ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia Z2 SO-03F」の開発の舞台裏を聞くインタビューの第2回では、カメラで進化したポイントに焦点を当てる。カメラでは4Kサイズ(3840×2160ピクセル)の動画撮影が目立つ新機能だが、静止画の画質もチューニングされている。その秘密とは?
Xperia Z2の機能面における進化について、マーケティング担当の横山氏は、「ソニーが大切にしている、Watch、Listen、Play、Createという4つのユーザー体験をさらに強化しました」と話す。続いて「Z1ではカメラを強く押し出したので、『Xperiaといえばカメラ』と認知いただいたかと思います。Z2ではさらにハイスペックなカメラを生かすということで、動画にも力を入れて、4K撮影にも対応させました。2014年にFIFA World Cupのスポンサーをしていることもあり、ソニーとしても4Kに力を入れています。Xperia Z2には、4Kを手軽に楽しめるデバイスというコンセプトも込めています。また、静止画で楽しんでいただいたカメラアプリを動画でも楽しめるようになりました」とカメラ部分の進化も説明する。
ディスプレイのサイズはXperia Z1の5型から5.2型へと大きくなり、ここでも進化を感じられる。一方で5.2型だと大きいという人もいるだろうが、ソニーモバイルは夏モデルで4.3型液晶を備える「Xperia A2 SO-04F」もドコモ向けに供給している。「一番いいサイズは人によって違うので、どれがベストかは一概に言えませんが、Xperia Z2は、この大きさがベストだと判断しました。A2もあるので、多くの人に使っていただけるのではないかと思います」(横山氏)
集光効率に優れたF2.0と広角27ミリのレンズ、有効約2070万画素を実現した1/2.3型のCMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、画像処理エンジン「BIONZ for mobile」により、Xperia Z1ではカメラ機能が大きく進化した。特に薄暗い場所でもノイズを抑えて明るく撮れ、またズーム時にも解像感を保って撮影できるようになった。スマホのカメラといえば、SNSにアップするといった「ライフログ」が主な用途になるだろうが、Z1では、コンパクトデジタルカメラが担っている「思い出を残す」ための画質を目指した。
カメラテクノロジー担当の有山氏は、Xperia Z2では静止画だけでなく、「動画でも“思い出画質”を残せるようこだわりました」と話す。そこで追加されたのが4K動画の撮影機能だが、Z2では4K動画の撮影でも手ブレ補正が効くこと、4K動画の再生中にズームができることを訴求する。4K動画撮影+手ブレ補正の実現には、ソニーがハンディカムで培った技術が生かされている。
「4K動画撮影で手ブレ補正を使えるようにするには、大きなイメージセンサーが必要になります。手ブレ補正ではイメージセンサーの一部を切り出して、リアルタイムで動かしてブレを抑えていますが、4Kは8MP(メガピクセル)なので、それより大きなイメージセンサーを使わないといけません。20MPのセンサーを備えるXperia Z2では、8MP分を切り出して補正しているので、少なくとも8MPのセンサーでは4K動画撮影の手ブレ補正はできません。今回は、手ブレ補正を担当していたソニーのカメラエンジニアがチューニングして、ハンディカムの電子式手ブレ補正と同等のものが移植されています」(有山氏)
撮影した動画の一部をスローモーションで再生ができる「タイムシフトビデオ」も、Xperia Z2から搭載された。これも「動画の思い出画質」を実現するためにこだわった機能だ。
静止画では画質を改善させた点に注目したい。カメラ機能が大きく進化したXperia Z1だったが、「(プレミアムおまかせオートで)撮影した料理がおいしそうに見えないという評価がありました」と有山氏は振り返る。ここを改善すべく、色の再現性とホワイトバランスをチューニングした。ホワイトバランスでは赤みの調整を最適化し、温かみのある絵を残せるようになった。「薄暗い場所や暗い場所での画質が特に進化したところです」と有山氏は話すが、明るい場所での画質も改善されているとのこと。「解像感が増して、黒などがしまり、コントラストが付いたメリハリのある仕上がりになっています」(有山氏)
他社のカメラでは自動シーン認識に「料理」が含まれているものもあるが、Xperiaのプレミアムおまかせオートには、料理を自動認識する設定は含まれていない。有山氏はその理由を「現段階では、料理を検出するのが難しいためです」と話す。「料理の種類も、ラーメンからケーキまでさまざまなものがあります。(シーンの自動認識は)自分たちが自信を持って提供できると判断して載せています」と話し、中途半端な機能は載せられないことを強調した。なお、撮影モードを「マニュアル」にして「シーンセレクション」で「料理」を選べば、料理をおいしく撮れるようになる。
暗い場所での画質も向上させた。Xperia Z1では、20MPの写真を8MPに圧縮し、BIONZ for mobileでノイズを低減させることで、暗い場所でも明るく撮影ができる。一方で、「Z1は暗い場所ではやや解像感が失われる方向に行っていた」(有山氏)という。そこで、Z2では暗いシーンでの処理を変えることで、解像感を残しながら、ノイズもZ1と同等に抑えるよう調整した。「暗所で感度が上がったときに強くノイズリダクションをかけると、解像感が減ってしまいますが、Z2ではノイズを抑えつつ解像感をキープできる信号処理を施しています」と有山氏は改善点を説明する。
上記の2つの画質改善は、いずれもBIONZ for mobileに手を入れて実現したものだ。さらに、「Xperia Z1 SO-01F」と「Xperia Z1 f SO-02F」についても、6月26日から提供されているのOSバージョンアップによって、Xperia Z2と同様に画質が改善される。
こうした画質改善の成果は、第三者機関にも認められた。スマートフォンやデジタルカメラの画質を評価するフランスの「DxO Labs」では、モバイル部門でXperia Z1が100点満点中76点で、当時の1位は77点の「Nokia 808 pureview」に譲っていた。しかし、Xperia Z2はNokia 808 pureviewを上回る79点を獲得し、1位に躍り出た(外部リンク参照。ちなみに、GALAXY S5も同点の1位となっている)。「色、明るさ、AF(オートフォーカス)、ノイズなど、画質がトータルで評価されます。自分たちが取り組んできたことが高く評価されたのは、開発者としてとてもうれしかったです」と有山氏は手応えを話す。
ちなみに、ライバルのGALAXY S5は、最速で約0.3秒という高速オートフォーカスをウリにしている。ソニーモバイルのカメラチームはAFの速度はどう考えているのか。有山氏に聞いたところ「AFを外すと失敗写真になってしまうので、速さと正確さは意識して向上させています」とのことだった。
自分撮りを表す「セルフィー」という言葉も最近よく耳にするようになった。「自分撮りが最近トレンドとして伸びていることは意識しているので、そちらの大切さも感じています。ただ、次に何をするかは、ここではまだ言えません(笑)」(有山氏)とのこと。インカメラの進化も期待していいかもしれない。
画質とは直接関係はないが、Xperia Z2ではAFとシャッターの音がXperia Z1やZ1 fと比べて小さくなっている。オーディオテクノロジー担当の田原氏によると、「Xperia Z1やZ1 fでは、レストランなどで使うときに、周りから注目されて困るという声が多かったので、抑えめにしています」とのこと。これはグローバルで共通の仕様だという。
ここまで紹介したカメラの進化は、auの「Xperia ZL2 SOL25」にも適用されている。ドコモから発売された小型の「Xperia A2 SO-04F」については「ほぼ同じ画質ですが、A2に適したチューニングをしています」(有山氏)とのこと。
「Z1から頑張りすぎたかなというくらい頑張った」(有山氏)というXperia Z2のカメラは、動画も“思い出画質”に進化し、静止画の画質もブラッシュアップされた。「SNSにアップするだけでなく、後から見返しても『こんなにいい写真が撮れた』と思っていただけるような画質を目指しました。Z1ではズームをしても、ブレずに、暗いところでも明るく撮れるようにチューニングしましたが、Z2ではZ1の失敗や不満が多いところをカバーしています」(有山氏)
Xperia Z1のカメラはハードの進化がめざましかったが、Xperia Z2のカメラはソフトウェアの地道なチューニングによって、思い出をさらにキレイに残せるようになったといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.