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Windows 10スマホでPC向けx86アプリが動くようになる?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

» 2016年12月03日 06時00分 公開
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実現の可能性は?

 技術的には非常に面白いが、実際にどこまで実用的で、本当にRS3のタイミングで搭載されるかはまだ判断しかねると筆者は考える。

 もともと「Windows RT」を別途用意してARM用のバイナリをx86用と区分けしたのは、最初の製品である「Surface RT」が登場した2012年前後の時期のARM SoCはまだ非力で、当時x86向けWindowsと同じ感覚でアプリを動作させようと思っても厳しいから、という背景があった。

 当然ながら、x86からARMへのバイナリ変換機構の搭載も厳しく、少なくともARM版Windowsを用意した本来の目的である「省電力動作」の実現においては邪魔な機能であり、開発当初から搭載は想定していなかったものと思う。

 時は流れ、ARMもv8アーキテクチャの時代になり、プロセッサ自体の処理能力が向上し、64bitアーキテクチャ採用によって、4GBの壁というメモリ問題も解決した(ARMアーキテクチャではI/O処理用のインタフェースをメインメモリにマッピングしているため、実際に使えるメモリ空間は4GBより少ない)。このようにエミュレーション機能を実装する素地はできつつある。

 一方、もし現状で「Windows on ARM」の中心的存在であるWindows 10 Mobileにこのエミュレーション技術を搭載したとして、果たしてどのようなメリットがあるのだろうか。

 エミュレーション動作自体パフォーマンスが必要な仕組みであり、モバイル用途での恒常的な利用にはあまり向いていない。ゲームのようなプロセッサに負荷をかける用途はなおのことだ。主なターゲットといわれる「(企業が保有する)既存のx86アプリ資産」をエミュレーションで動作させた場合、そもそもモバイル利用を想定した作りにはなっていないアプリという問題がある。

 既存のx86アプリをUWP(Universal Windows Platform)の配信形式に自動変換するツール「Desktop App Converter(Project Centennial)」を使ってUWPアプリへの変換を行っても、最適化が行われていない関係から(バッテリー駆動時間やユーザーインタフェースの検証など)、さまざまな面でモバイル用途での利用に向いていない。

 以上の問題から、このエミュレーション技術は恐らく、オフィス内にWindows 10 Mobile搭載機を設置してContinuumで利用することが最低要件になると予想される。

Continuum ARM64のx86エミュレーションは、Continuumで利用することが最低要件になると予想される

 筆者が疑問とするのは、「果たして、これが本当にユーザーに求められている仕組みなのか」という点だ。

 現在の企業ユーザーにおけるクライアントデバイスの利用状況を鑑みれば、PCはWindows、モバイル用途ではタブレットがWindowsまたはiPad、スマートフォンはAndroidまたはiPhoneが主な分布になっていると考える。

 モバイルとPCでプラットフォームが完全に分離している状況であり、Microsoft自身もモバイル向けアプリには必ずAndroidまたはiOSのサポートを含むよう心掛けている。Xamarinのようなクロスプラットフォームの開発ツールが存在するのも、この市場状況を反映した結果だ。

 一方で、前述のように既存資産を使い続けたいというニーズは少なからずあり、それがエミュレーション技術の登場に寄与していると考えられる。

 ただ、現状で組み込み用途を除けば、ARM版WindowsというのはほぼWindows 10 Mobileのことであり、これを導入するような比較的先進的な企業ユーザーがそこまでして既存のアプリ資産にこだわるだろうか。少なくとも現状でMicrosoft純正アプリが大部分を占めるWindows 10 Mobileを導入し、これで業務がまわっているのであれば、必要性は薄いと筆者は考える。

 このエミュレーション技術の導入が新規ユーザー獲得のきっかけになるという見方もあるかもしれないが、恐らく同技術そのものがキラー機能となる可能性は低く、むしろデバイスそのものの魅力や周辺環境の整備など、より総合的な訴求力が求められるのではないか、と考えている。

 興味深い技術ではあるものの、過度な期待はせずに、Microsoftがこれをどのようなユーザー層にいかに訴求していくのかに注目していきたい。


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