今回のOctober 2018 Update配信直後のトラブルでは2つの大きなポイントがある。1つは、事前検証の要となるWindows Insider Programを有効活用できず、結果としてテスト不足の大型アップデートを一般配信してしまったこと。もう1つは、年2回の大型アップデートそのものの存在意義だ。
October 2018 Updateでは、正式リリース前にRelease Preview向けビルド(製品版同様のビルドを一般ユーザー向け配信より前にテストする目的のビルド)が配信されなかった。また、度々指摘していることだが、最近ではWindows Insider ProgramのSlow Ringへの配信ペースが極端に落ちており、本来であれば直前の検証が目的となるRelease Previewと同程度の扱いになっていた。
その反省によるものか、10月16日以降は機能の検証と頻繁なアップデートの役割をFast Ringに与え、事前検証のためにSlow RingとRelease Previewに現行版の差分となる対策アップデートを配信するなど、Windows Insider Program本来の役割分担が復活しつつある。
同時に、Windows Insider Programの利用者は、Microsoftへのフィードバック機能である「Feedback Hub」を利用した意見の反映がなかなか行われないという不満も抱えているようだ。特に今回のファイル消滅バグについては3カ月前から度々同所での報告があったにもかかわらず、結局フィードバックがないまま、大型アップデートとして正式にリリースされてしまった。
Microsoftが「フィードバックが重要」とWindows Insider Programの利用者に広く意見を求めているにもかかわらず、これらが適切に反映されていないという不満の声は各所から挙がっており、前述の配信チャネルが有名無実化していたのと同様、そろそろ根本的に見直す段階に達しているのではないだろうか。
前述の問題を報告した公式ブログの記事では、「重大なインシデントにつながる情報については、ピックアップされやすいようWindows Insider Feedback Hubに変更を加えた」と説明しているが、これで改善されることを期待したい。
Windows Insider Programの利用者から、Windows 10の問題や改善点についてMicrosoftにフィードバックできる「Feedback Hub」。Microsoft Storeのアプリとして配信しているMicrosoftはWindows 10のリリースとともに「Windows as a Service(WaaS)」構想を掲げ、ユーザーには常に最新のOS環境で作業できることをアピールしてきた。これはAndroidやiOSなどのモバイルOSが毎年大型アップデートを行い、ユーザーに新機能を提供し続けていることに影響を受けたものと考えられるが、同時にセキュリティ対策などトレンドの移り変わりの激しい状況に対応するためにも、同社が推し進めるべきと判断したからだろう。
当初は不定期で、配信タイミングも「年1〜3回」と流動的だったWindows 10の大型アップデートだが、後に「Semi Annual Channel(SAC)」の名称で年2回(3月ごろ、9月ごろ)に配信時期を固定した。これも、主に企業向けに「アップデート計画が事前に立てられる」ことを目標にしたものだ。また、大規模なシステムを抱える大企業にとっては年2回の大型アップデートにかかる負担が大きいため、同時に「18カ月ルール」を設定して「少なくとも年1回」の更新で済むようにした。
しかし、後に一部企業の要望を受ける形で「24カ月」「30カ月」とルールを度々変更しており、WaaSは逆に複雑化している印象を受ける。
ちなみに、今回のOctober 2018 Updateこと「Windows 10(1809)」は、特定用途向けに10年間の継続利用を保証する「Long Term Servicing Channel(LTSC)」の最新版にあたる「LTSC 2019」としてもリリースされるものだ。安定性を第一にするアップデートが信頼面で配信できなくなったというのは、決していい状況ではない。
スケジュール最優先で動いている現在のWindows OS開発だが、テスト期間をきちんと設けて品質をある程度高めることは重要だ。実際、ファイル消失の不具合対策を進めている最中である10月下旬にも、ZIPファイルの解凍に関する新たなファイル消失バグが報告されている。このバグは、Windows 10のファイルエクスプローラ上でZIPファイルを解凍した場合、同名のファイルが存在するときにユーザーへの警告なしで上書きしてしまうというものだ。
また、Microsoftが被害状況を過小評価する傾向も気になる。例えば、今回問題となったファイル消失バグも「非常に少ない数(a very small number)」と前置きしているように、「多くのユーザーには影響ありません」と述べている。
とはいえ、被害を受けたユーザーにとっては規模の大小は関係なく、「明日は我が身」という言葉もある。Microsoftとしては、あらゆるユーザーやニーズをカバーするWindowsという巨大な製品を抱え、これを維持していく難しさはあるが、いまいちどWindows 10が目指す方向性とその道のりについて見直してほしいものだ。
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