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» 2015年09月25日 00時50分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(9月14日〜25日):戦いの火ぶたは切られた――3キャリアの「iPhone 6s/6s Plus」を巡る攻防 (1/2)

いよいよ発売される「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」。今回の連載では,ドコモ、KDDI、ソフトバンクがiPhone 6s/6s Plus発売に先だって打った戦略を読み解いていく。

[石野純也,ITmedia]

 iPhoneは、3キャリアとも同一モデルを扱うことになるため、キャリア同士の競争が激化しがちだ。端末での差別化ができず、キャリアとしては、それ以外の部分で勝負せざるをえなくなる。もちろん、端末に人気がなければ競争は促進されないが、iPhoneは単一機種としては年間で最も販売台数が多い。キャリアとしても、無視するわけにはいかない存在といえるだろう。料金やキャンペーンに加え、iPhone 5でLTEに対応してからは、ネットワークのアピール合戦も激化している。今回は3キャリアのiPhone 6s/6s Plusを巡る戦略を読み解いていく。価格はすべて税別。

photo 25日8時に発売される「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」

「スーパーカケホ」で料金合戦を仕掛けたKDDI

 iPhone 6s、iPhone 6s Plusで口火を切ったのはKDDIだった。同社は基本使用料が1000円安い、「スーパーカケホ」を他社に先駆けて発表。1回の通話の上限を5分にすることで、料金を安く設定した。キャリアの収益は、料金とユーザー数の掛け算が基本。基本使用料の値下げは減収に直結してしまうため、手を打ちづらい。スーパーカケホは、ここに踏み込んだ「禁断の手」だ。

photo KDDIは、従来の音声定額より1000円料金が安い、月額1700円の「スーパーカケホ」を発表した

 これに対して、まずソフトバンクが追随。同じく基本使用料が1700円となる、「スマ放題ライト」を発表した。カケホーダイの導入で収益減に苦しんでいたドコモも、ここには対抗せざるをえなかったようで、やや遅れて「カケホーダイ ライトプラン」を導入することを発表し、3社の足並みがそろった格好だ。

 一方で、先行していたぶん、KDDIの方が料金プランは練られている印象を受ける。1700円、1回5分までの割安な料金プランは組み合わせられるデータパックに制限がかけられているが、KDDIだけ3Gバイトの「データ定額3」が対象になっている。一方のドコモは5Gバイトの「データMパック」以上、ソフトバンクも5Gバイトの「データ定額パック 標準」以上としか組み合わせることができない。

3キャリアの新音声定額プラン比較
名称 対応データプラン 料金
ドコモ カケホーダイ ライトプラン データMパック以上 7000円
KDDI スーパーカケホ データ定額3以上 6200円
ソフトバンク スマ放題ライト データ定額パック標準以上 7000円
※5分制限の音声定額プランを使ったときの最低料金。KDDIが他社より安くなっている。

 ドコモとソフトバンクは、低容量が2Gバイト、その次が5Gバイトまでとなっており、間である3Gバイト、4Gバイトの選択肢が用意されていない。カケホーダイのような通話定額プランは、音声通話から得られる収益が下がる構造になっており、ユーザーが大容量のデータパックを選択することで減収分が相殺される。例えば、ドコモは経営指標の1つとして、5Gバイト以上のデータパックの選択率を公表している。ドコモの場合、5Gバイト以上の選択が7割超に増え、収益にも反転の兆しが見えてきているが、裏を返せば、2Gバイトのデータパックを契約したままのユーザーもまだまだ少なくないということでもある。

photo ドコモは、「データMパック」以上の選択率がようやく7割を超えたところ。累計では、「データSパック」を選んでいるユーザーも多い

 こうしたユーザーにとっては、1700円のカケホーダイ、スマ放題ライトを選ぼうとすると、値上げになってしまう。ドコモ、ソフトバンクとも、2Gバイトのデータパックを選択した際の料金は6500円だが、カケホーダイライト、スマ放題ライトを選択すると最低料金は7000円。事実上、5Gバイト以上のデータパックを選んでいるユーザーだけがメリットのある状態になっている。

ドコモの音声定額プラン
音声プラン データパック spモード 合計料金
カケホーダイ ライトプラン(1700円) データMパック(5000円) 300円 7000円
カケホーダイ(2700円) データSパック(3500円) 300円 6500円
「データSパック」利用中のユーザーが「カケホーダイライトプラン」に変更すると、かえって割高になってしまう。

 ここに目をつけたKDDIは3Gバイトのデータ定額3を対象にしていた。もともとKDDIの新料金プランはデータパックの段階を他社より細かく設定しており、2Gバイトの「データ定額2」から13Gバイトの「データ定額13」まで、6段階となっている。2700円の電話カケ放題プランにデータ定額2を加えたときの料金は6500円。データ定額3では7200円となり、その差は700円だ。結果として、データ定額2を契約していて通話が少なかったユーザーは、データパックをデータ定額3に上げても料金は差し引きで300円ほど安くなる。つまり、新料金プランを選択している通話の少ないユーザー全員が得をするということだ。

auの音声定額プラン
音声プラン データパック LTE NET 合計料金
スーパーカケホ(1700円) データ定額3(4200円) 300円 6200円
電話カケ放題(2700円) データ定額2(3500円) 300円 6500円
※音声通話が少ないユーザーなら、スーパーカケホにしてデータ定額を1つ上に上げても、料金はトータルで安くなる。

 もちろん経営的な視点で見ると減収のリスクにはなるが、「期末決算には織り込み済みで、影響は限定的」(KDDI広報部)。5分を超えたぶんに通話料がかかること、新料金プランに一本化していないこと、3Gバイトが選べることで新規のユーザーを獲得しやすいことなどが、その理由だという。一見すると細かい条件の違いと思えるかもしれないが、他社が用意していなかった3Gバイトのデータ定額3を上手に使い、ギリギリのところでユーザーメリットと収益のバランスを取っているところに、苦労のあとがうかがえる。

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