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» 2001年12月21日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン (65):本格的インターネット時代に求められるもの 2001年を振り返って──

[磯和 春美,@IT]

 2001年もあと10日あまりだ。今年のIT業界関連のニュースは、不況や9月の全米同時テロなどに大きく影響され、暗いものが多かった。しかし同時に、昨年までは「未来」の話だったMbpsクラスのブロードバンド環境が家庭にまで普及した。また、Windows XPの発売やFOMAの実用サービス開始など、私たちをとりまくインターネットの環境は激変している。今年のニュースの中でIT業界を象徴すると思われるものをまとめてみた。

普及が一気に進んだブロードバンド・インターネット

 まず、政府がIT戦略本部を設け、「e-Japan」プロジェクトを発表したことは、それまで韓国やマレーシアなど、アジアのIT先進国に比べ、政府の指導力が弱かった日本のIT環境を大きく前進させることに役立った。今年、ブロードバンド普及が進んだ素地は政府が本腰を入れ始めたことがプラスに働いたのだろう。

 しかし、同じくインターネット普及を目指して政府の肝煎で開催された「インパク」は盛り上がらないままだった。100億円を使った大イベントだったが、投入された税金に見合う成果があったとは思えない。

 ブロードバンド普及は、秋のYahoo! BBの参入によって価格競争が激化した。しかし、すべてのADSL事業者に対して、利用者からの不満の声は大きい。いわく「申し込みは受け付けたのに、たらい回しにされる」「マンションだから利用できないと言われた」「サービス内容が最初に説明を受けたものと違う」などなど。新しい技術やサービスの普及時には、こうしたトラブルはつきものだと思うが、それにしても利用者側にこれほどの不満を蓄積させてしまうと、ADSLのブームは一過性のもので終ってしまいかねないのではないかと心配になる。

 米国ではIT関連企業、いわゆる「ドットコム」企業の倒産や買収が相次いだ。日本でもいくつかのドットコム企業がひっそりと市場から退場した。そのなかで、史上最年少経営者の株式公開として注目をあびたクレイフィッシュの経営権をめぐるドタバタ劇は、社会に関わる企業体として成熟していないドットコム企業のひ弱さを露呈したものだったといえるだろう。

ITの負の面が表面化

 ハードウェア業界は、不況と全米テロの影響で大規模なリストラや生産ラインの見直しを余儀なくされた。しかしその中でも驚いたのは、ゲートウェイの日本撤退と、ヒューレット・パッカードとコンパックの合併だ。いずれも米企業の決断だが、日本のIT関連企業とは経営判断もその実行力もスピードもスケールが一回り大きい。

 携帯電話普及が7000万台を越え、iモードのように、携帯電話をインターネットへのアクセス端末として使うこともすっかり当たり前になった。しかし、同時に携帯電話でアクセスする友人/恋人探しのサイト、いわゆる「出会い系」をめぐるトラブルや事件も急増した。殺人事件や詐欺なども起きてイメージダウンになったことは残念だ。迷惑メールをめぐる業者と通信事業者、利用者の攻防は激しさを増し、ついには司法判断も出た。通信事業者はさまざまな対策を取って迷惑メールの締め出しにやっきだが、総務省ではそれでも足りないとばかり、研究会を発足させて法規制も検討する構えだ。

 また、第3世代携帯電話としてFOMAがいよいよ実用サービスを開始したが、早々に動画サービスを利用できる端末が不具合で回収となったり、サービスエリアの狭さからいまひとつ評判はかんばしくない。利用料金が高いこともあり、意外に普及には時間がかかるのかもしれない。

 何度かこのコラムでも取り上げたが、新種のコンピュータ・ウイルスは今年も猛威をふるい、さらにサーバをハッキングしたDDoS攻撃などによる「サイバーテロ」が現実のものになったのも注目だ。インターネットが普及すればするほど、セキュリティの向上やコンピュータ・リテラシーの啓蒙が必要なことを痛感させる出来事が増えた。

来年は「ユビキタス」「光アクセス」がキーワード

 ほかにもあげればキリはないが、こうした出来事を通じて2001年をくくるとすれば「ブロードバンド元年」であり、「インターネット・クライムの激増」であり、「IT企業淘汰」の1年だったといえそうだ。

 ついでに、2002年の業界のキーワードを予測してみる。まず、IPv6がいよいよ本格的に稼動すれば、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる「ユビキタス」の概念が重要になってくるだろう。また「無線LAN」、「第3世代携帯電話サービス」も普及に拍車がかかるのではないだろうか。さらに「光アクセス」も、ブロードバンドの快適さを知った利用者から支持されて伸びるだろう。

 一方、Webサイトでの音楽配信やブロードバンド向け動画配信が利用されるようになれば、違法コピーの問題や、国境を越えたコンテンツ利用に関するルール作りがまず必要になるだろう。インターネットは情報の宝庫だが、その信頼性の検証や、必要な情報を入手するためのスキルについては、まだまだ利用者側が未熟であることが多い。信頼性をどう検証していくか、といったことについては、さまざまなサイトの情報力を評価するような、ちょうど企業の格付けを行うようなサイトが増えていくのではないかと思う。また、検索スキルを身につけることなども、学校教育に取り入れられるべきだと思うがいかがだろうか。

Profile

磯和 春美(いそわ はるみ)

毎日新聞社

1963年生まれ、東京都出身。お茶の水女子大大学院修了、理学修士。毎日新聞社に入社、浦和支局、経済部を経て1998年10月から総合メディア事業局サイバー編集部で電気通信、インターネット、IT関連の取材に携わる。毎日イ ンタラクティブのデジタル・トゥデイに執筆するほか、経済誌、専門誌などにIT関連の寄稿を続けている。

メールアドレスはisowa@mainichi.co.jp


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