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» 2009年03月12日 07時30分 UPDATE

“レイヤー2接続”が生む高い付加価値――日本通信が「Doccica」で挑む新MVNOビジネス (1/2)

日本通信が発表した3G+無線LANの通信サービス「Doccica」。シームレスなマルチアクセスをシンプルかつ低価格で提供できた秘密は、ドコモとのレイヤー2接続にあった。三田社長は「これからが本来のMVNOビジネス」と意気込みを見せる。

[平賀洋一,ITmedia]
photo 日本通信の「Doccica」用端末

 日本通信は3月10日、利用する時間(分単位)の接続料金をチャージするプリペイド方式のデータ通信サービス「Doccica」(ドッチーカ)を発表した。国内の人口カバー率が100%であるNTTドコモのFOMA(3G)網と、同社が契約する全国1万5000カ所の無線LANスポットを利用できる。

 日本通信が“Doccica”という名前のサービスを世に出すのは今回が初めてではなく、2006年10月に、3GとPHSの2枚のデータカードをセットにした同名の製品を発表している(2006年10月の記事参照)。日本通信はすでにウィルコムのPHS網を使ったMVNOサービスを提供していたが、3G接続についてはドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3者と相互接続を協議している段階だった。結局、各キャリアとの接続は実現せず、当初発表されたようなDoccicaが日の目を見ることはなかった。

 当時キャリア側は、携帯電話が利用する無線帯域のひっ迫を理由にMVNOサービスに難色を示しており、他社回線との相互接続に慎重な姿勢を見せていた。日本通信側は、総務省が通信事業への新規参入促進を目指して取りまとめた“MVNO事業化ガイドライン”を根拠に、2006年11月、ガイドラインに明記されている接続義務を果たすよう最大手であるドコモにレイヤー2(データリンク層)の相互接続を申し入れている。この申し入れは協議の結果決裂し、日本通信は2007年11月に総務大臣に紛争処理の裁定を求めている

 また日本通信は、レイヤー2接続の協議と並行してドコモに対しレイヤー3による相互接続を申し入れ、2008年1月にiモード基盤を使わずにドコモ端末へプッシュメールを送信できる「ConnectMail」をスタートさせた。この段階では、パケット料金はドコモへ、ConnectMail利用料は日本通信へと、1つのサービスを使うのにユーザーが2カ所に料金を払う“ぶつ切り料金”だったが、日本通信とドコモはその後も協議を重ね、パケット料もサービス使用料も日本通信が直接設定できる“エンドエンドの帯域幅料金”を実現。独自調達の端末を使った「b-mobile3G」、法人向けの「I・Care3G」を提供している。

念願のレイヤー2接続

 Doccicaの製品発表会見に出席した日本通信代表取締役社長の三田聖二氏は、「我々がb-mobile3Gを発売したとき、周囲は“(ドコモと)相互接続できて良かった”と評価してくれた。しかし、わたしが創業以来実現したかったのは、回線をより効率的に利用できるレイヤー2の相互接続。ようやく、3Gでも日本通信らしい付加価値のあるサービスを提供できると思う」と述べた。

photophotophoto 左から、日本通信代表取締役社長の三田聖二氏、常務取締役CMO兼CFOの福田尚久氏、セールス バイスプレジデントの沢昭彦氏
photo レイヤー2接続とレイヤー3接続の違い。従来はMNO内に設置されていたGGSNというコアネットワークの一部が、MVNO側に置かれている。結果、柔軟な帯域制御が可能になった

 レイヤー2接続とレイヤー3接続の違いは、MNOとMVNOがどのように接続されているかによる。これまでのレイヤー3接続では、無線通信(パケット網)と固定通信(IP網)を接続するSGSN(Serving GPRS Support Node)とGGSN(Gateway GPRS Support Node)という交換機が2つともドコモ側にあった。レイヤー2接続を実現した今回のDoccicaでは、固定通信を無線通信に変換するGGSNを日本通信の社内に設置。本来はキャリア内部にあるコアネットワークの一部を自前で持つことで、帯域利用の自由度が増したという。

 「すでに日本通信は安い3Gサービスを販売しているが、レイヤー3接続ではMVNOがコントロールできる部分が少なく、日本通信らしさが発揮できなかった。今回はGGSNという交換器を自社のデータセンターに置いたことで、ドコモさんが集めたデータに日本通信が付加価値を与え、サービスとして提供できるようになる。日本でレイヤー2接続を実現したMVNOは、日本通信が唯一の存在だ」(三田氏)

 “日本通信らしい付加価値”とは、効率的な帯域利用だ。ユーザーが必要とする帯域を、使われているプロトコルやポート番号から自動的に判断し、個別の通信ごとに通信速度を変化させる。例えば、音楽配信や動画共有サイトを利用している場合は短時間でダウンロードできるよう帯域を確保し、文字や静止画が中心のサイトを見ている時は帯域を狭めて、ほかのユーザーと帯域を融通する。もちろん、ほかのキャリアでも行っていることだが、「スケールメリットが必要な大手キャリアでは、帯域のコントロールを細かく行えない。ユーザーごとにきめ細かく制御できるのは、5年に渡るPHSのMVNOで得たノウハウと技術を組み合わせられる日本通信だけ」(三田氏)と胸を張る。

photophoto Doccicaの特徴は、通信料金の安さと3Gと無線LANのマルチネットワークアクセス、そして使う時間ごとにチャージするプリペイド式の料金体系にある

 特に、レイヤー2接続による帯域制御の威力を発揮できるのが、M2M(Machine to Machine)分野だと三田氏は説明する。すでに米国にある日本通信の子会社は、MNOとレイヤー2の無線接続が可能なATM(現金自動預払機)を提供中だ

 「M2Mに必要な帯域と送受信するデータは、極めて限定的。例えばATMなら、利用できる時間も決まっており、通信する内容も数字しかない。これならば有線接続の10分の1から50分の1のコストで提供できる。また通信機能付きの電子ブック端末なら、やり取りするデータは文字しかないため、これも安く利用できるだろう。今後は、自動車やポータブルゲーム機などに通信機能を『部品』として提供できる」(三田氏)

 また、レイヤー2で接続するメリットは帯域の制御だけではない。無線通信から固定通信にパケットを交換する際、オープンなインターネットへ接続させず、セキュアな専用回線だけに接続することもできるという。

 「例えば会社のPCはLANケーブルという物理的な接続を使うことでセキュリティが保たれている。しかしモバイル環境ではそうは行かず、VPNなどを使ってセキュリティ環境を作っている。しかしわれわれなら、モバイル環境でもインターネットに接続させないことができるため、会社のノートPC 1台1台に専用回線を引くことだって可能だ」(三田氏)

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