インタビュー
» 2015年09月28日 14時45分 UPDATE

SIMロックフリースマホメーカーに聞く:欧州のエッセンスで差別化を――日本のSIMフリー市場に進出するALCATELの勝算

ALCATEL(アルカテル)のブランドを冠したスマートフォン「IDOL 3」を2015年8月から販売し、日本市場への製品展開を本格化させたTCLコミュニケーション。今後の日本市場の展開について、同社の日本市場を担当するキーパーソンに話を聞いた。

[山根康宏,ITmedia]

フランス生まれのブランドでグローバル市場で高い存在感を誇る

 TCLコミュニケーション(TCL Communication Technology)は、フランス生まれの携帯電話・スマートフォンブランド「ALCATEL ONETOUCH(アルカテル ワンタッチ)」で世界中に製品を展開している。一部の通信事業者向けにはODM(相手先ブランドによる製品製造)での製品供給も行っており、欧州ではVodafoneなどが同社の製品を自社ブランド品として積極的に採用している。

 1999年に設立されたTCLコミュニケーションは、中国から世界に家電を展開するTCLのグループ会社だ。2004年にフランスのアルカテルから携帯電話部門を買収し、2015年には2000年代にPDAの代名詞とも言われたPalmのブランドも買収した。同社は今や世界170カ国に営業拠点を持ち、ALCATELブランドのスマートフォンを各国で販売している。2014年通年の同社の端末出荷台数世界シェアは6位。クリスマスのホリデーシーズンとなる2014年第4四半期には4位を記録した。

photo 日本でも発売になった「idol 3」
photo アルカテルブランドでスマートフォンを販売するTCLコミュニケーション

 調査会社ガートナーの報告を見ると、2015年第2四半期の世界の携帯電話台数上位10社のうちSamsung、Apple、Huawei、LGエレクトロニクス、Lenovo(Motorola)、ZTEがすでに日本で製品を販売している。同調査でシェア8位に位置しているTCLコミュニケーションの日本市場への本格的な参入は、大きな黒船がまた1つ到来したというほどの動きなのだ。今はまだ日本市場でのブランド力は小さいが、ソニーモバイル(同調査では10位以下)を上回るマーケットシェアを誇る同社の動きは、これから無視できないものになっていくだろう。

 とはいえ、すでに多くのグローバルメーカーが参入している日本市場で、後発となるTCLコミュニケーションはどのように製品を展開し、存在感を高めようとしているのだろうか? 同社の本社を訪問し、日本市場を担当するキー・アカウント・ディレクターのLucky TSAO氏に日本での戦略を聞いた。

ほとんどの製品はフランスとイタリアでデザイン

―― 8月28日に日本でidol 3の販売を開始しました。まだそれから1カ月しかたっていませんが、手応えのようなものは感じていますか?

TSAO氏 今回のidol 3は実は日本では5機種目の製品となります(スマートフォンとモバイルルーターを合わせて)。ですが「ALCATEL ONETOUCH」のブランドを前面に打ち出し、単独製品での発表会も行ったのは今回のidol 3が最初となります。そのため、まずブランドや製品を知ってもらうことに力を入れている段階で、今はそのベース作りに注力しているところなのです。

―― 御社の製品の特徴、また他社とここが違う、というアピールポイントはどこにあるのでしょうか?

TSAO氏 まず弊社は2004年にALCATELアルカテルを買収した際に、ブランドだけではなく研究開発部門やセールス部門なども全て買収しました。そのため製品のデザインは今でもフランスのテイストを感じさせるものになっています。デザインセンターは今でもフランスとイタリアにあり、ほとんどの製品のデザイン開発はそこで行っています。

 また弊社は100%のインハウス製造を行っています。基板の設計から製品化、品質管理、出荷までを自社で行っているのです。外注することによるコストダウンよりも、すべてを自社でコントロールすることで高い品質の製品を提供できると考えています。

photo 中国広東省、恵州市にあるTCLコミュニケーションの工場

日本ではMVNOとの提携も検討

―― グローバルではどのような製品を展開しているのでしょうか?

TSAO氏 スマートフォンやフィーチャーフォンはもちろんのこと、タブレット、モバイルブロードバンド製品、そしてスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスも販売しています。またスマートフォンのケースなどのアクセサリー類の販売も強化しています。

―― idol 3に続き、それらのグローバル展開している製品を日本で販売する予定はあるのでしょうか? またSIMロックをかけての販売も検討されているのでしょうか?

TSAO氏 もちろん日本での製品展開はこれから本格的に広げていきたいと考えています。まずそのはじめとして、今年(2015年)はidol 3を投入しました。おかげさまで多くの量販店さんやMVNO事業者さんでも取り扱っていただき、広い販路で販売されております。

 またそれだけではなく、MNOさんとの提携も検討しております。ですがどの国でもそうですが、新規参入するメーカーがたとえ大手の事業者さんと提携したからといって、その製品がすぐに売れるとは限りません。やはり製品が売れるためにはブランドや製品の良さを多くの消費者に知っていただく必要があります。今回のidol 3も日本中で販売していただけることで、知名度アップにつながるものと期待しています。

photo 海外ではスマートウォッチも販売中。メニュー画面の色合いやデザインはどことなくヨーロッパのテイストを感じる

防水端末も検討も、差別化には課題

―― IFA 2015では防水スマートフォンも発表しました。グローバルでは低価格スマートフォンやWi-Fiのみ搭載のタブレットも販売されていますね。それらの日本投入はあるのでしょうか?

TSAO氏 日本では防水スマートフォンは人気がありますよね。もちろんIFAで発表した「GO PLAY」の日本投入も検討はしています。ただしすでに多数の防水スマートフォンがある日本市場ですから、単純に弊社も防水製品を出しました、では差別化がしにくいと思います。

 GOシリーズは同じく防水仕様のスマートウォッチの「GO Watch」と組み合わせて使うとより楽しめるというコンセプトもありますから、その辺も含め日本で展開するためにはどのようにするかを検討したいところです。スポーティーな外装に仕上げていますから、アウトドア志向やスポーツ愛好者の方々にはすんなりと受け入れていただけるのかもしれません。

photo カジュアルかつスポーティーなデザインの防水スマートフォン「GO PLAY」
photo GO PLAYと同じデザインの防水スマートウォッチ「GO WATCH」

 タブレットは弊社では1つのモデルでWi-Fi版、3G版、LTE版と作り分けているものもあります。そうすることにより、参入する市場のユーザーニーズに最適な製品を提供しています。日本でのタブレット展開も、日本のお客さんのニーズをくみ取りながら検討したいと思います。

 そして低価格端末ですが、弊社では新興国向けのFirefox OS搭載スマートフォンなど、1万円を切る製品もグローバル市場では展開しています。とはいえ、弊社製品のアピールポイントは値段の安さではありません。つまり価格競争で打ち勝とうとは考えていないのです。また日本の消費者の方々は品質やデザインへの要求が高いですから、今後も上位モデルのidolシリーズを中心とした展開になるかと思います。なお海外の事業者さん向けに出しているODMモデルのような展開で低価格モデルを投入する可能性はあるかもしれません。

photo キーボード分離型などビジネスにも利用できるタブレットも販売
photo 超低価格モデルも新興国などに展開

―― 防水以外にもワンセグなど、日本固有のハードウェアを実装した日本向けモデルの開発の可能性はあるのでしょうか?

TSAO氏 特定向けの特定ハードウェアの開発はコストを考えると悩ましいところです。その国の消費者ニーズをくみ取りつつも、コストも考えていかなくてはなりません。特に低価格でより高品質な製品を提供していくためには、グローバルで出せるボリュームも必要となります。弊社としては今のところ各国向けのカスタマイズはソフトウェアによるもで行いたいと考えています。

―― 日本の消費者にメッセージをお願いします。

―― 弊社は日本の消費者の方々に品質が良く、デザインも特徴があり、そしてユニークな製品を提供していきたいと考えております。「他社にはない、ALCATEL ONETOUCHならでは」という製品をこれから販売していく予定です。欧州のエッセンスが詰め込まれた弊社の製品をぜひ使っていただき、そして生活を楽しんでいただければ本望だと考えております。これからの製品展開に、ぜひ期待していただければと思います。

photo 豊富なカラバリのバックカバーをそろえた「POP UP」。日本では知られていない魅力的な製品もグローバルで展開している

取材を終えて:TCLの底力を感じた

 ここ数年、世界シェア10位内へ常に入っているTCLコミュニケーション。日本への参入は遅すぎたというよりも「いよいよ準備が整った」という状況だと感じられた。

 中国の老舗のテレビ・家電メーカーであるTCLグループ傘下の同社は、中国が「世界の工場」と言われたころからモノ作りを開始している。長年にわたる製造メーカーとしての製品開発ノウハウはTCLコミュニケーションにも引き継がれており、基板の内製から出荷管理までのすべてを自社で行うというQC(クオリティコントロール)は、最近の新興メーカーには見られない姿だ。

 しっかりした製品製造ラインを持ち、それを欧州のデザインチームが仕上げることでTCLコミュニケーションのスマートフォンは他社にはない同社独特のテイストを持った製品に仕上がっている。グローバルで展開される特徴ある製品が、今後は日本でも同時に販売されることになるのだろう。ALCATELブランドで日本市場への攻勢をかける同社の今後の展開に期待したい。

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