GPU Boost 2.0の挙動を確かめるイマドキのイタモノ(2/2 ページ)

» 2013年03月28日 17時30分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]
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確かに効いているGPU Boost 2.0の効果

 今回GPU Boost 2.0の挙動検証に用いたのは、GeForce GTX TITANのリファレンスデザイングラフィックスカードと、Palitの「GeForce GTX 680 JETSTREAM」(グラフィックスメモリはGDDR5の2048Mバイト)だ。GeForce GTX 680 JETSTREAMはBase Clockを1084MHz、Boost Clockを1050MHzに設定したオーバークロックモデルで、この検証ではその設定のまま測定している。Palitは、DrMOSの採用をGeForce GTX 680 JETSTREAMの特徴に挙げているが、基本的にはリファレンスデザインに準拠した基板だ。ただ、クーラーユニットは3連ファンを採用した冷却性能の高いオリジナルモデルだ。

検証用システムの主な構成
CPU Core i7-3770K(3.5GHz、Turbo Boost Technology有効時最大3.9GHz)
マザーボード GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Express)
システムメモリ CFD Elixer W3U1600HQ-4G 4Gバイト×2枚
SSD OCZ Vector 128GB
電源ユニット Seasonic SS-1000XP(1000ワット、80PLUS Platinum)

 測定データは、3DMarkを、Ice Storm→Cloud Gate→Fire Strikeと実行したときにGPU-Zで取得したセンサー情報のログを用いている。途中、デモの再生処理も行っているため実行時間が長く、GPUも十分温まるシチュエーションだ。

3DMarkを実行した場合の動作クロック時系列変化

 動作クロックの時系列変化は、GeForce GTX 680が高い値で推移しているが、GeForce GTX TITANも、1000MHzあたりで動作していることを示している。最大クロックはGeForce GTX TITANが1006MHz、GeForce GTX 680が1175.8MHzとなった。GeForce GTX TITANのスペックで、836MHzというのは、2013年第1四半期時点のハイエンドGPUとしては低いように思ってしまうが、動作クロックの時系列変化では遜色なく動作している。

 Base Clockクロックの50パーセント以下をアイドル時とみなして測定データから無視し、それ以上のクロックで動作した部分を抽出した上で、平均の動作クロックを算出してみると、GeForce GTX TITANが平均980.7MHz、GeForce GTX 680が平均1160.7MHzとなった。製品の公式スペックから比較すると、GeForce GTX TITANは、Boostクロックの876MHzに対し100MHz以上高い値だ。一方でGeForce GTX 680カードは、Boostクロックよりわずかに10MHz少々高いクロックにとどまっている。これを見る限り、確かにGeForce GTX TITANはGPU Boost 2.0の導入で平均的な動作クロックを引き上げたといえるだろう。

3DMarkを実行した場合の動作クロック時系列相対変化

 動作クロックだけで見ても分かりづらいので、最低クロックを0、最大クロックを100とした相対値を比較してみよう。Boostの効き具合のほかにも、GPU Boost 2.0のクロックアップ傾向が把握しやすくなる。

 GeForce GTX 680は、測定開始7秒後にはほぼ100パーセント近く(1162.7MHz)まで一気に上がり、そこから3D実行中(Ice Stormのデモ)の間は変動しなかったのに対し、GeForce GTX TITANは、スタート後35秒あたりまでしばらく約75パーセント(Base Clock)のまま推移し、そこから約95パーセント(900MHz台)に上がってから、60秒後に100パーセント(1006MHz)に達した。

 ほかにも、GeForce GTX 680が最低クロックまで下がった場所で高い動作クロックを保っていたり、一方でGeForce GTX 680が高い動作クロックのまま推移している部分でGeForce GTX TITANは最低クロックまで下がったりと、いくつか挙動の異なる部分が確認できる。

3DMarkを実行した場合のGPU温度時系列相対変化(写真=左)。3DMarkを実行した場合の駆動電圧時系列相対変化(写真=右)

 GPU温度とGPU電圧の時系列変化測定では、それぞれのグラフィックスカードが搭載する冷却機構や駆動電圧の設定が異なるため、こちらも、それぞれの最小値を0、最大値を100として相対値で比較している。GPU温度の時系列相対変化では、GeForce GTX 680が、スパイクのように、急な角度で温度が上昇、下降するのに対し、GeForce GTX TITANはゆるやかに上昇、下降している。GPUの駆動電圧時系列相対変化では、GeForce GTX TITANはテスト開始からしばらくは比較的低い値を保ちつつ、205秒後や340秒後、530秒後に、より積極的に引き下げている(一方で75秒後のようになぜかGeForce GTX 680より落ちなかったケースもあるが)。なお、GeForce GTX 680がオーバークロックモデルであるため、多少メーカーによる設定が入っている可能性もあるが、GeForce GTX TITANの方がの駆動電圧は、最低値、最大値ともにGeForce GTX 680より低かった。具体的には、GeForce GTX TITANの最小駆動電圧が0.875ボルト、最大駆動電圧が1.162ボルトであったのに対し、GeForce GTX 680は最小で0.987ボルト、最大で1.175ボルトだった。

GeForce GTX TITANはBoostクロック以上のクロックが“出やすい”

 GeForce GTX TITANのGPU Boost 2.0では、確かにBoost状態で動作クロックの平均値が上がっていた。シェーダユニットの数が増え、ROPsも増え、グラフィックスメモリのバス幅も増え、といったスペックの向上に加えて、GPU Boost 2.0の導入によってもパフォーマンスを引き上げたというNVIDIAの主張は理解できる。

 一方で、カタログスペックで示しているBoost Clockより高い動作クロックで推移するため、Boost Clockで示す値が意味をなさないと考えることもできる。これは、Base Clockとして示す値も同じだ。Base Clockが836MHz、Boost Clockが876MHzとなっていても、実際はGHz級で動作していることになる。

 なお、今回の評価作業において測定したGPUの最高温度は80度だった。EVGAのPRECISIONツールで確認すると、確かに上限を80度に設定している。現在、リファレンスデザインに準拠したモデルがほとんどのGeForce GTX TITAN搭載だが、冷却性能を強化したオリジナルクーラーユニット搭載モデルが登場した場合は、示す動作クロックが同じでも、Boostが効いて実際の動作クロックは高いことも考えられるだろう。

EVGA PRECISIONで確認したGeForce GTX TITANリファレンスデザイン準拠のグラフィックスカード

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