Huawei本社に日本の学生が1週間研修――男子17人、女子3人は何を学び、体験したのか?

» 2015年09月28日 06時00分 公開
[末岡洋子ITmedia]

 中国Huaweiは、端末のみならず、通信インフラ側でも世界トップクラスの実績を誇る総合ICTベンダーだ。そのHuaweiが本社のある中国深センに世界中から学生を招く夏恒例のプログラム「Telecom Seeds for the Future」を開催した。2015年は日本から学生20人が初参加、日本の学生たちは何を学び、体験したのだろうか? 現地での様子と帰国後の報告会をリポートしたい。

photo 真ん中の大通りを挟んで右も左もHuaweiの本社。東京ドームがまるごと42個分の広さは、まさに“街”だ
photo 住宅街ではなく、本社キャンパスにある社員寮エリア。学生たちもここに宿伯した
photo 日本から初めて参加した20人の学生

シャイだが理解は速い日本の学生

photo CSRについて説明してくれたDavid Harmon氏

 Telecom Seeds for the Futureは、Huaweiが社会的責任(CSR)活動の一環として展開しているプログラム。スタートしたのは2008年で、1987年創業のHuaweiのCSRの取り組みにおいて重要なプログラムに位置付けられている。プログラムの意義について、HuaweiでCSRを担当するグローバル広報担当バイスプレジデントのDavid Harmon氏は「世界の3分の1の人が何らかの形でわれわれの技術を利用しており、われわれには社会責任がある」と説明する。これまで英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、タイ、マレーシアなど30以上の国が参加、2015年は初めて日本からも学生を招いた。

 参加したのは東北大学、早稲田大学、東京工業大学、福岡工業大学などの生徒たち。女子3人、男子17人の総勢20人だ。8月後半に深センに渡り、Huawei本社でみっちり5日間、昼2時間の休憩を挟んで午前と午後に無線技術やネットワークについての授業と受けた。夕方からの自由時間には深センの電気街を訪問したり、各国の学生との交流を楽しんだりした。

 ある日の授業は4Gに関するもの。午前中にネットワークデータサービスの設計を学び、午後は実際につないで通信してみた。講師は、実際にHuawei社員や顧客向けの研修を担当する先生だ。日本の学生に対する印象を聞いてみると、「シャイだがよく理解している」とのことだった。

photophoto 4Gネットワークのデータサービスについて学ぶ学生たち

 通信やネットワークは専門外という学生も少なくない。「3G、4Gの『G』が『世代』ということをはじめて知りました。視野が広がった」と話すのは東北大学工学部学部3年生の王子超(Wang Zichao)さん、高校生のときに中国からやってきて、「日本のサブカルが大好きになった」という男子学生だ。東京工業大学の理工学研究科電子物理工学専攻修士課程1年の堂目正人さんは、「言葉では知っていた2G、3Gなどのことをきちんと学ぶことができた」と手応えを語った。

 東海大学工学部の学部4年生 田綿元貴さんは、「本でも学べるが、RNC、BSC(基地局の制御装置)を自分で操作して試すことができたことはよかった」と喜ぶ。東京工業大学理工学研究科電子物理工学専攻修士課程1年の遠藤友貴哉さんは、ギガビット対応のパッシブ光ネットワーク「GPON」を取り上げ「ネットワーク構築をPCでやってみたら難しかった。もう一度自分で調べて勉強したい」と刺激を受けたようだ。東京工業大学 理工学研究科 電子物理工学専攻 学部4年生の広瀬倖司さんは、「パケット送信について初めて本格的に学習した。意外に簡単な仕組みで驚いた」と感想を語ってくれた。

まるで街――Huaweiキャンパスのスケールと女性たちに驚く

 学生たちは、プログラム中の研修と宿泊の場となった広大なHuaweiキャンパスにも感銘を受けたようだ。「会社って1棟の大きなビルと思っていたら、“街”だった」と話すのは福岡工業大学情報工学部の宮地頼太さん。そう、Huaweiの本社キャンパスは敷地200万平方メートルに4万人が勤務する一大施設。

 研究開発、試験、物流、ソフトウェア、経営管理、マーケティングなど機能別のエリアがあり、独身寮、プールやバスケットコートなどのレクレーションセンター、ATM、スーパーやコンビニ、病院、郵便物受取所、床屋……と、生活に必要なものはほぼすべてそろっている。広大なキャンパスにはシャトルが巡回しており、あちこちに休憩できるカフェがある。宮地さんの“街”という表現は的確だ。日本ではなかなかない風景に「緑がたくさんあるし、学習環境が整っていた」と東北大学工学部学部3年生の金村卓郎さんは話し、「こんな会社で働くことができたら楽しいかも」と続ける。

photophoto
photophoto 一緒に昼食を食べたり、授業を受けたり、買い物に行ったり……国際交流も重要な体験となったようだ

 そのHuaweiキャンパスで、施設だけではなく違うところに目がいった学生もいたようで……「女の人がきれいだった……コスプレと本場は違う」と中国出身の王さん。確かにHuaweiの本社には美しくスタイルのよい中国女性をたくさんみかけた。なんでも、一部の美女たちは定期的に体重チェックをうけているとか。

 同じ「女性」でも、3人の女子学生は違う視点を語ってくれた。早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻大学院博士課程2年生の川端萌美さんは「Huaweiには女性エンジニアが多くて活躍していた」と報告する。福岡工業大学情報工学部学部学部の宮本さんも「女性が活躍している会社」というイメージを持ったようだ。東北大学工学部の栗本さんも同意見で、「日本は少ないのでは」と付け加えた。

 Huaweiのイメージもアップしたようだ。Huaweiのことをほとんど知らず、研修前に少し調べた程度だったという東京工業大学理工学研究科電子物理工学専攻修士1年の木邨友弥さんは、「スマートフォンはもちろん、通信機器、アンテナ基地局など根幹となるシステムも提供している。展示ホールではサーバのソフトウェアやハードウェアを開発していると知ってびっくりした」と感想を語ってくれた。早稲田大学基幹理工学部情報通信学科学部4年生の大河内志彦さんは、「大規模でしっかりした研修プログラムがある」と評価した。

たかが英語、されど英語……国際交流と中国の街体験は?

 このプログラムの目的は、通信技術を学んでもらうこと、そして「グローバルな人材育成」だ。グローバル面ではどうだったのか――。今回日本の学生たちはポーランド、パキスタンの学生たちと一緒に授業を受けることがあり、親交を深めたようだが、語学(英語)とカルチャー面では課題を感じた学生も少なからずいたようだ。

 3週間の語学留学経験のある宮本さんは、「パキスタンとポーランドの学生たちの語学力に驚いた。将来対等に話せるように、英語を勉強したい」と新しい目標を持ったようだ。宮地さんも同様に「パキスタンやポーランドの人たちと話が思うように話ができず、悔しかった」と本音を語ってくれた。

 大河内さんからは「授業でも先生の質問に一番に答えるのはポーランドだったり、パキスタンだったり……。日本人はどうしても消極的な感じで国民性のようなものを感じた」という感想も。「90%ぐらい分かったど、残りの10%は分からなかった。ここは課題。海外の学生の積極性はすごく、誰でも答えられる質問でもほかの国の人が先に答えるという状況がなんどもあって……日本人頑張ろうよって感じ」と自らを励ます意見も。学生との交流では、海外の学生の方がよくアニメを知っていたという意見も聞かれた。

 中国行きを親から心配された学生が多かったようだが、中国のイメージはかなりアップしたようだ。それでも、失敗談も聞かれた。深センにある巨大な電気街、華強北路に行った田綿さんは、スマートウォッチと思しきものを240人民元で購入したもののさっぱり動かなかった。「動いているか確認してから買えばよかった」と痛い経験をしたようだ。金村さんは198人民元でドローンをゲットしたが、「カメラ付きと書いてあったのにカメラは付いていなかった」という。動作はしたようだが、すでに壊れてしまったようだ。

 こうした学生たちの声を聞きながら、早稲田大学理工学術院嶋本薫教授は、「良い経験になったようだ」と喜ぶ。

 一方で、嶋本教授は日本の現状について厳しい意見も述べた。1つ目は英語。「ICTの分野はボーダーレス、いろいろな国の人と交わる必要があり、一緒に研究開発、ビジネスをしなければならない。英語は当たり前」(嶋本教授)。この点で、研究室でも日本の学生は海外からの留学生に劣ると感じているそうだ。

photophoto 田綿さんが買ってしまった壊れていたスマートウォッチ(写真=左)。早稲田大学の嶋本教授(写真=右)

 もう1つは競争心だ。Huaweiや米国企業では定期的な査定により成果が出ていない社員をカットしており、社員たちは競争の中で高いモチベーションを持っているようで、嶋本氏は「ICTは動きの激しい分野。日本のある種の競争のゆるさが弱い面として露呈してしまっている」と話す。嶋本氏は最後に「今回の貴重な体験を就職やその後の研究に生かしてほしい」と願いを語った。

photo ポーランド、パキスタンなどの学生と記念写真

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