IFA 2012で感じた、スマートフォンにまつわる2つの“意外”:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2012年09月11日 12時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
前のページへ 1|2       

訴訟問題をクリアできるWindows Phone 8

 先日ロイターが「Appleが、Microsoftにデザイン特許の使用許諾を付与」と伝えたように、AppleはMicrosoftと特許に関しての協力関係を強めている。このニュースではデザインに関する部分のみが語られているが、これまでにもAppleがMicrosoftの作るスマートフォン用OSに対し、何ら批判をしていないことを考えても、Windows Phoneが“Apple特許に対してクリーン”な状態であると考えられる。

 また、Androidにはセキュリティ上の問題もある。不正なアプリが、他のプラットフォームと比べて蔓延しやすいGoogleのエコシステムも問題だが、AndroidはJavaによく似たバイトコードでのプログラム実装というスタイルを採用しながら、保護された領域でプログラムを実行させる“サンドボックス”としての十分な機能を果たせていないことなど、企業ユースでの問題点もある。

 例えば、Microsoftにスマートフォン1台あたり数ドルの特許料を支払う義務を負っているHTCは、AndroidのエコシステムにとどまるよりもWindows Phoneを採用する方が望ましいと考えているのではないだろうか。

 もちろん、Windows Phone 8にも問題がないわけではない。企業ユースにマッチしていることは間違いないが、コンシューマー向けにはアプリケーションが少なすぎるとの声はいぜんとしてある。また、企業向けアプリケーションなどB2Bアプリケーションの開発者には、Microsoftのツールに慣れたエンジニアが多いが、スマートフォン、モバイル向けのアプリケーション開発においては事情が異なるという意見も多い。

 ただ、Microsoftがそもそも開発ツールとOSの会社であり、本質的に“パートナーに対して価値を提供する”ことで成長してきた会社であることは忘れてはならない。パートナーを必要とせず、自社の持つサービスフレームワークにあらゆる要素を取り込むGoogleよりも、協業する上で付き合いやすい会社だからだ。

 こうした話題を念頭に取材しながら、IFAで話を聞いた各メーカーのトップや幹部に対して、これまでのAndroidへの投資結果に関して、現在どのような評価をしているかを尋ねてみた。

 あるメーカー幹部は「Androidへの投資の影響は多岐にわたっている。さまざまな製品がAndroid機との連動を想定した製品の実装になっており、連動させるネットワークサービスもAndroidのアプリケーションと同時開発をしている例が多い。未発表の製品も含めるとAndroidへの依存度はかなり高い」と話した。

 その一方でAndroidへの投資に関して「だまされたという表現は正しくないだろうが、Androidは当初言われていたほど開放的で平等なプラットフォームではなく、すでにアプリケーション領域まで踏み込んだものになってきている。こういう状況になるなら……ということを今から言ってもしかたがないのだが、思うところはある」との声も聞かれた。

 このような話は1社だけから聞こえるものではない。ここに来て、さらにAndroid搭載スマートフォンに訴訟リスクが付いて来るとなれば、「Googleにだまされた」「自分たちはやらない方がよかった」といった、“結果論”としか言いようのない言葉が出てくるのも無理からぬことだろう。

 そうは言っても、各社がAndroidに本格的な投資を始めた時期に、代替となるOSが存在しなかったことも事実だ。Windows Phoneは前身とも言えるWindows Mobile 6.xとは全く別のものだ。ポータブルオーディオプレーヤー「Zune」向けのソフトウェアを基本として発展し、B2BもカバーするちゃんとしたOSとして再設計されたのは、2010年にリリースされたWindows Phone 7からである。当時の判断としてはAndroid以外に選択肢はなかったのだから、結果論でしかない。


 ここに来てWindows Phone 8に対する評価は二分されるようになってきた。従来通り、「Microsoftがこの領域で成功することは難しい」という意見(これまでMicrosoftはモバイル向けOSで成功したことが一度もない)がある一方、「漁夫の利を得てパートナーとの信頼を獲得するのではないか?」という見方も生まれている。Windows Phone 7.5以降、OSの質が大幅に高まっていることを考えると、新たなイノベーションを引き起こす鍵にはならないにしても、BlackBerryの後を引き継ぎ、Androidスマートフォン市場の一部を切り崩すことはできるように思う。

 さらに踏み込んで“邪推”するなら、そもそもAppleはMicrosoftと手を握ることで、対Androidへの圧力を強めているのではないかと見ることもできるだろう。ちまたでは、あまり売れるとみられていないWindows Phone 8であるが、この状況でうまく立ち回ることができれば、現状を一変させることになるかもしれない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月27日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
  3. 「iPhone Duo」画面不具合の報告がSNSで話題 店頭デモ機の過酷な使用環境が起因か (2026年10月26日)
  4. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  5. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  6. KDDI、子会社モビコムのモンゴルでの火災について事実関係を公表 「法令違反行為を行っていない」 (2026年10月24日)
  7. 20〜30代限定の「ダイナースクラブ ゴールド」登場 スタバやスマホで10倍還元、「食べログプレミアム」が実質無料 (2026年10月26日)
  8. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
  9. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  10. iFixitが「iPhone Duo」を分解 折りたたみスマホで最も修理しやすいが内側画面の修理に課題 (2026年10月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー