接続料が安くなると、通話料も安くなるのか──ドコモ、接続ルールの見直しに関する説明会(2/2 ページ)

» 2009年03月12日 11時30分 公開
[園部修,ITmedia]
前のページへ 1|2       

接続料とユーザー料金は「別物」

 古川氏は、接続料は電気通信事業法に基づいて、通信に関する原価を算定するものであり、これからもネットワークの設備効率向上などのコスト削減努力を重ね、水準を下げていくことを明言した。

 一方で「ユーザーに課す実際の料金は、お客様のニーズや競争環境、経営状況などによって下げていくもの。接続料が安くなれば、コストが下がるのでユーザー料金(通話料)の値下げにつながる可能性はあるが、基本的にユーザー料金は接続料と連動して上がったり下がったりするものではない。むしろ接続料が下がらなくても、ユーザー料金は競争条件に合わせて下げている」と話し、今回の接続料の引き下げが直接的にユーザーに対してのメリットになるかどうかは分からないとの考えを示した。

 ドコモでは、前年度の実績をベースにして、毎年3月に接続料の見直しを行っている。算定の根拠は電気通信事業費用やトラフィックなどになる。だがユーザーの通話料については、他社の料金やニーズなどに応じて随時改訂を行う。2008年度の4月から12月の間だけでも、約2800億円分の料金の低廉化を図っており、ユーザーに使いやすい料金体系作りや、さらなる料金の引き下げに努めているという。

Photo 2003年度を100としたときの、1分あたりの通話料と1パケットあたりの通信料の変化をグラフにしたもの。接続料はこの間2割ほど下落しているが、通話料は3割以上下がっている

「日本の携帯電話料金は高くない」

 ことあるごとにやり玉に挙げられ、「世界と比べて高い」とされることが多い日本の携帯電話料金についても、ドコモは総務省の内外価格差に関する調査などを引用し、音声のみの平均的な利用分散による比較では、月額は「低廉」で1分あたりの料金も「平均的」な水準であることから、決して高くはないという見解を示した。「1分あたりの料金が割安なニューヨーク(米国)やソウル(韓国)と比べても、為替レートではなく購買力平価で比較すると格差は縮小する。家族内通話無料といった施策を導入したので、そうした低廉化により、さらに差は縮小していると思う」(古川氏)

 パケット通信を用いたインターネットアクセスやメールの利用も含め、個々の利用モデルで比較した場合でも、東京(日本)の料金は低廉から平均的な水準であることを強調。「諸外国と比較してべらぼうに高いというのは事実に反する」と古川氏は言う。

Photo 日本国内の通話料金は、諸外国と比較しても決して高くないとドコモは言う。上のグラフは総務省の「平成19年度 電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査」からまとめたもの

ローミングは新規参入事業者に限定した時限措置とすべき

 このほか古川氏は、情報通信審議会で議論が進められているローミングのルール化についても説明した。ローミングは、既存事業者への提供は強いられるべきではなく、新規参入事業者を対象とした時限措置とすべき、との考えだ。

 「そもそも通信事業者は周波数の割り当てを受けており、自ら設備を構築して事業を行うのが原則。ルール化すること自体は否定しないが、自らの設備構築責任は大前提となる。エリアは競争を左右する最重要ファクターだ。カバーできないエリアはローミングで解決すればいい、という状態になると、投資インセンティブや健全な設備競争が維持されなくなる恐れもある。ただ新規参入事業者は、エリア展開にハンデを負っているため、一定期間のローミングを行うことには合理性がある。期間は、(新規事業者に対し)開設認定から5年間で50%のエリアカバーが義務づけられていることもかんがみ、それが達成できるまでの期間とするべきだろう」(古川氏)

 また、設備を提供することには、提供主体にもそれなりにメリットが生じるものにすべきとの意見も展開。特に、ローミングを要望されるのは高コストなルーラル(郊外)エリアが中心になるため、接続料を支払うというレベルではなく、それなりにコストを反映した形で設定する必要があることを主張した。ローミングを提供する事業者も、「ドコモだけで応じなくてはいけない必然性はない」と古川氏。「すべての既存事業者が一定の援助をすべき」だと話した。

 先般、ソフトバンクモバイルがイー・モバイルからネットワークを借りて定額のデータ通信サービスを提供することについては、「MNO同士のMVNOはいかがなものか」との考えだ。ただ、ウィルコムに対してドコモが3Gのネットワークを提供する点については、「PHSが携帯電話市場と同一市場かどうか、という論点がある」と話し、ウィルコムに提供するサービスはデータ通信が主体で、音声が主体の携帯電話とは、それぞれが部分市場を構成するという結論が総務省からも出されていることを紹介した。

 「大きな枠組みでは、同じ移動体通信だが、PHSと携帯電話は法の立て付けも別。役務も別に整備されている。ウィルコムに対するMVNOは、次世代PHS開始までの5年、もしくは人口カバー率50%までの時限措置だ。次世代PHSへの新規参入事業者に対するローミングと見なしている」(古川氏)

Photo 「電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方」に対するドコモのスタンス

 接続料やローミングサービスの提供義務、MVNOへの協力など、携帯電話市場で動きがあるたびに、最大のシェアを持つドコモは矢面に立たされるが、今回の柱である「規制の枠組みは維持し、固定通信と同様の規制を課すのは合理的ではない」「接続料算定の明確化を図るべきで、対象はすべての携帯電話事業者にひろげるべき」「ローミングはあくまでも新規参入事業者を対象とする時限措置であるべき」といった主張は、どれも合理的に聞こえる。他社の主張も踏まえ、情報通信審議会の電気通信事業政策部会と接続政策委員会が、どのような答申をとりまとめるかに注目が集まる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年