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» 2002年02月22日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(71):新型iMacはアップルの未来を拓くか?デジタルハブ実現のためのアライアンスは可能か

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 液晶ディスプレイを採用した新しいiMacの販売が好調だ。当初は1月末発売予定が、2月16日へと発売日がずれ込んだものの、弊社の調査データではすでに予約段階で1月のデスクトップパソコンナンバー1シェアを獲得した。

BCNランキング デスクトップパソコン1月 月次トップ5

  1位   アップル iMac G4-800 SuperDrive M8535J/A

  2位   ソニー VAIO LX PCV-LX53/BP

  3位   富士通 FMV-DESKPOWER FMVCE910L

  4位   富士通 FMV-DESKPOWER FMVCE885L

  5位   ソニー VAIO J PCV-J21ML5


(調査期間:2002年1月1日〜1月31日)

新型iMacに販売店は期待

 iMacは1998年の発売から、色や細かい部位のモデルチェンジはあったが、今回は全く新しいデザインで生まれ変わったといっていいだろう。新型iMacでは、自由に向きを動かせる液晶ディスプレイを採用し、本体部分もパソコンというよりは、米国での報道では「電気スタンド型」とも表現される先進的なデザイン。久々にアップルらしい、新鮮な、これまでのパソコンデザインに一石を投じる製品に仕上がっている。

 さらにデザインばかりでなく、一時に比べ落ち込んでいるiMacのシェアを引き上げることができるのか、アップルのブランド力を占う意味で、今回の新型iMacは重要な製品なのである。

 この新デザインについて、私はやはり米国の報道にあった、「電気スタンドを落としたことがないという人はいない。落とすことが許されないパソコンが電気スタンド型になってよいのか」という意見に賛成なのだが、販売店側にヒアリングしたところ、「これまでパソコンを置いていなかった部屋で使ってもらえるようになるのでは」と、期待の声が目立つ。

 iMacに限らず、パソコンの販売不振で、店頭を訪れるのはすでにパソコンを持っているユーザーばかり。特に若者のパソコン離れが目立つという声が上がっていることから、パソコンらしくない新型iMacが若者を呼び込むことを期待してのことであろう。

 だが、今回のiMacが若者を呼び込むには、デザインだけでは難しいだろう。もちろん、デザインも重要な要素で、一時的にユーザーを集めることはできるだろうが、それではユーザーを長い間引き付けることはできない。これまでのiMacもデザインに引かれて購入する人が多かったものの、「利用できるアプリケーションが少ない」という声が上がり、実際にiMacならではの使い方を提案することはできなかった。それだけに新型iMacには、単なるデザインの新しさではなく、使い方という面で従来のパソコンの枠を打ち破ることができるのかに、アップルという企業の真価が試されている。

アップルは新しいデジタルライフを実現できるか?

 アップル側もこの点が大いに反省点となっているようで、日本法人の原田永幸社長は「Macはデジタルハブソリューションの核になる」とアピールする。Macがデジタルライフの中核となるという、デジタルハブソリューションを実現するために、アップルでは積極的にアプリケーションをアピールする。

 例えば1月8日に行われた新型iMacの発表会では、iMacの説明とほぼ同じ時間が、新たに開発したデジタル写真データ編集ソフト「iPhoto」の説明に割かれ、デジタルライフにおける新しい用途提案をしていこうとする気遣いが感じられた。アップル自身は、ハードのデザインだけでなく、使い方の面で新しい提案をしようと必死になっている。少なくとも、ほかのパソコンメーカーよりも前向きに、新しい用途提案をしようとするあがきが感じられるのである。

 ところが、この点をISV側に尋ねてみると、どうも評判がよろしくない。

 Mac用ソフトは、Windowsに比べ市場規模が小さく、ソフトメーカーにとっては採算面で厳しいのだが、それを考慮しても、「情報開示がWindowsよりも遅い」とか、「開発ツールがそろっていない」といった厳しい声が飛ぶ。

 アップル自身が積極的にiPhotoを紹介し、新たな用途提案をしている点についても、「アップル自身が無償でソフトを提供することで、その分野のソフトを開発しても市場が全くなくなってしまう」と極めて評判が悪いのである。

 複数企業が声をそろえて厳しい声を上げるのを聞くと、アップルが目指すデジタルハブソリューションを実現するために、他社の手を借りず、自社だけでそれを実現しようとしているのだろうか? という疑問がわいてくる。もちろん、アップルはハード、OSの両方を開発しているのだから、Macのことは一番よく理解しているのは間違いないが……果たして、これだけISVからの不評をものともせず、デジタルハブソリューションを実現することができるのか? 新型iMacの売れ行き以上に、アップルの真価が問われる局面といえそうだ。

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

株式会社コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都下町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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