ユードーのノウハウを提供します――南雲氏が語る、iOSアプリの作り方と次の一手:ユードー創立10周年から学ぶiOSアプリ開発(2/3 ページ)

» 2013年04月15日 11時58分 公開
[田中聡,ITmedia]

実用最小限の製品を最小限の努力で作る

photo ユードー流のリーンスタートアップ(無駄のない効率的なマネジメント手法)

 ユードーのスタッフは、どのようにアプリのアイデアを生み出しているのだろうか。ある社員には、1日3行の企画を1個ずつ考えるよう命じており、その中で南雲氏の目に留まったものは「なんか面白そうだから、作ってみれば?」となる。南雲氏の場合、何か思いついたら紙のノートにメモを取る。最近は「昔ほどアイデアがガンガン出てこなくなってきた」こともあり、夜中にいろいろな場所で企画を考える習慣をつけているという。「面白いアイデアが浮かぶのは、ドン・キホーテ、東林間、小田原あたり。夜な夜な10代の文化や感情をつかんで企画を考えるけど、青山や渋谷など都内にはなるべく行かないようにしている」(南雲氏)

 また南雲氏は、高視聴率のテレビ番組もアイデアの参考にしているそうだ。「日本中、いろいろな文化の人が見て、面白いと思う高視聴率番組を作るのはスゴイと思う」

 1つのアプリは4人で手がけており、実用最小限の製品を最小限の努力で作る「MVP=Minimum Viable Product」を心がけている。小さく作ればリスクも少ないというわけだ。「アプリを出した後にユーザーが何を求めるかが分からないので、まずは小さいものをリリースして、ユーザーの意見を聞いて早くバージョンアップすればいい。作って考えて仮説を立てることの繰り返し。クリエーターは自分の能力を過信してはいけない」(南雲氏)。アプリの作り込みも最小限に留め、一言で説明できるシンプルなものを目指す。

photophoto 企画では「分かりやすさ」を重視する(写真=左)。1日3行企画を命じられているスタッフも(写真=右)
photophoto 南雲氏はいろいろな場所に行ったり、いろいろな人を観察したりして企画を考える

 社員に規則正しい生活を送ってもらうために、ユードーの就業時間は8〜17時を基本としている。残業をするには「残業申請書」を提出する必要があり、開発の終盤には2時間ほど残業することもある。それでも「20時、21時になると、会社から人がいなくなる」(南雲氏)。クリエーターといったら徹夜で仕事をしている……というイメージがある人には意外に映るかもしれないが、これは南雲氏の「人と会って遊んだり、リアルな情報交換をしたりするのが一番」という考えによるところもある。「大学生とミーティングしてアプリの企画を考えることもある。ユーザーに近い人と友達になることも大事」

 一方で、「どう(コンテンツの)質を高めるのかはユードーの課題」との悩みもある。「みんなBダッシュクラスのアプリは作れるけど、AクラスやトリプルAを目指すには、残業しないといけない。時間内で終えるためにBダッシュでいいや、という弊害はある」(南雲氏)

photophotophoto リアルな生活を送れるよう、就業時間は8〜17時としている

1週間以内で作って5000万円売り上げたアプリ

 ユードーでアプリを新規開発する際は、2タイプのチームが存在するという。南雲氏は1つを「王貞治チーム」、もう1つを「イチローチーム」と呼ぶ。王貞治チームでは1〜3カ月間かけてじっくり開発し、市場分析も行う。結果、生まれたのが「プチリッチ」「テガキモンスター」「ピアノ狂想曲」などのアプリだ。イチローチームの筆頭が南雲氏で、ミーティングも市場分析もせず1週間以内で開発してしまう。「斉藤さん」「ピアノマン」「カラオケパーティ」は、こうした“勢い”で生まれたアプリだ。

 しかし、そんな斉藤さんやピアノマンが、5000万円も売り上げたというのだから特筆に値する。斉藤さんは、ユードーの近くにある飲み屋で、南雲氏とデザインリーダーの2人で「『看護婦さん』というアプリを作ろう。『お巡りさん』や『新幹線の運転手さん』でもいい」と話していたのがきっかけで生まれたという。リリース直後はメディアに少し露出した程度で、大ヒットとまではいかなかった。ところがある日、「斉藤さんがすごいことになっている」と周囲に言われてApp Storeのランキングを見たら、ソーシャルで10位にランクインしていた。当初は大阪の高校生と大学生で流行っていたそうだが、今では「日本の高校生と大学生はみんな斉藤さんを知っているらしい」(南雲氏)というほどまでに浸透した。ただ、「斉藤さんは勢いで作ったので、これで上場するとかダサイよね。これは何もしない方が良いよね」と考え、あまり進化させていない。

 斉藤さんやピアノマンがここまでヒットしたのは、先述した「まずは小さいものを作る」という開発姿勢のたまものでもある。「社員に来月の給料を払うには、入金されないと……と考えると、1円でも多く儲けないといけない。だからアプリで1日100万円売り上げるとかは狙わず、1万円でも5000円でもいいから、“チリツモ(塵も積もれば山となる)”でやっていこうと。1日1万円の売上は1カ月で30万円、1年で360万円。これが10本だと3600万になる。100本なら――。いきなりLINEを超えるものを作るには、ものすごい体力や頭脳が必要。あまり表面化はしていないけど、ご飯を食べられているのはこのパターン(チリツモ)だったりする」(南雲氏)

photophoto ユードーの新規開発チームは2タイプに分けられる(写真=左)。大ヒットした斉藤さんとピアノマン(写真=右)
photophoto 1アプリに大きな投資をするのではなく、コツコツ小さなヒット作を積み重ねていく

 着実に売上を増やしているユードーだが、「今のところ、会社を大きくしようとは思っていない」と南雲氏。「むしろ、社員の収入を上げて、それで豊かで文化的な生活をしてもらいたいと思っている。僕は経営者でもあるけどクリエーターなので、まず成功させることが自分の精神的な欲求を満たす。でも会社を拡大するとなると、営業がいて、営業部長も探さないといけない。そういうモチベーションはない。じゃあ、僕たちが持っているのは営業権や窓口権かもしれないし、それを大手の方に提供すればいいと思っている」

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