CommScopeは、米国でワイヤレスWANの基地局で利用するアンテナやケーブルコネクタを提供している企業だ。そのCommScopeが、ワイヤレスジャパン2013で、気象要因の影響受けても基地局アンテナの性能を維持するために必要な条件について講演を行った。
米国では大規模な竜巻で大きな被害が出るなど、気象災害がたびたび発生しているが、これは、日本でも同様で局所的な集中豪雨や極端に発達した低気圧、台風などで屋外に設置した基地局は影響を受ける。
しかし、CommScopeによると、大規模な気象災害でも基地局のアンテナがダメージを受けることはほとんどないという。自然災害で基地局が停止する原因の多くは、浸水による内部システムの損傷と外部からの電源供給が長期にわたって停止し、バックアップの非常用バッテリーを使い切った場合という。
基地局アンテナが暴風雨で影響を受けるのは、風でアンテナの設置角度がブレることでセクターのパフォーマンスが低下する場合だ。また、RRH(Remote Radio Head)やTMA(Tower Mounted Amplifier)といった電波送出関連部品では構成部材がダメージを受けて動かなくなるケースもある。この場合、セクター全体が停止することになる。
アンテナやフィルター、ケーブルは、短時間の集中的な自然災害より、長期間にわたる経年変化でわずかずつ劣化するケースが圧倒的に多いという。この場合、セクターのパフォーマンスも少しずつ、しかし、確実に低下していく。基地局における自然災害の影響は、この時間をかけた経年変化による劣化がはるかに深刻で、その対策が重要になるとCommScopeは訴えている。
経年変化による劣化を発生しやすいのが、ケーブルのコネクタ部分だ。ケーブルをフィルターやアンテナに接続するコネクタで浸水が発生することで、電圧定在波比が高くなり信号のロスが増えていく。CommScopeが扱うケーブルとコネクタ、フィルターはIP67を、アンテナ部材ではIP56をクリアする部材を採用して、経年変化の劣化を発生しにくくしている。
さらに、ケーブル外皮でも長期間の紫外線に耐えるため、高いUV耐性(IEC 600068-2-5)に適合する素材を採用し、ケーブルそのものの耐久性も、マイナス55度から85度までの気温で曲げ、粉砕、引っ張り荷重の試験をクリアすることを求めている。
CommScopeは、このような耐久性をもつアンテナやコネクタ、ケーブルを生産するのに重要なのは、製造過程における品質管理としている。同社では、部門の枠を超えた専門チームによって生産管理を行っているが、外的環境の耐久性を確認する環境保障試験では、深さ91.44センチに24時間沈める浸水テストや温度湿度を制御した結露サイクル試験、急激な温度変化や2時間にわたる2方向4G振動試験、塩分を含む霧に暴露する腐食試験などを行っている。
最後にCommScopeは、極端な悪天候であっても基地局アンテナが破壊してネットワーク障害が発生することはほとんどなく、それよりも、コネクタやケーブルに対する浸水による経年変化で長い時間をかけて性能が劣化していくことの影響が大きいとし、その回避には、十分な耐久性能を保障するコネクタやケーブル、アンテナなどの部材を採用することが、長期にわたって基地局の性能を維持するのに重要と訴えた。
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