが主催する開発者向け会議「Intel Developers Forum」が9月11日から13日まで開催されるからだ。

 さて、今年も多くの新製品が並んだIFA 2012だが、会期を通して2つ、意外に感じたことがある。それはSamsung電子の意外なほどアッサリとしたスマートフォン関係の製品ラインアップと、各所で「Windows Phone 8」への注目が上がっていたこと。大手メディアやアナリストの分析による前評判では、Windows Phone 8はリリース前から落第生のような扱いだが、メーカーの話を聞いていると、まんざらでもないと思えてくる。Androidへの投資を行ってきた機器メーカーの中には、投資先の選択を見誤った(Androidへの投資は誤りだった)という声も聞こえてきた。

新たな提案を盛り込めなかった? Samsungのスマートデバイス

 スマートフォンの世界で、少なくとも台数シェアの面でナンバーワンになったSamsungは、この分野におけるリーダーだ。Appleに似た外見やパッケージ、イメージ戦略を採り、他社が取り組んだ後を追ってくれば、市場開拓というコストと時間のかかる作業に取り組むことなく、ひたすら製品の性能を改善することができた。

 実際、Samsungの作るAndroid端末は高性能で機能的にもこなれたものになってきている。Android端末の性能を磨き上げるという意味では、Samsungがトップメーカーであるとも感じている。2011年はスマートフォンとタブレットの間を埋める5インチクラスの市場を開拓するため、オリジナルのソフトウェアを組み込んで“Note”というコンセプトも作った。

 そういう意味では、Androidの枠内で新たな提案をできることを示したとも言える。しかし、IFAでのSamsungの展示では、Noteのコンセプトを10インチタブレットに広げた程度で、新たな挑戦、業界全体を引っ張るリーダーシップのようなものは感じられなかった。

 世の中のトレンドをキャッチアップすることに集中してきた彼らだが、いざトップに立って行き場を失ったのだろうか。新しいトレンドを発見するやいなや、開発パワーをかけてより良いものへと昇華させ、市場での存在感を勝ち取る力はあるだけに、今後は業界の進む方向を示すリーダーシップを発揮してほしい。なにしろ、Androidスマートフォンで利益を出せているメーカーはSamsungだけなのだ。

 無論、Samsungだけにすべての責任を押しつけるのは適切ではないだろうが、今回のIFAで一番残念だったのが、Samsungのスマートデバイスのラインアップだったというのが偽らざる感想だ。2013年1月に米国で開催されるInternational CESでは、新機軸が打ち出されるだろうか。

低評価のWindows Phone 8だが……

Photo SamsungがIFA 2012に合わせて発表したWindows Phone 8搭載スマートフォン「Samsung ATIV S」

 そのSamsungの発表で、もっとも驚きと意外性をもって受け止められたのは、Androidを採用するGalaxyシリーズではなく、Windows RTおよびWindows Phone 8を採用する「ATIV」ブランドである。なぜなら、Windows Phone 8を搭載したATIV Sの発表があったからだ。

 ご存じのように、MicrosoftはWindows Phoneに関してNokiaと戦略的なパートナーシップを結んでいる。Windows Phone 8は9月5日、米ニューヨークにて、MicrosoftとNokiaが共同で正式なローンチを行うことになっていた(実際、5日には「Lumia 920」「Lumia 820」が発表された)。ATIV Sは発表直後、すぐに奥へと引っ込められ、ごく一部の記者しか実物を撮影できなかった(実際に触れた人はさらに少ない)ことなどもあり、IFAでのお披露目はSamsungの独断による強行ではないかとの意見がIFAのプレスルームでは支配的だった。

PhotoPhoto Windows Phone 8の正式ローンチは9月5日のNokiaとMicrosoftのイベントのタイミングだったはずだが、一足早くIFA 2012でSamsungのATIV Sが披露された。展示会場で実機を見た人は非常に少ない

 SamsungはAppleの特許裁判で巨額の賠償金支払い義務が発生する可能性が高まっているが、その内容にはSamsungオリジナルのデザインや機能に加え、Androidに組み込まれている基本的なユーザーインタフェース(UI)も含まれている。

 Samsungとしては、現在好調なAndroid搭載のGalaxyシリーズでAppleとの訴訟を戦いつつ、一方でAndroid以外のOSにも立ち位置を確保したい狙いがあるのではないだろうか。IFAが開催されたのはAppleのSamsungに対する訴えが米国で認められ、巨額の損害賠償金の支払いを命じる判決が出た直後のことだ。Android搭載主力機の防衛戦を戦いつつ、Windows PhoneにおけるNokiaの立ち位置を奪い取って退路を確保したい、なんて都合の良いことを考えているのかもしれない。この1〜2年、Winodws 8向けの端末開発協力でMicrosoftと急接近したSamsungならば、あり得ない話ではない。

 この裁判は、もともとはかなり違っていたAndroidのUIを、意図してiPhoneに近づけたり、アイコンデザインを真似てみたり、あるいは外観やパッケージデザインをそっくりにしたり、ホームボタンの機能を変えてみたりと、徹底したモノマネをしたSamsungに対する裁判ではあるが、同時にAndroid自身を排除しよう、というAppleの動きでもある。2011年のHTCに対するAppleのUI特許訴訟など、Android採用スマートフォンベンダーの中でも、特に“出る杭が打たれる”状態に思える。

 一方でAppleはMicrosoftとは友好的な関係を築きたいと考えているようだ。アナリストには不評のWindows Phone 8だが、AppleとGoogleの対立と、AppleとMicrosoftの接近の2つが組み合わされることで、Microsoftにとって有利な状況が生まれるかもしれない。

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