連載
» 2001年10月05日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン (54):集合住宅ブロードバンド化問題の深さ 国レベルでのグランドデザインが必要

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 第41回のこのコラムのとおり、私の自宅周辺はすでに光ファイバが張り巡らされ、銅線が残っていないためADSLは利用できない。しかし、これは取りも直さず、一足早く光ファイバを利用した通信を利用できるというわけで……、私は楽しみに待っていたのである。

Bフレッツに申し込んだが……

 取りあえず、NTT東日本のBフレッツサービスが開始されるのを待っていたのだが、私の住居はテスト運用の地域にもなっていなかったし、サービスが開始になってもさっぱり対象地域とならない。周囲にどんどんADSLを導入した家庭が出現して、「いやあ、いいよ、ADSL」といわれると、悔しくて、本当に腹が立ってしようがなかった。

 しかし、とうとうやって来たのである、Bフレッツのサービス対象地区となる日が! 私は胸を躍らせ、早々に116に電話をしてサービスの申し込みを行った。

 「すみません、Bフレッツの申し込みをしたいのですけど!」

 「どうも、ありがとうございます。お客さまのお名前、お電話番号をちょうだいできますか?」

 担当のお姉さんの問い掛けにもにこやかに応答。光ファイバ回線が利用できるとなれば、ADSLを入れている連中なんて目じゃない! ヘヘヘヘ! 私は優越感に浸り切っていた。

  ところが……、

 「お客さま、大変申し訳ありません。お客さまのお住まいは集合住宅でいらっしゃいますね?」

 「はあ……」

 「そうなりますとですね、現時点で申し込みいただけるのはマンションタイプというものでございまして、申し込みは管理人さまからのみ受け付けております」

 「は?  管理人からの受け付けのみ?」

 「ハイ、マンション内で何件か、サービスを利用したいという方があって、管理組合でお話し合いをしていただいて、管理人さまから申し込んでいただくという形になります」

 「あ、あの……マンション内に住む個人は申し込みができないということでしょうか?」

 「現在はそうなります。11月1日以降になりますと、マンション内の個人の方の申し込みも可能になる予定ですが、現時点では受け付けておりませんので……」

 「……分かりました。またにします」

  「ありがとうございます」

 私の優越感は一気にしぼんでいった。これじゃ、磯和さんが第42回に書いておられた、Bフレッツのムラ、そのまんまじゃないか! またしても、NTT東日本の前に私の野望は一蹴されたのである(ちょっと大げさ)。

世の中はブロードバンドを求めていない?

 集合住宅の通信回線というのは、実は私の卑近な例を持ち出すまでもなく、非常に多くの問題を抱えている。本来、もっと議論されてよいテーマだと思うのだが、新聞、雑誌を見ても、あまりこのことを問題として取り上げているものがない。

 第41回の原稿に対して、「ケーブルテレビを使えば、常時接続ができるのではないか」というご意見をいただいたのだが、実はこれも難しい。私の住むマンションではケーブルテレビ敷設のための料金を試算してもらったことが何回かあったのだが、現在、ずいぶん単価が下がったものの、それでも1500万円ほどの費用がかかる。この価格になってくると、1戸当たりの費用負担も数万円に及ぶため、なかなかマンション全体の総意としてケーブルテレビ敷設を実施するのは難しいのだ。

 実際にケーブルテレビ会社の中には、「対象地区にマンションのような集合住宅が多く、工事に多額のコストがかかるため、データ通信ができることをアピールすると、“うちはできないのに”という苦情が多く寄せられるから、一切宣伝は打たない」というところもあるくらいなのだ。また、ケーブルテレビは導入されているもののすでに何年も前であるために、データ通信ケーブルは導入されておらず、「ケーブルテレビで常時接続サービスが利用できると思って入居したのに、実際は利用ができなかった」というケースもあるそうだ。ケーブルテレビを使ったデータ通信は、集合住宅に住む人にとっては必ずしも導入しやすいものだとは限らない。

 そもそも、ケーブルテレビ、ADSLなど手段はともかく、データ通信というものの必要性を強く感じている人ばかりではないことも事実である。

 私の会社BCNの編集部デスクが住むマンションでは、データ通信サービス導入に関する意識調査なるものを実施したそうだが、100戸強の居住者のうち締め切りに返信をしたのは2件だけだったそうだ。弊社デスクいわく、「いやあ、驚いちゃいましたよ。でも、よーく考えると、世間っていうのはこれくらいの認識なのかもしれない。データ通信、データ通信と騒いでいるのは特殊な層なのかも……」。確かにそういう部分もまだ残っているといえそうだ。

e-Japanによる意識の変化に期待

 いま、新しい住宅を借りようとして、不動産屋に出向いて、「データ回線環境はどうなっていますか?」と質問して、即座に答えを出してくれる業者なんてほとんどいないのが実情ではないだろうか?

 確かに不動産業者には難しいにしても、NTTに問い合わせをして、借りようと思っている物件がどんな回線を使えるのか即答してくれたらよいのに……と思いませんか? すでに借りたところなら、116に電話をすれば状況は教えてくれるけれども、できれば借りる前に、回線環境が分かるとありがたい。

 しかし、ちょっと世間の風が変わり始めたと感じるのが、いわゆるe-Japanの影響である。政府主導で大容量インターネット回線の必要性を訴えてくれたおかげで、最近のマンションの広告を見ると、「大容量通信対応」なんて文字が躍っているし、建設会社系のマンション管理会社の中には、居住者向け広報誌の中で、e-Japanとは何か、切々と訴えるページを設けているところもあるそうだ。ちょっと前なら、特別な人しか知らなかった大容量通信だが、国を挙げて騒いでいる効果が出始めたということのようだ(こうなると、e-Japanって結構、ありがたい……と思ったりして)。

 確かに、集合住宅でも、一戸建てと変わりなく大容量通信を楽しめるための環境作りとなると、1社の企業うんぬんではなく、国としてきちんとしたグランドデザインをしたうえで、対策を考えねばならない問題だろう。一戸建てばかりでなく、集合住宅に住んでいる人間のことも忘れないで……ねえ、小泉さん?

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

株式会社コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都下町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


「IT Business フロントライン」バックナンバー

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -