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» 2011年05月02日 10時00分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:コミュニティサイトが果たす役割とは

安心ネットづくり促進協議会が、コミュニティサイト検証作業部会の報告書をまとめるにあたって実施した、青少年が利用するコミュニティサイトに関する実態調査が非常に興味深い。この調査では、SNSサイトがもたらすポジティブな面が明らかにされている。

[小寺信良,ITmedia]

 4月28日付けで、安心ネットづくり促進協議会のコミュニティサイト検証作業部会の最終報告書が公開された。この作業部会は、同協議会発足時にあったものではなく、活動を続けていくうちに専門の検証部会を作るべき、という提案に基づいて、あとからできたものだ。千葉大学の藤川大祐教授が主査となり、筆者らが作ったMIAUもここに参加している。

 コミュニティサイトの問題とその取り組みや成果に関しては報告書をご覧いただくとして、本稿では同時に公開された調査資料「青少年が利用するコミュニティサイトに関する実態調査(PDF)」に言及してみたい。同作業部会がリサーチ会社に委託して、小学3年生から高校3年生までを対象にアンケートした結果である。

 実施したSNSは、「GREE」「魔法のiらんど」「モバゲータウン」「mixi」の4つ。実際には高校生だけで75%近くを占める、若干偏った結果となったが、子供の利用者実態からすると、このような偏りは致し方ないところであろう。MIAUが行なっている独自調査でも、中学生でSNSの利用例は少ない。

 学校でのネットリテラシー教育の重要性は、以前から訴求してきたポイントだが、調査結果では学校で携帯電話の使用方法について授業を受けた子供は8割に上り、そのうち7割が役に立ったと答えている。協議会が発足した2009年頃は、ケータイ教育に関して学校が取り組むことに関して非常に渋かったものだが、1年足らずで状況は大きく変化したことを物語る。

Graph 携帯電話の使用方法についての授業内容(複数回答)(n=4791)
Graph 授業内容は役に立ったか(単一回答)(n=3995)

 この調査ではSNSサイトの問題点も分かるが、何よりも希少なのは、SNSサイトがもたらすポジティブな面が明らかになっていることだ。従来ネット・コミュニケーションのメリットは、利用者が体感的に感じているのみで、きちんと調査されることが少ない。利用者にとってみればそれを使うのがあまりにも当たり前になっており、放っておいても利用人口は増えていくので、改めてポジティブな面が語られる事も少ない。

子供たちはなぜSNSに集まるのか

 調査資料7ページ目に、ケータイコミュニケーションで経験したポジティブ経験とネガティブ経験の資料がある。これによれば、ネガティブな経験をしたことがあるのは2割にとどまり、ポジティブな経験で圧倒的に多いのが「サイト上の友達が増えた」の60.9%である。

Graph 携帯コミュニティサイトで経験したこと(複数回答)(n=4627)。青はポジティブな経験、赤はネガティブな経験
Graph 携帯コミュニティサイトで経験したこと(複数回答)(n=4627)。ポジティブな経験のみした人、ポジティブ・ネガティブ両方の経験をした人、ネガティブな経験しかしていない人、その他に分類


 ポジティブ経験のみが54.9%あるが、ここを重視するのは危険である。人生と同じように、ネットでもいい思いをすることもあれば、イヤな思いをすることもあるのは当然であり、そのことを子供たちには教える必要がある。ポジティブ経験のみの数値が多いのは、単に利用期間が短いか、あるいは多くの人たちに広く深く接していないからと考えるべきである。

 さらに詳しい資料は、コミュニティサイト検証作業部会の最終報告書の25ページにある。「携帯コミュニティサイトを使い始めて、あなたの実生活はどのように変化しましたか」という問いに対して、「知識が増えた」「友達が増えた」という以外にも、「毎日が楽しくなった」「つらいときに救われることがある」「ストレスが減った」「自分のことをわかってくれる人ができた」といったメンタルケア効果があることが分かった。

 もちろんネガティブ要素として「睡眠時間が減った」「勉強する時間が減った」といった、時間的なロスを無視することはできない。しかしそれは、時間の使い方を整理していく指導を行なうことで解決しうる問題だ。

 精神面のケアは、今回の東日本大震災において避難所生活が続く児童や、よそへ転校することになった児童に対して必要に迫られている現状がある中で、SNSが果たせる役割もまたあるのではないか。震災情報だけでなく、このようなケースで役に立ったのかどうかという調査も、継続して行なう必要があるだろう。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は津田大介氏とともにさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社)(amazon.co.jpで購入)。


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