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» 2013年03月15日 23時13分 UPDATE

Mobile IT Asia:“紙の進化形”を目指した「enchantMOON」――UEI清水氏が開発の背景を語る (1/2)

スマートフォンでもタブレットでもない、まったく新しいタイプのデバイスとして注目を集めている、UEIの「enchantMOON」。その発想の原点には「紙」があった。代表取締役社長兼 CEOの清水亮氏は「僕らがやりたいのは紙の進化形」と話す。

[田中聡,ITmedia]

 3月13日から15日まで、東京ビッグサイトで開催されていた「Mobile IT Asia」のカンファレンスで、ユビキタスエンターテインメント(UEI) 代表取締役社長兼 CEOの清水亮氏が、UEIの新型デバイス「enchantMOON」をテーマにプレゼンテーションを行った。

 2013 International CESのUEIブースで筆者がenchantMOONを初めて見たときの第一印象は「これは何?」だった。既存のスマートフォンやタブレットのように、画面にアイコンが整然と並ぶUI(ユーザーインタフェース)を採用しておらず、電源を入れると、いきなりメモを書ける画面が現れる。具体的な操作法は後述するが、これは従来のタブレットとはまったく異なるデバイスだと感じた。UEIが「手書きで使う新感覚のデジタルノートテイカー」と称するenchantMOONは、なぜ開発され、どのようなユーザーや利用シーンを想定しているのだろうか。清水氏のプレゼンからひもといていこう。

photo 2013 International CESで展示されていた「enchantMOON」

手書きなら「思考のプロセスを残せる」

photo ユビキタスエンターテインメントの清水亮氏

 清水氏は冒頭のスライドで、ある男性が打ち合わせに臨んでいる写真を紹介した。この男性はノートにペンでメモを取っており、その横には半開きのノートPCが置かれている。そして後ろには(オレンジだが)ホワイトボードがある。この男性は、結局ノートPCは打ち合わせで一度も使わなかったそうだ。「なぜ最新のコンピューターがあるのに、1000年も前からある道具(紙)を使って打ち合わせに臨んでいるのか」と清水氏は問いかける。理由は「キーボードの表現力はものすごく低くて、手書きのノートの方がたくさんのことが書けるから」。

photo ノートPCを持ち込みながら、ペンでノートにメモを取っている男性

 「キーボードは19世紀に発明されて以来、ほとんどイノベーションが起きていない。iPhone、iPadなどに採用されているソフトウェアキーボードが新しいと言っていい」と清水氏。手書きノートのメリットは、特定の単語にアンダーラインを引いてその下に注釈を入れたり、丸で囲って強調したり、ページを分割したり、略語や記号を入れたりと、キーボードに比べてはるかに表現力が高い。「こうした表現は、PCでもできなくはないけど、キーボードにとって自然な操作ではない」ので、積極的には使われない。

 手書きならではの特長として、清水氏は「思考のプロセスを残せること」を強調する。「白い紙は単なる記録のための媒体ではない。人間は新しいことを考えるときに、必ず手書きで考える。僕もブログはもちろんキーボードで書いているが、そのときにまったく新しいものを作ろうと思うと、まず画用紙や無地のノートを買って考える。手書きじゃないと考えられないことはすごくたくさんある。手書きは、ノスタルジーでも退化でもなく、思考するための道具だ」

photophotophoto 手書きノートの方がPCよりも豊かな表現ができる

唯一無二の紙、だからこその欠点

photo 手書きの方が、書く→考えるの循環がスムーズだ

 清水氏は、ノートにメモを残している女性の写真を見せながら、「1.考えを手で書き」 「2.目で確認してまた考える」という2つのステップを紹介し、この1→2の流れを「動脈と静脈」に例えた(1が動脈、2が静脈)。つまり1でアウトプットしたものを2でインプットするという流れだ。PCやスマートフォン、タブレットが普及しながらも、メモツールとして紙の存在意義は消えていない――。であれば、「紙を使い続ければいいじゃん」という結論になってしまう。

 だが「紙には大きな欠点がある」と清水氏。それは「情報の検索と共有」だ。例えば芸能人のサインなど、紙に書かれた情報は唯一無二のものなので、高い価値が生まれる。一方でサインは共有できないし、検索という点では、残した手書きメモが見つからないといったことは日常茶飯事だろう。しかしインターネットが発達して、知りたい情報を簡単に検索できるようになった。「情報は検索できないと意味がない。検索という点では紙は完全に敗北する」

 紙のもう1つの欠点は「その場で見たものを書き写す(共有する)ことが大変」であること。「学生のころは、黒板の情報を手書きでノートに写していた。それは学習方法の1つとしては意味があったかもしれないが、実用面では本当にそんなことをする必要があったのか?」と清水氏は疑問を投げかける。

 「情報の検索と共有の問題を解決できれば、人類は次のレベルに行けるのではないか。つまり、紙と同じ表現力を保ったまま、情報の検索と共有を実現する」――ここからenchantMOONの開発に発展していった。

 enchantMOONは一見すると“ちょっと変わったタブレット”だ。独自OS「MOONphase」を採用しているが、ベースにはAndroidを用いている。だが、Androidタブレットを作りたかったわけではなかったという。「iPadとどう違うのか? と聞かれることもあるが、そうじゃない。たまたまAndroidとハードがあるから使った。僕らがやりたいのは紙の進化形」

日本メーカー製の最高級ヒンジを採用

photo enchantMOONを手にする清水氏

 そんな想いから生まれたenchantMOONは、ハードウェア的にはどんな特徴を持つのか。ディスプレイはXGA表示(768×1024ピクセル)対応の約8インチ、静電容量式タッチパネルを備える。CPUはシングルコア、メモリ(RAM)は1Gバイト。

 外観で目を引くのが、ディスプレイの上に装備した多目的ハンドルだ。持ち運びが便利になることに加え、このハンドルに備えられたヒンジの角度を調整することで、スタンドとしても使える。角度を付けられるようにしたのは、机に水平な状態で端末を置くと、微妙な視差が生まれてしまい、文字や絵が書き(描き)にくくなってしまう場合があるため。となるとヒンジの強度が気になるが、「日本メーカー製の最高級のヒンジを使用している」とのことで、少なくとも1万回折りたたんでも強度を確保できるという。

 そしてこのハンドルには、一眼レフと同じストラップが使える幅広のストラップホールも用意されている。これは、自動車の修理工場など、今までPCを持ち込めなかったような現場に、enchantMOONを手軽に持ち運んでもらうことを狙ったそうだ。

 上端部に「フロントカメラ」を搭載したことで、メモを書く普段のスタイルのまま撮影ができる。「板書を撮影しながら画面にメモを残す」といったシーンで使いやすそうだ。テレビ電話に活用してもらうため、ディスプレイ面には「セルフカメラ」を用意した。「リテラシーが低い方にとっては、テレビ電話が便利なこともある。実家のおじいちゃん、おばあちゃんと話したりできるし、工事現場などで、セルフカメラの前でジェスチャーをすれば指示を伝えやすい」と清水氏はメリットを説明する。

 ディスプレイ面の右上にある電源キーは、あえて目立たないようにした。「日本メーカーは製品の正面にロゴを入れたがるが、iPhoneやiPadが美しいのは、正面にロゴがないから。思考に集中したいのに、ロゴが入るとどうしても引っ張られてしまう。紙のノートにもロゴは入っていないので集中できる」

photophoto 強度の高いヒンジ、スタンドにもなるハンドル、ストラップホールを用意(写真=左)。目立たないよう配置した電源キーと、書くスタイルのまま使えるフロントカメラ(写真=右)
photophoto ボディはマグネシウム合金製なので、軽くて丈夫。放熱性も高い(写真=左)。XGAディスプレイを搭載。専用のデジタイザーペンも用意される(写真=右)
photo 独自OSとUIにより、紙とほぼ同じ書き心地を実現した
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