LTEはバックアップ、狙うのは2〜3台目――ワイヤレスゲートがMVNOに参入した理由MVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2014年11月07日 18時12分 公開
[石野純也ITmedia]

 ほとんどのMVNOが、主な通信手段に3GやLTEといった携帯電話回線を想定している。ワイヤレスゲートがほかと違うのは、この部分だ。もともとWi-Fiでのサービスを主力にしていた同社は、その間を埋めるサービスとしてMVNOで携帯電話回線を提供している。LTEの通信速度を抑え、月額料金を安価に設定しているのもそのためだ。

photo ヨドバシカメラで販売しているワイヤレスゲートのSIMカード

 同社が主力に据える「480円プラン」は、その名のとおり月480円(税込、以下同)で250Kbpsのデータ通信が使い放題になるサービス。税込で480円という価格は業界最安を誇る。主力としているのがWi-Fiだからこそ、速度を絞り、そのぶん価格を抑えているのがこのサービスの基本的なコンセプト。当然、Wi-Fiサービスが付属しており、そちらのネットワークに接続した際は、フルスピードで通信できる。

 このほか、下り最大150Mbpsの通信を行える「920円プラン」や「2480円プラン」「5490円プラン」も用意。こちらは、それぞれに1Gバイト、5Gバイト、10Gバイトの通信量が付与され、その範囲内で高速通信を利用することが可能だ。一方で、やはり特色があるのは480円プラン。代表取締役社長CEO 兼 ファウンダーの池田武弘氏によると、同社のユーザーの過半数が、このプランを選択しているという。

 ワイヤレスゲートは、これらのサービスでどんな市場を狙っているのか。また、サービス開始後の反響はどうか。携帯電話回線を提供するに至った理由なども合わせて、池田氏に聞いた。

今後は2〜3台持ちが増えていく

photo ワイヤレスゲート 代表取締役社長CEO 兼 ファウンダー 池田武弘氏

―― もともと、Wi-Fiを中心にサービスを行ってきた御社が、なぜMVNOを始めたのか。そこからお聞かせください。

池田氏 ワイヤレスゲートは、社名のとおりですが、ワイヤレスのゲートになりたいという意味です。そのための通信手段は何でもよくて、ニーズに合わせたサービスを我々がご用意する。LTEやWi-Fi、WiMAXなどの無線通信の種類を意識せず、水のように使わせてあげたいという思いがありました。これまでも、そうした考え方で、Wi-FiやWiMAXを借りて提供してきました。

 最近では、SIMロック解除といったトピックがあり、ユーザー側にも移動中でもある程度通信を使いたいというニーズが高くなってきています。通信手段を考えると、今はLTEや3Gが必須です。そこで、ドコモさんから回線を借り、相互接続という形でサービスの提供を始めました。

 ですから、MVNOはいきなり始めた事業というのではなく、これまでもやってきたという意識です。

―― サービス開始が2014年だったのには、何か理由がありますか。

池田氏 先ほど申し上げたSIMロック解除というのが1つのトピックとしてありました。ただ、今でもキャリアさんのように、電話番号付きの1台目(1回線目)を提供しようとは、まったく思っていません。狙っているのは、2台目、3台目ですね。今はスマートフォンが一巡してきて、機種変更する際に古い端末がお手元に残ります。そこに我々の通信料金の安いSIMカードを挿せば、死んでいた端末が復活するわけです。

―― つまり、2台持ち、3台持ちは今後増えていくと考えられているわけですね。

池田氏 はい。当然増えていくと思っています。もう1つ、新しいスマートフォンが出て、最先端のものが欲しいというのはあると思いますが、その際にこれまで使っていた端末が使えなくなるのはもったいない。本来、スマートフォンとしての機能は生きているのに、通信機能がないがゆえに使えなくなるわけですからね。その端末は、お子さん、奥さん、お父さん、お母さんに渡してもいいと思います。最新スペックは必ずしも必要ではないけれど、通信があると便利だと思う方はたくさんいます。

キャリアと共存共栄の関係になりたい

―― MVNOはドコモ以外を選ぶところも出てきていますが、その中でドコモを選んだ理由を教えてください。

池田氏 これは、僕らが3GやLTEを提供する理由にもつながります。狙っているのが1台目の端末ではないので、メインで使う回線はLTEではなくWi-Fiです。そのとき携帯電話回線に求めるのは、何かあったときに必ずつながる安心感です。離島にいったり、山間部にいったりしてもつながることが大切で、そこに強いドコモさんを選んでいます。

―― 携帯電話の回線を、バックアップ的に使うのMVNOは、珍しいと思います。

池田氏 大前提として、お客様の求めている通信量が、どんどん大きくなっているというのがあります。今の格安SIMと呼ばれるサービスは、あまり使わない人がちょっとだけ使うことで安くなるパッケージになっています。ただ、それは短期的な話ではないでしょうか。長期的には、使えば使うほど、じゃぶじゃぶ使うようになってきて、帯域が足りないと困るようになります。1ユーザーあたりのトラフィックがますます増えていくと、いわゆるセルラー回線だけでさばくのは難しいと思います。

 ご自宅に固定回線を引いたり、公衆無線LANを活用するなどして、じゃぶじゃぶ使うときはWi-Fiにするのが一番です。ただ、残念ながらWi-Fiは、使える場所が限られていますから、バックアップが必要です。

―― 最安の480円プランは、どのくらいの割合で選ばれてますか。

池田氏 具体的な数字は開示していませんが、半分以上です。もう少し多いと思っていましたが、1Gバイトの920円プランが思った以上に多い。その上の5Gバイト、10Gバイトプランはヨドバシさんからのご要望もあったので、出せば絶対に売れると思っていましたが、ある程度は伸びています。販社や、そこにアタッチするデバイスによって、売れるプランも変わってきます。それにアジャストできるのが、僕らの強みですね。

―― 価格的にインパクトがあったと思います。この設定は、業界最安を意識して生まれたものなのでしょうか。

池田氏 僕らの立ち位置は、ほかのMVNOの競合でないと思っています。Wi-Fiを使いつつ、LTEをバックアップにする。そのLTEの部分は、原価がほかのMVNOより軽くなるわけです。そのぶん、料金的なメリットをお客様にご提示した形になります。適正利潤を得ながら、ご満足いただける価格を追求したら、結果として競業他社よりも安くなっただけで、無理やり業界1位になろうとは思っていません。つまり、結果として料金も安くなったということですね。

―― 立ち位置が違うので、この価格になったということですね。

池田氏 そうですね。それが明確に見えるところですが、私たちは090、080、070の音声サービスは絶対にやりません。また、自ら端末を担いで、垂直統合型のセットをやることもありません。これが、ほかのMVNOと大きく立ち位置が違うところですし、既存のキャリア(MNO)とも共存共栄ができます。

 僕らが狙っているのはトラフィックがヘビーな方々です。キャリアと僕らの通信回線をうまく使い分ければ、お客様のためにもなりますし、キャリアにとってもメリットがあります。

 1億3000万がサービスの対象になるという立ち位置は、パッと見で魅力的ですが、長期的に見たとき、キャリアとの競合は大きなリスクです。キャリアが単体ではできたことで市場を作っていく方が、お客様や業界にとってもメリットになると考えています。

―― キャリアと共存共栄の関係になりたいという点を、もう少し詳しくお話ください。

池田氏 僕らがドコモさんに提供できる価値は、1つがヘビーユーザーのトラフィックをWi-Fiに逃がしてあげることです。2台目用の回線なので、それによってドコモさんの純増にもつながります。僕らががんばることで、ドコモさんがユーザーを失うことなく、純増につながるわけです。これが、ドコモさんのサービスをやめて、格安のMVNOに乗り換えるという話だと、ドコモさんにとっても旨みがありません。マイナス1ではなく、プラス1にするのが私たちのサービスということです。

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