現代のスマートウォッチよりスゴイ?――カシオの歴代多機能時計はこんなにユニークだった樫尾俊雄発明記念館(3/3 ページ)

» 2015年06月06日 06時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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アウトドア:GPS内蔵腕時計は1990年に登場

 アウトドアといえば、GPSや気圧センサーを搭載した腕時計が思い浮かぶところ。今でもPROTREKとしてアウトドア用シリーズは出ているが、かつては予想外な機能を持つものもあった。

 1982年には温度測定機能を持つ「TS-1000」(残念ながら実機なし)、1989年には圧力センサーを搭載し、気圧・高度・水深がわかるBM-100Wや、月の満ち欠けをグラフィック表示(デジタル版ムーンフェイズ)や日の出・日の入りの時刻を表示する「GMW-15」、さらに地図上で腕時計を動かすと、距離を計測し、実距離を算出する「MAP-100」が登場。スマホもPCもない当時、国土地理院の地形図を見ながらルートを決め、距離を測る必要があったわけで、それに使えたのだ。

 この年はユニークなアウトドア用デジカメがたくさん出たんですな。

photo 「BM-100W」(1989年)
photo 「GMW-15」(1989年)
photo 「MAP-100」(1989年)

 1993年には電子方位計搭載の「CPW-100」、1994年には紫外線量を測れる腕時計を発売。これのテレビCMも見せてもらったが、水着美女が腕につけていた。UVセンサー付きで、夏は紫外線に気をつけましょうという季節限定ウォッチだったのだ。面白い時代である。

photo 方位センサー付の「CPW-100」(1993年)。当時、電子コンパスはまだ珍しかった。
photo 「UV-700」(1994年)。UVは気になるけど海で遊びたいという、そんな人向けの夏専用時計。

 ユニークなのが1994年の放射温度計付き腕時計「TSR-100」。増田氏いわく「このころは、新しい技術が時計に乗せられそうだとなると、まずやってみようという形で作っていた。だからこの時計も何に使うかという発想はなく、さまざまなシチュエーションを考えたが、結局天ぷら油の温度を測るの便利だったと言われた(笑)」。

 放射温度計は離れた位置から温度を測れるので、確かに天ぷら油にはいいかもしれない。そういう発想で作ってくれるから、ガジェット好きにはウケるが、なかなか一般層には浸透しなかった――と当時を振り返ってくれた。

photo 「TSR-100」(1994年)。文字盤右に放射温度計が付いていて、ここを対象物に向ける

 1999年、世界初のGPS内蔵腕時計「PRT-1GP」が登場する。当時の受信機では山の中に入るとすぐGPS衛生を見失って大変だったという。第2弾の「PRT-2GP」ではPCにログを転送する機能も付いた。当時はGPSをオンにするとバッテリーの消費が激しく、大変だったそうだ。

photo 「PRT-1GP」(1999年)
photo 「PRT-2GP」(2000年)

要予約だけど足を運ぶ価値あり

 今回展示される機種をほぼ網羅してみたが、こうして見返すと、今スマートフォンやスマートウォッチに搭載されている機能のほとんどが、10年以上前にカシオが腕時計に組み込んでいたのだ。

 電卓やアドレス帳はともかく、GPS、ゲーム、カメラ、心拍計、歩数計、その他もろもろ。今から振り返るとすごい内容だ。

 増田氏は「今から考えると、技術や手段は稚拙だったかもしれないが、カシオがすでにやっていた機能がほとんど。70〜90年代にかけて半導体技術が発達し、どんどん新しい技術を腕時計に入れられるようになり、カシオにはその技術があった。まず開発し、製品コンセプトはあとからついてきた」という時代だったと語る。

 確かにそういう製品はガジェット好きには喜んでもらえるが、一般層になかなか広がらないもの。でもガジェット好きから見れば、そういう過去の製品を振り返る楽しさもまたたまらないわけで、この特別展示、要予約で平日限定ではあるが、足を運ぶ価値ありだ。

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