インタビュー
» 2015年01月14日 09時18分 UPDATE

開発陣に聞く「Xperia Z3」(3):“光学式手ブレ補正要らず”なXperia Z3のカメラ――「デジカメレベル」の性能に迫る

以前から高感度な写真を撮影できることに定評のあったXperia Zシリーズのカメラが、Z3ではさらに進化した。そのポイントは「高感度撮影」と「手ブレ補正」。これら2つを中心に、Xperia Z3のカメラで注目すべき点を聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 ソニーモバイルコミュニケーションズが投入したスマートフォン「Xperia Z3」開発の舞台裏をインタビューする短期連載の第3回では、カメラ機能に焦点を当てる。カメラ設計担当の荻原氏に、従来のXperiaから進化したポイントを中心に聞いた。

photo Xperia Z1からおなじみ、有効約2070万画素CMOSカメラを搭載する「Xperia Z3」

カメラレンズを薄くしながら画質を維持するのに苦労

photo カメラ設計担当の荻原氏。以前はソニーのαやサイバーショット、ハンディカムの部署でカメラ開発を担当していた

 Xperia Zシリーズのカメラといえば、F値が2.0と明るく、広角なソニー製「Gレンズ」や、1/2.3型のソニー製CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、ソニー独自の画像処理エンジン「BIONZ for mobile」を搭載し、明るくてノイズの少ない写真を撮れることを訴求してきた。Xperia Z3でもこれらのテクノロジーは継承しているが、さらなる進化を果たしている。

 まず、Xperia Z3ではボディの薄型化に伴い、カメラモジュールもXperia Z1/Z2から0.7ミリ薄くしている。これは第1回でも話を聞いたが、フラットなボディを形成するためだ。しかしカメラモジュールを薄くするほど「画質面でデメリットが生じる」(荻原氏)ため、従来機から画質を損なわないようにすることが大変だったという。

 「明るく撮影できるかどうかは、レンズの口径に左右されます。レンズを薄くすると、ひずみや色のシェーディングなどの面で不利になるので、それをソニーの技術を使って見せないようにしています。でも、マイナスをゼロにすることは訴求していません。表には見えていませんが、そこの戦いは大きかったですね」と荻原氏は苦労を話す。

photo 左がXperia Z3、右がXperia Z1/Z2で使われているセンサー。わずかながらZ3のセンサーの方が薄いのが分かる

最新のサイバーショットと同等の高感度撮影が可能に

 ではゼロからプラス……つまりXperia Z3でカメラ性能が進化した部分はどこなのか。1つは、より高感度な撮影が可能になったこと。「プレミアムおまかせオート」設定時に、最大ISO12800の撮影が可能になり、「ろうそくの下で子供の寝顔が撮れる」(荻原氏)レベルだという。荻原氏によると、ISO感度のレベルは最新のサイバーショット「DSC-HX60V」と同じで、「デジカメレベルです」と同氏は胸を張る。また、焦点距離も従来の27ミリから25ミリへと短くなり、よりワイドに撮影できるようになった。

photo Xperia Z1では思い出画質、Xperia Z2ではハンディカム画質を目指し、Xperia Z3ではその両方を進化させた
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photo 他社のスマートフォンと比べても、明るく撮影できる

 同じ暗いシーンをXperia Z3とZ2で撮り比べたところ、Z2で撮った写真も確かに明るいが、Z3と比べると、ディテールがつぶれてしまっている。Xperia Z1以降のカメラでプレミアムおまかせオートに設定して撮影すると、20MPサイズから8MP分に切り出される。その際、まずExmor RS for mobileで画素加算をすることでサイズを落としてノイズを低減し、続いてBIONZ for mobileで複数の写真を重ね合わせてノイズを低減し、最後に全画素超解像ズームで復元することで、8MPの高感度な写真が完成する。

 暗いシーンでもディテールをハッキリと写せているのは、上記の処理でノイズを低減させる際に「必要なデータを残しつつ、不要なノイズを消す技術を使っているから」(荻原氏)であり、Xperia Z3ではその精度が向上していることが分かる。また、フォトライトは被写体の距離に応じて発光量を変えている。

photo ノイズ低減や解像度復元の処理により、20MPから高感度な8MPの写真を生成している
photophoto 左がXperia Z3、右がZ2で撮影したもの。拡大すると、Z3の方がディテールがしっかり描写されていることが分かる
photophoto 左がXperia Z3、右がZ2で撮影したもの。夜景の写真はそれほど大きな差は感じない

 一方で、Xperia Z3で撮った写真は、フォトライトなしでも「明るすぎる」と感じることがある。荻原氏も「そういう悩みはあります。もう少し雰囲気を出せる画質のチューニングは課題としています」と話す。また夜景などで街灯が入ると、白いもやっとした光(フレア)が映ることが多いのも気になった。「レンズフレアは出る可能性があります。レンズが薄くなるほど外側からの光がどうしても反射してしまいます。いろいろなトレードオフがありますね」と荻原氏。やはりレンズの薄型化が不利に働く面も多いようだ。

photophoto 左がXperia Z3、右がZ2で撮影したもの。Z3の方が明るいが、一方でフレアも目立っている

遅らせて保存することで動画の手ブレを的確に防げる

 もう1つの大きな進化は、動画撮影時の手ブレ補正だ。Xperia Z3では「インテリジェントアクティブモード」と銘打っており、走りながら撮影してもブレを少なくできる――とうたっている。仕組みとしては、動画の撮影タイミングから少し遅らせて保存している。これにより、実際にデータを保存する時点で、被写体がどのように動くかが分かるので、より的確にブレを補正できる。撮影中の画面では分からないが、保存した動画を後から再生すると、ブレが補正されていることが分かる。

photo 走りながらでも滑らかな動画を撮れる「インテリジェントアクティブモード」
photo ラフティング、自転車、ウェイクボード、パラセーリング、パラグライダーなどのアクティブなスポーツをしながらでもブレの少ない動画を撮れるという
photo 撮影タイミングから遅らせて保存することで、未来のフレームを解析でき、的確に補正できる。ソニーのハンディカムにも使われている技術だ

 手ブレ補正といえば、最近はカメラモジュールごと制御する「光学式手ブレ補正」を採用するスマートフォンも増えてきているが、荻原氏によると、インテリジェントアクティブモードは光学式手ブレ補正よりも効果が高いという。これは手ブレの補正角(揺れている角度)を大きく取れるためで、先述した遅らせてデータを保存することで、この補正角をより大きく正しく認識できるというわけだ。

 インテリジェントアクティブモードは、保存しながらリアルタイムでブレを予測する仕組みなので、当然ながら動画専用となり、静止画の撮影時には応用が効かない。静止画については、シャッター速度を速くするという考え方で対応しているという。「一般的に、シャッター速度が速いとブレません。暗いレンズではシャッター速度は上げられませんが、Xperia Z3はレンズも明るくてISO感度も高いので、シャッター速度を上げられます。同じシーンを撮っても、暗いレンズのカメラではブレやすくなりますが、明るいレンズのカメラではブレません。Z1のころからそういう考え方でやってきました」(荻原氏)

 ただ、iPhone 6 Plus、GALAXY Note Edge、Nexus 6、AQUOS ZETA SH-01Gなどのライバル機が続々と光学式手ブレ補正を採用していることを考えると、カメラを訴求するXperiaにも欲しいところだが、「このサイズ(厚さ7.3ミリ)では難しかったですね」と荻原氏。光学式手ブレ補正を採用するとなると、カメラモジュールの厚さが増してしまう。「ユーザーメリットがあれば厚くなってもいいかもしれませんが、今のところは別の方法でメリットを生んでいます。(光学式手ブレ補正も)視野に入れて検討はしていますが、“明るいレンズを使って高速で撮ること”に振る方がメリットが大きいと考えています」(荻原氏)

位相差AFよりも優秀? AFの速度もアップ

 Xperia Z3ではオートフォーカスの速度も上がっているという。「数字は出していませんが、AFの速度も実は上がっているんです。他社さんが0.3秒などとうたっていますけど、Z3でも同じくらいの速度が出ています」と荻原氏。iPhone 6 PlusやGALAXY S5、GALAXY Note Edgeなどでは、被写体との距離に応じてピント位置を検出する「像面位相差AF」を採用しており、より短時間でピントを合わせられる。Xperia Z3には、被写体の明暗差(コントラスト)からピント位置を検出する従来の「コントラストAF」を採用しているが、ピントの合う精度を高めているという。

 「被写界深度(ピントの合う幅)が狭いと、ちょっとでもレンズの位置がずれるとボケて見えます。他社は位相差AFをやっていますが、まだセンサーの精度が取れていないので、同じ画素サイズで比較すると、合っているはずのところにピントが合っていないというデメリットがあります。僕らは、まずは精度を合わせにいこうという考え方でやっていますす」(荻原氏)

 なお、ソニーはモバイル端末向けに、位相差AF対応の有効2100万画素積層型CMOSセンサーExmor RS for mobileを発表しており(→位相差AFや4K動画のHDR撮影を実現――ソニーが有効2100万画素の新型CMOSイメージセンサーを発表)、2015年4月に出荷を開始する予定。当然Xperiaへの搭載も期待されるが、「ノーコメントです(笑)」と荻原氏。「視野には入れて、勝てるようなものを用意はしています」と述べるにとどまった。

 第三者機関はXperia Z3のカメラをどのように評価しているのか。スマートフォンやデジタルカメラの画質を評価するフランスの「DxO Labs」におけるXperia Z3の点数は、Xperia Z2と並ぶ79点で、82点のiPhone 6/6 Plusには及ばなかった。「像面位相差AFを導入したことと、(iPhone 6 Plusについては)光学手ブレ補正のモジュールを使ったことが点数としてリードしているようです。僕らは、光学式のメリットというよりも、実際に使った状態で補正角が大きいかにこだわった」と荻原氏は話す。

photo Xperia Z3は、iPhone 6/6 Plusに次いで画質がいいという評価。GALAXY S5とも同じ点数だ

マニュアルはあくまで補助的な機能

 使い勝手の面では、マニュアルモードにすると、8MPよりも大きいサイズでHDRやシーン設定ができないなど、制約が多いのが気になる。この点は「よく言われます」と荻原氏も苦笑いする。

 「プレミアムおまかせオートをメインで考えているので、マニュアルは今の段階では補助的な機能としか考えていません。8MPの画質を保持するために、(20.7MPの)フル画素で撮ると、内部の信号処理に制約が出てしまうのです。例えばメモリの領域が足りなくなってしまい、規定の枚数を重ねられない――などです。(マニュアルモードでの自由度を上げてほしいという)大きなフィードバックがあれば、解決も踏まえて検討したいです」(荻原氏)

 ではいっそのことマニュアルは廃止して、プレミアムおまかせオートのみにしてもいいのでは……と思えてくるが、そこはいろいろな意見が内部でもあり、まだ決めかねているようだ。ただ、スマートフォンのカメラは思い立ったときにサッと撮影できるのが魅力なので、個人的にはマニュアルモードは思い切って省いてしまってもいいとも思う。

 アジアを中心に盛り上がっているセルフィーブームにも、少しずつ対応している。Xperia Z3などのフラグシップモデルのインカメラは220万画素にとどまっているが、500万画素CMOSとフォトライト付きのインカメラを搭載した「Xperia C3」を海外で販売している。「今回は、マルチカメラやフェイスインというアプリで自分撮りを意識しています」と企画担当の内田氏は話す。ただ、「インカメラの高画素化も意識しています」(荻原氏)ということなので期待したい。

 次回はオーディオについて、お話を聞きます。

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